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トール師になる
PHASE-1166【恩には恩で】
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「なぜ……ゴブリン?」
なんて頭に疑問符を浮かべて考えている間に、テキパキとした動きで俺たちを助けてくれた。
「あ、ありがとう」
本当はダメダメなのだが、助けられたことで体が一気に弛緩する。
弛緩というか脱力ってのが正しいな……。
ブーステッド使用でこの状態になるのも久しぶりだ……。
以前だとこの状態に陥っても問題はなかった。周囲に強者がいたからな……。
でも今回は……ね……。
「敵を前に……愚かな姿だ……な」
――……オウ……。
緊張の糸が切れたどうこうではなく、どう頑張っても体が思い通りに動いてくれないのが俺の今の現状……。
そんな俺に反してデミタスはやおら立ち上がる。
うつ伏せ状態でなんとか正面を見れば、デミタスが負った傷が回復しているようだった。
その証拠に流れていた血が止まっている。
完全な回復には至っていないようで足はふらついているが、それでも立つことは出来ている。
伏臥に対して相手はふらつきながらも立ち姿……。この差は歴然だな……。回復が完全ではないにしても、今の動けない俺ではどうやっても対応できない……。
――……こりゃ詰んだな……。セラのところに戻るのかな?
「ギャ……ギャアギャア!」
と、ここで俺の前に立ってくれるのはゴブリン達。
手に持つのは尖頭器や先端を尖らせただけの木の槍。棍棒。手よりも大きな石。
武器になるモノならなんでも使用するといったサバイバリティあふれる装備だった。
「ど、どくがいい……」
弱々しいね。
でも弱々しくもその佇まいだけでゴブリン達は後退り。
弱っていても相手が悪い。
魔王護衛軍の中でもトップに位置する力を持ったのが目の前の美人だからな。
本当なら腰の引けた姿のまま反転して逃げ出したいんだろうけども――ゴブリン達は逃げることを選択しない。
「この男が何か……したのか……」
デミタスが問えば、倒れる俺の前で踏みとどまっているゴブリンの一人が声を上げる。
人間の俺から聞けばただうるさく吠えているようにしか聞こえないが、デミタスはそれを黙って聞いていた。
しっかりと腹部を回復させながら……。
「人間がな……」
俺を見つつデミタスが親切にゴブリン語を訳してくれた。
このゴブリン達は俺達が食べ物を与えた連中だった。
人間の俺では顔の見分けがつけられないから分からなかったよ……。
そもそも俺――というかゲッコーさんが宙空から取り出したレーションだけども。
そして、ルーシャンナルさんの報告でしっかりとエルフの国から援助を受けていたというのをここで知ることが出来た。
この近くで新たに生活を営んでおり、食糧支援も受けているらしい。
全ては大恩ある勇者殿の願いによる支援だとの事で、それによりゴブリン達は俺に恩義を感じたそうだ。
そんな俺がたまたまこの場に現れたから大急ぎで馳せ参じたという。
「それにしても……ルーシャンナルさんは支配されてたはずなのにな……」
「怪しまれないように最低限、普段の行動はさせていたからね」
俺と違ってスラスラと言葉が発せられるようになったね……。
言葉が詰まらない程度には回復が済んだご様子。
それでも蒼白の表情からして十全とはいかないようだけども。
――フル・ギルの使用においては、本人の意思も維持させつつ適度に支配することで、周囲に悟られないように調整。
だから俺たちに頼まれた事はしっかりとこなしてくれたわけだ。
反面、サルタナの母親や村の住人に回復を施さなかったのは、悟られると困る者達からの指示を受けない状態だったから、フル・ギルの支配によって治療をしなかったということなんだろう。
本当によかったよ。ルーシャンナルさんの村での対応には落胆した事もあったけど、ルーシャンナルさんの人間――もといエルフ性が原因ではなかったのだから。
なんて頭に疑問符を浮かべて考えている間に、テキパキとした動きで俺たちを助けてくれた。
「あ、ありがとう」
本当はダメダメなのだが、助けられたことで体が一気に弛緩する。
弛緩というか脱力ってのが正しいな……。
ブーステッド使用でこの状態になるのも久しぶりだ……。
以前だとこの状態に陥っても問題はなかった。周囲に強者がいたからな……。
でも今回は……ね……。
「敵を前に……愚かな姿だ……な」
――……オウ……。
緊張の糸が切れたどうこうではなく、どう頑張っても体が思い通りに動いてくれないのが俺の今の現状……。
そんな俺に反してデミタスはやおら立ち上がる。
うつ伏せ状態でなんとか正面を見れば、デミタスが負った傷が回復しているようだった。
その証拠に流れていた血が止まっている。
完全な回復には至っていないようで足はふらついているが、それでも立つことは出来ている。
伏臥に対して相手はふらつきながらも立ち姿……。この差は歴然だな……。回復が完全ではないにしても、今の動けない俺ではどうやっても対応できない……。
――……こりゃ詰んだな……。セラのところに戻るのかな?
「ギャ……ギャアギャア!」
と、ここで俺の前に立ってくれるのはゴブリン達。
手に持つのは尖頭器や先端を尖らせただけの木の槍。棍棒。手よりも大きな石。
武器になるモノならなんでも使用するといったサバイバリティあふれる装備だった。
「ど、どくがいい……」
弱々しいね。
でも弱々しくもその佇まいだけでゴブリン達は後退り。
弱っていても相手が悪い。
魔王護衛軍の中でもトップに位置する力を持ったのが目の前の美人だからな。
本当なら腰の引けた姿のまま反転して逃げ出したいんだろうけども――ゴブリン達は逃げることを選択しない。
「この男が何か……したのか……」
デミタスが問えば、倒れる俺の前で踏みとどまっているゴブリンの一人が声を上げる。
人間の俺から聞けばただうるさく吠えているようにしか聞こえないが、デミタスはそれを黙って聞いていた。
しっかりと腹部を回復させながら……。
「人間がな……」
俺を見つつデミタスが親切にゴブリン語を訳してくれた。
このゴブリン達は俺達が食べ物を与えた連中だった。
人間の俺では顔の見分けがつけられないから分からなかったよ……。
そもそも俺――というかゲッコーさんが宙空から取り出したレーションだけども。
そして、ルーシャンナルさんの報告でしっかりとエルフの国から援助を受けていたというのをここで知ることが出来た。
この近くで新たに生活を営んでおり、食糧支援も受けているらしい。
全ては大恩ある勇者殿の願いによる支援だとの事で、それによりゴブリン達は俺に恩義を感じたそうだ。
そんな俺がたまたまこの場に現れたから大急ぎで馳せ参じたという。
「それにしても……ルーシャンナルさんは支配されてたはずなのにな……」
「怪しまれないように最低限、普段の行動はさせていたからね」
俺と違ってスラスラと言葉が発せられるようになったね……。
言葉が詰まらない程度には回復が済んだご様子。
それでも蒼白の表情からして十全とはいかないようだけども。
――フル・ギルの使用においては、本人の意思も維持させつつ適度に支配することで、周囲に悟られないように調整。
だから俺たちに頼まれた事はしっかりとこなしてくれたわけだ。
反面、サルタナの母親や村の住人に回復を施さなかったのは、悟られると困る者達からの指示を受けない状態だったから、フル・ギルの支配によって治療をしなかったということなんだろう。
本当によかったよ。ルーシャンナルさんの村での対応には落胆した事もあったけど、ルーシャンナルさんの人間――もといエルフ性が原因ではなかったのだから。
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