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発展と鍛錬
PHASE-1224【訓練風景も様変わり】
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作りが発展しているのは、ハリボテ建物の大型化だけではなかった。
その大型化された建物を中心として、板壁によって仕切られているという区画も存在した。
迷路のようなつくりだった。
俯瞰から全体を見る事が出来るように、建物と板壁を囲うようにしていくつかの物見櫓が立っている。
櫓へと移動して上から見下ろせば、首元に黒色級の認識票をかけた新人さんたち四人が迷路の中を行動していた。
グラディウスサイズの短い木剣持ちの少年が三人。杖をもった術士の少女が一人という編制。
先頭はラージシールドであるカイトシールドを持った木剣持ち。
その後方にヒーターシールドを持った木剣持ち、術士がその後ろに続き、最後尾が二番目と同じ装備。
生存率を高めるために必要不可欠な術士をしっかりと守るようにしている隊伍は整っており、迷路の中を素早く進んで行く。
木剣が短いのは狭い道を模している迷路の中でしっかりと振れるという事を考えての武器選択のようだ。
短い木剣とは別に、背中にはロングソードを模した木剣も背負っていたので、状況に応じて武器変更するんだろう。
腰に差したり佩いたりしないのは、長い鞘が壁に当たるというのを避ける為の工夫なんだろうね。
「こういった訓練で臨機応変の大事さを学んでいくんだな」
物見櫓から整った隊伍を目にして声を漏らす。
当たり前の事をしっかりと出来ているのは素晴らしい。
新人さん達が見せる動きは俺自身も見る事で学ばせてもらえる。
ラージシールドであるカイトシールド持ちが先頭を進むことで、急な遭遇戦や横合いからの不意打ちの一撃をしっかりと防ぐという役割を担いながら迷路の中を進んで行き、中央にある建物まで辿り着けば隊伍を変更。
先頭に変更はないけども、今まで二番目と最後尾にいたヒーターシールド持ちが先頭の左右に立つ。
シールド持ち三人は、建物扉付近に背を預けて待機。
全員が目配せをして首肯し、一人が扉を勢いよく開けば、そこに術士の少女がファイアフライと唱える。
開かれた扉の中から強い輝きが零れ出ているのが確認できた。
扉に背を向けて強い光を直視しなかった少年三人が術士を見れば、術士の少女が首肯で合図。
――輝きが弱まると同時にカイトシールドが先頭で入り、その左右をヒーターシールド持ちがカバーするようにして建物内へと突入。
――突入後、室内から快活良く聞こえてくる声は――、
「クリア!」
といった発言が三回。
「……」
「彼らはまだ駆け出しなので基礎をしっかりと覚えさせています。次の段階で実際に脅威対象となる担当者たちを配置しての、戦術突入訓練を行わせます」
「…………」
「あの――会頭?」
俺のリアクションがないことから、マイヤは些か心配そうな声音になりつつ俺を覗き込んでくる。
「ええっと……。冒険者だよね? 特殊部隊の訓練とかじゃないよね?」
物見櫓から突入訓練をしていた新人さん達に食指を向ければ――、
「もちろんです。彼らは我らがギルドの冒険者ですよ」
「うん。まあ、うん……」
もちろん冒険者のクエストの中には攫われた対象を救出するっていうのもある事だろう。
だから理にかなった訓練だというのは分かる。
分かるんだけども……。
冒険者ってのはもっとド派手に行動して、華やかに救い出すってのが俺のがよくラノベなんかで目にする主人公とその仲間達って感じなんだけどな。
「どう見ても特殊部隊のソレなんだよな……。いや、スムーズな突入からの室内索敵は素晴らしいけどね……」
まあ、仕方ないか。ゲッコーさんが考案しているわけだし。
その後も王都に留まってくれているS級さん達がそれを引き継いでいるんだから、こういったシュチュエーションの訓練では統率力を重視したものになるよね。
素晴らしい動きをした黒色級の新人さん四人が次に何をするのか気になったので続けて眺めていれば、車座になって即、検討。
突入時、左右のヒーターシールド持ちが中央のカイトシールド持ちからわずかに遅れての突入だったという反省が聞こえてくる。
そもそもファイアフライ発動後、光が弱まってきてからの突入自体が遅れていた。
そのわずかな差で人質に危害が加えられたら目も当てられない。
もっと突入をスムーズにすることを心がけないといけない。
――と語り合い、突入の訓練を再開するということだった。
――……ファンタジーな感じじゃないのは、やはり指導するのにS級さん達が参加してくれているってことによる影響が大いな……。
だが再開する時、術士の少女が――「私がスリープを習得できていればいいのに」と発し、カイトシールド持ちが「中位魔法だろそれ? まだまだ習得するには時間がかかるさ」と返し、ヒーターシールド持ちの一人が「それまでは皆で地道に力をつけていこうぜ」と、返していた。
魔法習得のやり取りを耳にして、この異世界はちゃんとファンタジーなんだなと再認識し安堵する。
――。
「あらあらまあまあ、立木も立派になっちゃって」
俺が打ち込んでいた時とは違い、しっかりと人を象った作りになっているじゃないか。
人を模した立木に向かっている新人さん達が木剣、木刀を握って軽快に打ち込んでいく。
攻撃スタイルには統一性がなく、自分たちが培ってきた我流にて立木打ちに勤しんでいた。
――が、その横では、
「キィエェェェェェエ――――!」「チィィィエェェェェィィイ――――!」
と、大気を劈く大音声と共に、全身全霊の力を込めた上段からの振り下ろしを一心不乱に反復で行っている者達もいた。
新人さんや修練場を利用している野良冒険者の面々は、この狂った叫び声に未だになれていないといったところなのか、声を耳にする度に動きがわずかだが鈍くなっていた。
「王都の兵達も利用している光景は変わらないか」
「城の広場にも修練場はあるのですが、以前にトール様がここを使用していたということから、験を担ぐためにここを利用しているそうですよ」
と、ランシェルからの説明を受ける。
城住まいのリズベッドの側回りをしているだけあって、城で行われている鍛錬なんかもよく目にしているそうで詳しくなっていた。
特にリズベッドの世話をするメイドさん達が近くを通れば、兵士たちもやる気を出すそうだ。
ランシェルが側を通る時にも気迫ある声で訓練をするという。
ランシェルが男と知れば、兵士の皆さんはどういったリアクションをとるんだろうね。
今ではこの修練場から響き渡る猿叫も王都の名物となっているとのこと。
しかし――、
「冒険者の方が打ち込みでは負けてるな」
「まだまだですね」
俺の発言にマイヤも賛同する。
王都兵の猿叫を耳にするたびに、新人ギルドメンバー達や野良の冒険者の方々の動きが鈍くなってしまう。
猿叫を耳にして打ち込む部分でタイミングがずらされてしまうといったところなのか、王都兵を鬱陶しいとばかりに半眼で見る者も多い。
が、それは周囲への体裁だろう。
もっと言うなら、猿叫に居竦んでいる自分の姿を周囲に悟られないように誤魔化してもいるといったところか。
これが実戦――、しかも大型モンスターと対峙したとなれば目も当てられない。
バインドボイスを思わせる大型モンスターの咆哮を正面から受けようものなら、王都兵の猿叫どころではない。
動きが妨げられて鈍くなるどころか、動けなくなるだろうからな。
大型モンスターを前に動けなくなるってことは、あっという間に命を奪われるってことと同義。
冒険者としてまだまだのようだね。
しっかりと鍛錬しつつ、先生のユニークスキルの恩恵を受けて大いに成長してほしい。
その大型化された建物を中心として、板壁によって仕切られているという区画も存在した。
迷路のようなつくりだった。
俯瞰から全体を見る事が出来るように、建物と板壁を囲うようにしていくつかの物見櫓が立っている。
櫓へと移動して上から見下ろせば、首元に黒色級の認識票をかけた新人さんたち四人が迷路の中を行動していた。
グラディウスサイズの短い木剣持ちの少年が三人。杖をもった術士の少女が一人という編制。
先頭はラージシールドであるカイトシールドを持った木剣持ち。
その後方にヒーターシールドを持った木剣持ち、術士がその後ろに続き、最後尾が二番目と同じ装備。
生存率を高めるために必要不可欠な術士をしっかりと守るようにしている隊伍は整っており、迷路の中を素早く進んで行く。
木剣が短いのは狭い道を模している迷路の中でしっかりと振れるという事を考えての武器選択のようだ。
短い木剣とは別に、背中にはロングソードを模した木剣も背負っていたので、状況に応じて武器変更するんだろう。
腰に差したり佩いたりしないのは、長い鞘が壁に当たるというのを避ける為の工夫なんだろうね。
「こういった訓練で臨機応変の大事さを学んでいくんだな」
物見櫓から整った隊伍を目にして声を漏らす。
当たり前の事をしっかりと出来ているのは素晴らしい。
新人さん達が見せる動きは俺自身も見る事で学ばせてもらえる。
ラージシールドであるカイトシールド持ちが先頭を進むことで、急な遭遇戦や横合いからの不意打ちの一撃をしっかりと防ぐという役割を担いながら迷路の中を進んで行き、中央にある建物まで辿り着けば隊伍を変更。
先頭に変更はないけども、今まで二番目と最後尾にいたヒーターシールド持ちが先頭の左右に立つ。
シールド持ち三人は、建物扉付近に背を預けて待機。
全員が目配せをして首肯し、一人が扉を勢いよく開けば、そこに術士の少女がファイアフライと唱える。
開かれた扉の中から強い輝きが零れ出ているのが確認できた。
扉に背を向けて強い光を直視しなかった少年三人が術士を見れば、術士の少女が首肯で合図。
――輝きが弱まると同時にカイトシールドが先頭で入り、その左右をヒーターシールド持ちがカバーするようにして建物内へと突入。
――突入後、室内から快活良く聞こえてくる声は――、
「クリア!」
といった発言が三回。
「……」
「彼らはまだ駆け出しなので基礎をしっかりと覚えさせています。次の段階で実際に脅威対象となる担当者たちを配置しての、戦術突入訓練を行わせます」
「…………」
「あの――会頭?」
俺のリアクションがないことから、マイヤは些か心配そうな声音になりつつ俺を覗き込んでくる。
「ええっと……。冒険者だよね? 特殊部隊の訓練とかじゃないよね?」
物見櫓から突入訓練をしていた新人さん達に食指を向ければ――、
「もちろんです。彼らは我らがギルドの冒険者ですよ」
「うん。まあ、うん……」
もちろん冒険者のクエストの中には攫われた対象を救出するっていうのもある事だろう。
だから理にかなった訓練だというのは分かる。
分かるんだけども……。
冒険者ってのはもっとド派手に行動して、華やかに救い出すってのが俺のがよくラノベなんかで目にする主人公とその仲間達って感じなんだけどな。
「どう見ても特殊部隊のソレなんだよな……。いや、スムーズな突入からの室内索敵は素晴らしいけどね……」
まあ、仕方ないか。ゲッコーさんが考案しているわけだし。
その後も王都に留まってくれているS級さん達がそれを引き継いでいるんだから、こういったシュチュエーションの訓練では統率力を重視したものになるよね。
素晴らしい動きをした黒色級の新人さん四人が次に何をするのか気になったので続けて眺めていれば、車座になって即、検討。
突入時、左右のヒーターシールド持ちが中央のカイトシールド持ちからわずかに遅れての突入だったという反省が聞こえてくる。
そもそもファイアフライ発動後、光が弱まってきてからの突入自体が遅れていた。
そのわずかな差で人質に危害が加えられたら目も当てられない。
もっと突入をスムーズにすることを心がけないといけない。
――と語り合い、突入の訓練を再開するということだった。
――……ファンタジーな感じじゃないのは、やはり指導するのにS級さん達が参加してくれているってことによる影響が大いな……。
だが再開する時、術士の少女が――「私がスリープを習得できていればいいのに」と発し、カイトシールド持ちが「中位魔法だろそれ? まだまだ習得するには時間がかかるさ」と返し、ヒーターシールド持ちの一人が「それまでは皆で地道に力をつけていこうぜ」と、返していた。
魔法習得のやり取りを耳にして、この異世界はちゃんとファンタジーなんだなと再認識し安堵する。
――。
「あらあらまあまあ、立木も立派になっちゃって」
俺が打ち込んでいた時とは違い、しっかりと人を象った作りになっているじゃないか。
人を模した立木に向かっている新人さん達が木剣、木刀を握って軽快に打ち込んでいく。
攻撃スタイルには統一性がなく、自分たちが培ってきた我流にて立木打ちに勤しんでいた。
――が、その横では、
「キィエェェェェェエ――――!」「チィィィエェェェェィィイ――――!」
と、大気を劈く大音声と共に、全身全霊の力を込めた上段からの振り下ろしを一心不乱に反復で行っている者達もいた。
新人さんや修練場を利用している野良冒険者の面々は、この狂った叫び声に未だになれていないといったところなのか、声を耳にする度に動きがわずかだが鈍くなっていた。
「王都の兵達も利用している光景は変わらないか」
「城の広場にも修練場はあるのですが、以前にトール様がここを使用していたということから、験を担ぐためにここを利用しているそうですよ」
と、ランシェルからの説明を受ける。
城住まいのリズベッドの側回りをしているだけあって、城で行われている鍛錬なんかもよく目にしているそうで詳しくなっていた。
特にリズベッドの世話をするメイドさん達が近くを通れば、兵士たちもやる気を出すそうだ。
ランシェルが側を通る時にも気迫ある声で訓練をするという。
ランシェルが男と知れば、兵士の皆さんはどういったリアクションをとるんだろうね。
今ではこの修練場から響き渡る猿叫も王都の名物となっているとのこと。
しかし――、
「冒険者の方が打ち込みでは負けてるな」
「まだまだですね」
俺の発言にマイヤも賛同する。
王都兵の猿叫を耳にするたびに、新人ギルドメンバー達や野良の冒険者の方々の動きが鈍くなってしまう。
猿叫を耳にして打ち込む部分でタイミングがずらされてしまうといったところなのか、王都兵を鬱陶しいとばかりに半眼で見る者も多い。
が、それは周囲への体裁だろう。
もっと言うなら、猿叫に居竦んでいる自分の姿を周囲に悟られないように誤魔化してもいるといったところか。
これが実戦――、しかも大型モンスターと対峙したとなれば目も当てられない。
バインドボイスを思わせる大型モンスターの咆哮を正面から受けようものなら、王都兵の猿叫どころではない。
動きが妨げられて鈍くなるどころか、動けなくなるだろうからな。
大型モンスターを前に動けなくなるってことは、あっという間に命を奪われるってことと同義。
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