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発展と鍛錬
PHASE-1223【ハウス裏の変わり様よ】
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「冒険者として活動しているとなれば――認識票は?」
問えばレザーアーマーとブレストプレートの間にしまっていた認識票を丁寧に取り出す。
自分にとって努力の証でもあるソレを大事にしているというのが伝わってくる。
「白色級。駆け出しから一歩進んでいるとは凄いですね」
短期間で黒色級からワンランクアップしたそうで、コルレオン氏の実力は本物であると、まるで自分のように喜んでいるマイヤ。
指導する側として、教わる側が成長してくれるのは嬉しいご様子。
「まだまだ実戦経験は少ないですが、採取や駆除などを地道にこなしています。小さなことからコツコツと励んで力をつけていきます」
「良い心がけですね。コルレオン氏」
努力する種族であるコボルトの中でも頑張り屋さんなだけある。
「あの会頭」
「はい?」
「自分はギルド・雷帝の戦槌の冒険者となりました」
「ですね」
「以前からも思っていましたが、氏をつけられると……申し訳なく……」
「そうですかね」
「敬語も」
ええ……。
コルレオン氏は俺より年上だからいいじゃない。
と、思ったけども、そうなると俺の弟子たち三人はとんでも年上のエルフだな。
カイルにギムロン。クラックリック――あとドッセン・バーグなんかも呼び捨てでタメ口だな。
コルレオン氏の指導役であるマイヤに対してもタメ口。
指導役にはタメ口で教わる側には敬語。立場上、コルレオン氏はモヤモヤするものがあるのかもね。
ギルドで働いてもらっているけど、冒険者とは違うポジションってことで無意識に距離を取っていたのかもしれない。
特別視すると他との兼ね合いなんかもあって、逆に気を遣わせてしまっているようだ。
給仕をこなしてくれながら冒険者としても活動しはじめたコルレオン氏。
後者の方で見てもらいたいと思っているのなら、今の関係性ではかえって失礼なのかもしれないな。
「――じゃあ、コルレオンで」
「それでいいと思います」
距離が縮まったと思ったようで、コルレオンは尻尾を嬉しそうに振っていた。
とても純粋な心の持ち主である。
コルレオン個人の人間――コボルト性ってのもあるんだろうけども――、
「真面目でひたむきなのは、上役の指導がしっかりとしているからだろうね。今後も新人さん達に良き指導をお願いしたい」
「それはいいのですが、最近は割り当てられる人数が多く、自らクエストをこなすという機会が少なくなりました」
「後進を育ててくれるのはクエスト攻略以上にありがたいよ」
青色級の実力者が前線に立ってもらえなくなるのは確かに困ることでもあるだろうが、しっかりと新人さん達の底上げをしてくれる存在がいてくれれば、それだけ組織全体の力は向上するからな。
マイヤの実力が他を凌駕していようとも、一人でこなせるクエストの数は限られる。
それなら多数で多数のクエストをこなす方が攻略の効率も上がるというものだ。
とはいえ――、
「失礼な事かもしれないけど、マイヤ年齢は?」
「二十一です」
後方で指導者だけをしてもらうには若すぎるよな。
前線でも活躍してもらいたい。当人もそう思っているようだし。
でも割り当てが増えたとしても、指導役ってポジションはそこまで苦労するということはないはずだ。
この王都においてはね。
「新人さん達の成長――早いでしょ」
「はい。とても」
あまりにも成長が早いから驚いているというのがマイヤの素直な感想だった。
驚くマイヤ自身も王都で励んでいれば、知らず知らずに成長速度が上がっているんだけどね。
やはり先生のユニークスキルである【王佐の才】はチートだよな。
先生が王都にいてくれれば、それだけで王都で生活をしている方々の成長が促せるんだからな。
そういった能力の事を知らないと、マイヤの指導の良さだけが評価されるだろうし、指導する側も新人さん達の成長に驚かされるって事になるんだろうね。
――マイヤが忙しいとなれば、
「カイルも大変なんだろうな」
俺が王都に戻った時、出迎えの中にはマイヤ同様いなかったからな。
「今の時間帯は修練場で指導してんのかな?」
「いえ、今はクエストに出ているでしょう」
「新人さん達の付き添い?」
「以前からいるギルドメンバーと一緒に」
語るマイヤの声音からして、クエストに行ってるカイルが羨ましいみたいだった。
俺としてはカイルにも指導役を……、
「……カイルよりマイヤの方に多くの新人さんが教えを請いに来る感じかな?」
「はい」
「だよね……」
「ん? 訳知り顔のようですね」
俺のリアクションに対して首を傾げつつ問うてくるマイヤ。
その仕草は美人さんがすると素晴らしく栄えますな。
――――そう! 美人さん!
教わるなら誰だって美人さんがいい!
しかも先生に見出された才女。加えて面倒見が良い。
マイヤとカイルを指導役として選ぶことが可能なら、俺だって前者一択になってしまう。
筋骨隆々な偉丈夫よりも。美人さんが勧めてきた禿頭伯爵よりも。その美人さんにお願いしたいとなるのは必至!
俺だって男の子だもん。
「以前のゲッコーさんとカイルがオーバーラップしたな……」
ベル人気時のゲッコーさんみたいに落ち込んでいなければいいけどな。
「どうなさいました会頭?」
「どうもしてないよ」
クエストでカイルが頑張ってくれているならそれはそれでいい。
新人でなくてもクエスト内で経験を得ることは大事だからな。
カイルを中心としたパーティーがクエストで経験を積めば、後々、後進の育成時ににその知識を活かすことも出来る。
問題は、新人さん達がマイヤにばかり指導を求めるという現環境の改善だな。
――――コルレオンを伴ってハウス裏にある修練場へと足を進める。
俺だけでなくコルレオンもマイヤに剣の指導を受けるということから、一緒に二刀の扱い方を教わる事とした。
「――おう」
感嘆の声を漏らせば、
「凄いでしょう」
と、マイヤが得意げに俺に問うてくる。
なので、
「素晴らしいね」
と、素直な気持ちを口にした。
この王都は生き物だ。
戻ってくる度に大きく成長していく。
外周の木壁もそうだが、王都防御壁の内側もしっかりと発展していた。
ギルドハウス側の修練場も更に広大なものへと様変わり。
「ゲッコーさんが考案した訓練箇所も大きくなってる」
「ゲッコー殿の部下の方々も指導役や戦術提案をしてくださっており大いに助かっています。一人一人が圧倒的な強者なので、ギルドの者達も素直に従ってくれます」
強いだけでなく、正鵠を射た指導が出来るS級さん達の指導は、新人さん達だけでなく、腕っこき達の中でも評判がいいという。
新人、ベテラン共に向上心が高いことは良いことだ。
「それにしても本当に変わったな~」
以前はただ広いだけの場所に立木があっただけだった。
そこにゲッコーさんが特殊部隊の訓練を思わせるような建物を模したハリボテセットを設けさせ、現代戦闘の戦術突入訓練なんかを指導していたな。
今はそのハリボテセットも大型化していた。
普通に居住できるくらいに立派な建物へと変貌している。
問えばレザーアーマーとブレストプレートの間にしまっていた認識票を丁寧に取り出す。
自分にとって努力の証でもあるソレを大事にしているというのが伝わってくる。
「白色級。駆け出しから一歩進んでいるとは凄いですね」
短期間で黒色級からワンランクアップしたそうで、コルレオン氏の実力は本物であると、まるで自分のように喜んでいるマイヤ。
指導する側として、教わる側が成長してくれるのは嬉しいご様子。
「まだまだ実戦経験は少ないですが、採取や駆除などを地道にこなしています。小さなことからコツコツと励んで力をつけていきます」
「良い心がけですね。コルレオン氏」
努力する種族であるコボルトの中でも頑張り屋さんなだけある。
「あの会頭」
「はい?」
「自分はギルド・雷帝の戦槌の冒険者となりました」
「ですね」
「以前からも思っていましたが、氏をつけられると……申し訳なく……」
「そうですかね」
「敬語も」
ええ……。
コルレオン氏は俺より年上だからいいじゃない。
と、思ったけども、そうなると俺の弟子たち三人はとんでも年上のエルフだな。
カイルにギムロン。クラックリック――あとドッセン・バーグなんかも呼び捨てでタメ口だな。
コルレオン氏の指導役であるマイヤに対してもタメ口。
指導役にはタメ口で教わる側には敬語。立場上、コルレオン氏はモヤモヤするものがあるのかもね。
ギルドで働いてもらっているけど、冒険者とは違うポジションってことで無意識に距離を取っていたのかもしれない。
特別視すると他との兼ね合いなんかもあって、逆に気を遣わせてしまっているようだ。
給仕をこなしてくれながら冒険者としても活動しはじめたコルレオン氏。
後者の方で見てもらいたいと思っているのなら、今の関係性ではかえって失礼なのかもしれないな。
「――じゃあ、コルレオンで」
「それでいいと思います」
距離が縮まったと思ったようで、コルレオンは尻尾を嬉しそうに振っていた。
とても純粋な心の持ち主である。
コルレオン個人の人間――コボルト性ってのもあるんだろうけども――、
「真面目でひたむきなのは、上役の指導がしっかりとしているからだろうね。今後も新人さん達に良き指導をお願いしたい」
「それはいいのですが、最近は割り当てられる人数が多く、自らクエストをこなすという機会が少なくなりました」
「後進を育ててくれるのはクエスト攻略以上にありがたいよ」
青色級の実力者が前線に立ってもらえなくなるのは確かに困ることでもあるだろうが、しっかりと新人さん達の底上げをしてくれる存在がいてくれれば、それだけ組織全体の力は向上するからな。
マイヤの実力が他を凌駕していようとも、一人でこなせるクエストの数は限られる。
それなら多数で多数のクエストをこなす方が攻略の効率も上がるというものだ。
とはいえ――、
「失礼な事かもしれないけど、マイヤ年齢は?」
「二十一です」
後方で指導者だけをしてもらうには若すぎるよな。
前線でも活躍してもらいたい。当人もそう思っているようだし。
でも割り当てが増えたとしても、指導役ってポジションはそこまで苦労するということはないはずだ。
この王都においてはね。
「新人さん達の成長――早いでしょ」
「はい。とても」
あまりにも成長が早いから驚いているというのがマイヤの素直な感想だった。
驚くマイヤ自身も王都で励んでいれば、知らず知らずに成長速度が上がっているんだけどね。
やはり先生のユニークスキルである【王佐の才】はチートだよな。
先生が王都にいてくれれば、それだけで王都で生活をしている方々の成長が促せるんだからな。
そういった能力の事を知らないと、マイヤの指導の良さだけが評価されるだろうし、指導する側も新人さん達の成長に驚かされるって事になるんだろうね。
――マイヤが忙しいとなれば、
「カイルも大変なんだろうな」
俺が王都に戻った時、出迎えの中にはマイヤ同様いなかったからな。
「今の時間帯は修練場で指導してんのかな?」
「いえ、今はクエストに出ているでしょう」
「新人さん達の付き添い?」
「以前からいるギルドメンバーと一緒に」
語るマイヤの声音からして、クエストに行ってるカイルが羨ましいみたいだった。
俺としてはカイルにも指導役を……、
「……カイルよりマイヤの方に多くの新人さんが教えを請いに来る感じかな?」
「はい」
「だよね……」
「ん? 訳知り顔のようですね」
俺のリアクションに対して首を傾げつつ問うてくるマイヤ。
その仕草は美人さんがすると素晴らしく栄えますな。
――――そう! 美人さん!
教わるなら誰だって美人さんがいい!
しかも先生に見出された才女。加えて面倒見が良い。
マイヤとカイルを指導役として選ぶことが可能なら、俺だって前者一択になってしまう。
筋骨隆々な偉丈夫よりも。美人さんが勧めてきた禿頭伯爵よりも。その美人さんにお願いしたいとなるのは必至!
俺だって男の子だもん。
「以前のゲッコーさんとカイルがオーバーラップしたな……」
ベル人気時のゲッコーさんみたいに落ち込んでいなければいいけどな。
「どうなさいました会頭?」
「どうもしてないよ」
クエストでカイルが頑張ってくれているならそれはそれでいい。
新人でなくてもクエスト内で経験を得ることは大事だからな。
カイルを中心としたパーティーがクエストで経験を積めば、後々、後進の育成時ににその知識を活かすことも出来る。
問題は、新人さん達がマイヤにばかり指導を求めるという現環境の改善だな。
――――コルレオンを伴ってハウス裏にある修練場へと足を進める。
俺だけでなくコルレオンもマイヤに剣の指導を受けるということから、一緒に二刀の扱い方を教わる事とした。
「――おう」
感嘆の声を漏らせば、
「凄いでしょう」
と、マイヤが得意げに俺に問うてくる。
なので、
「素晴らしいね」
と、素直な気持ちを口にした。
この王都は生き物だ。
戻ってくる度に大きく成長していく。
外周の木壁もそうだが、王都防御壁の内側もしっかりと発展していた。
ギルドハウス側の修練場も更に広大なものへと様変わり。
「ゲッコーさんが考案した訓練箇所も大きくなってる」
「ゲッコー殿の部下の方々も指導役や戦術提案をしてくださっており大いに助かっています。一人一人が圧倒的な強者なので、ギルドの者達も素直に従ってくれます」
強いだけでなく、正鵠を射た指導が出来るS級さん達の指導は、新人さん達だけでなく、腕っこき達の中でも評判がいいという。
新人、ベテラン共に向上心が高いことは良いことだ。
「それにしても本当に変わったな~」
以前はただ広いだけの場所に立木があっただけだった。
そこにゲッコーさんが特殊部隊の訓練を思わせるような建物を模したハリボテセットを設けさせ、現代戦闘の戦術突入訓練なんかを指導していたな。
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