異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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トール師になる

PHASE-1176【情報は得られず】

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「殺したくなる気持ちにもなる」
 惨状を目にしていない俺でさえ、話を聞くだけでカルナックに殺意を抱くほどだからな。
 デミタスの殺意は俺のソレとは比べものにならないだろう。

「それはお前にも当てはまるのだけれど」

「あ、はい……」
 ――……ですよね……。
 俺も恩人の仇だもんね。

 ――いよいよ自分も食い殺されると覚悟していたところで、デミタスに救いの手が伸びた。
 後発で集落へと到着したデスベアラーが立ち塞がってくれたそうだ。
 交渉が行われず戦闘へと発展していることに驚き、急ぎカルナックへと戦闘終了を伝えるデスベアラー。
 対してカルナックも了承。
 が、それはデスベアラーが考えていた終わらせ方ではなかった。
 殆どを殺し尽くしている。なのでじきに戦闘終了になると発し、残りの者達を殺害していったという。
 これにはデスベアラーも怒り心頭。
 カルナックを力で抑え込もうとしたという。
 流石は敵ながら俺が尊敬する武人である。
 直ぐさまカルナックを制止させたという内容がデミタスの口から聞かされると思ったのだが……。
 内容はまったく違った。
 俺が尊敬する武人は赤子同然とばかりにカルナックによって叩き伏せられたという。
 まったく相手にならなかったとのことだった。

「それは……本当か……」
 信じられないあまりに、俺はデミタスの話を中断させて問うてしまう。
 ギリッと軋る歯の音が俺の耳朶に届き――、

「本当よ」
 と、返してくれた。
 軋り音は話を中断させられた事による不愉快さからではなく、集落を壊滅させられ、陵辱に虐殺が目の前で行われる中で、救いの存在が他愛なく倒されるという絶望的な光景を生み出した怨敵に対する怒りの感情からだった。

 それでもデスベアラーは懸命に立ち塞がり、カルナックへ配下の行いを止めさせるように申し出たそうだ。
 流石にショゴスより生み出された存在の発言を無視し続け、加えて命を奪うとなれば自分の立場もよくないと判断したようで、それ以上の虐殺と破壊は止めたという。
 ――……だが停止はあまりにも遅すぎた。
 というより明らかに故意だろう。
 話の内容だけでも分かるというものだった。
 全てを停止させたのは、デミタスだけを残した後だった。
 唯一、一人だけを生き残らせ、残りの命は全て奪った。
 協力を得られなかった事で脅威対象として判断したという名目と、一人でも生かしてやったという慈悲。
 それで今回のいざこざをなかった事にするとデスベアラーに述べたカルナック。
 その生き残りを魔王殿のお役に立てるように鍛えてやればいいとだけ発し、自身の兵達と共にその場を後にしたという。

「……部下の下劣さは俺も見たことがあるから知っているけど……。なるほどね……。トップもどうしようもないわけだ」

「もれなく死に値する者達だ!」

「お、おう……」
 凄惨な光景を直に見ているんだからな。蹂躙王ベヘモトの連中全てに怒りを抱くのは当然だよな……。
 と、デミタスに同情心の喚起が芽生える中で、

「せいぜいお前には間引いてもらわないとね」
 と言う姿は、先ほどまでの憤怒から一転し、クツクツと悪い笑みを浮かべる表情。
 早変わりがすぎる……。
 変化の力があるだけあって、表情の変わりようも早いってもんだ……。

 その変わりように感心するように嘆息を漏らしつつ、

「利用するんだったらもう少し他の情報も教えてほしいもんだ」

「例えば?」

「メタモルエナジーの製造法や出所なんかを――」

「却下ね」
 ――……即答ですか……。
 まっ、そこは言えんよな。
 とりあえず魔王軍が出所ってのはデミタスの存在で分かったから良しとしよう。
 製造方法は流石に教えてもらえるわけがないが、今後もメタモルエナジーという薬品が俺達の前で使用されるのは確定したわけだ。
 モード・ガグとかってのが大量に出てこらるのも確定した……。
 やっかいな事だよ……。

「さて、メタモルエナジーの製造法以外に何もないなら――」

「カイメラ」
 一応、聞いてみる。

「カイメラ?」
 おっと、デミタスの頭上に疑問符が浮かんだのが幻視できた。
 全くもって耳にしたことがない名前だということだった。
 魔大陸でチコと出会ったけども、マンティコアはカルディア大陸から魔大陸ことレティアラ大陸に連れてこられたというのはデミタスも理解はしているようだが、どの地域で誰によって連れてこられたかというのは、はっきりとは聞いた事がないそうだ。
 
 理由としては、マンティコアは大型ではあるが戦力としては微力。
 よってデミタスは関心を抱かなかったそうだ。
 興味がなければその程度なんだろうな。
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