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発展と鍛錬
PHASE-1222【オドオドとしてない】
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「是非ともマイヤに、二刀の使い方をご教授願いたい」
「本当に私なんかでいいのですか?」
「迷惑かな?」
「私は慣れているだけの器用貧乏。二刀に特化している訳ではありませんので」
なので二刀を普段から使用する者から学んだ方がいいと言う。
「でもギルドのメンバーでカイルとマイヤを超える者となると、俺のパーティーメンバーくらいしか思い浮かばないんだよね。でもってパーティーには二刀の使い手はいないからな」
ベルとゲッコーさんなら可能なのかもしれないが、二刀はさておきで別の事を鍛えられそうだからな。
「やっぱりマイヤだな」
「そこまで言ってくだされば私も嬉しい限りです。協力はいたしますが、その前に私が思い浮かぶ人物を一人、推薦しても?」
「え、だれ?」
「狂乱の双鉄鞭という異名を持つ、アンダリア伯なのですが――」
「却下!」
力強くマイヤへと返す。
声音から理解できるだろう――絶対に嫌だという思いが!
刀剣ではないものの、二本のオリハルコンからなる硬鞭を戦場で振るう猛将バリタン伯爵なら確かにいい指導をしてくれるだろう。
刀と硬鞭では違いはあるが、左右に得物を持って振るとなると、モーションとしては似た動作ではある。
間違いなくバリタン伯爵の動きは参考になるだろう。
――……でも嫌……。
王都での再会時の姿が、上半身裸のおっさんとかさ……。
しかも体中から湯気を上げているようなむさいおっさんに教わるなんてゴメンである……。
王侯貴族の中でも図抜けて武闘派なおっさんよりも、目の前の美人に教わりたい。
向上心を重んじるなら、当然バリタン伯爵を選択するべきなのだろうけどな。
でも向上心を芽生えさせるには、モチベーションってのが何よりも大事だとおもうの。
導き出される答えは――禿頭の裸おっさんよりも絶対に美人!
――である。
「顔がにやけているようですが」
「お、そうか」
ツッコんでくるのはランシェル。
頬を膨らませるといったリアクションは女の子にしてもらいたいッス……。
でもってそのリアクションを目にして、わずかにでも可愛いと思ってしまった俺……。
――……違う、違う!
「とにかく、よろしくお願いします」
「指導役としてまだまだの存在ですが、会頭のためなら喜んで協力します」
「ありがとう」
なんて素直な美人様だろう。
少しはベルにも見習ってほしいね。
これはマイヤルートという新しいルートがあったりするんじゃないんですかね?
「ですから――顔がにやけています!」
「お、そうか」
ランシェルの嫉妬が爆発。
嬉しいような、そうでないような複雑な気持ちが入り交じる。
「あの、マイヤ殿」
「これは丁度いい。こっちに」
「はいっ!」
「これはこれは、お久しぶりですね。コルレオン氏」
「お帰りなさい会頭!」
「朝の給仕のお仕事が終わったようで」
「はいっ!」
元気な返事が続くね。
初めて会った時のオドオドとしていたコボルトさんとは思えないくらいに、自信に満ちあふれている。
ギルドメンバーはともかくとして、野良さん達の中には荒くれ者も多いだろうからな。
そんな方々も利用するお食事処で常に励んでいれば、精神面だって成長するってものなんだろうが――、それとは別のことでも自信が身についているご様子。
「防具で身を固めていますね」
コルレオン氏の仕事は一階での給仕。
配膳や掃除などを手早く綺麗に行ってくれていた記憶がある。
コボルトって種族は大人でも人間の子供くらいの背格好だが、とても働き者の種族であり、今のギルドにとって大切な存在。
ただ、戦いは好まないというのがこの種族の特徴でもあるのだけれど、コルレオン氏の今の姿は戦闘用そのものだった。
肩当てのないレザーアーマーと、つや消しされた鉄製のブレストプレートを併用した装備。
肩当てがないことから軽快な立ち回りを主としているようだ。
実際、お食事処での仕事の動きは敏捷だったからね。
で、腰には以前から使用している、妥協のない作りからなるY字のスリングショット。
「そういえばワックさんは、この素材を作れるようになったんですかね?」
スリングショットのゴムが気になったので、持ち主のコルレオン氏に問えば――、
「いえ、まだのようです」
相も変わらず、この世界限定の技術でゴムを製造するってことは出来ていないようだ。
ゴムの木が現状では入手できないって事だったからな。
「ですが、酒蔵では下準備をしているそうですよ」
「下準備?」
と、返せば、コルレオン氏からは首肯が返ってくる。
でも何をどこまでやっているのかは分からない模様。
これは後で訪れてみるか。
再びコルレオン氏を上から下まで眺めれば、妥協を許さないスリングショットとは別に――、
「ショートソードが二振り」
といっても、人間の子供サイズが成人のコボルトが使用するショートソードとなれば、全長は五十センチほど。
鞘から推測する剣身は三十センチとちょっと。人間目線だと長めのナイフといったところだ。
「それにしても、なんでそんな恰好を?」
「このギルドだけでなく、この世界の為に少しでも役に立ちたいと思いまして、冒険者の道を歩む選択をしました。今はマイヤ殿に稽古をつけてもらっています」
「そうなんですね。ですが力を振るう事に抵抗は?」
「もちろん有りますが、それ以上にこの世界の為という思いが勝りました」
「素晴らしい」
「コルレオンはとても優秀なんですよ」
と、マイヤが言えば、コルレオン氏は嬉しいのか尻尾を振っていた。
「給仕の時の動きからも身のこなしの良さは分かっているからね。これに加えてラピッドなんかのピリアが使用できれば、動きに鋭さが増すことだろうね」
と、言ってみれば、
「あ、習得は済んでいます」
「お、そうですか」
以前のようなオドオドしたイメージを払拭させるような自信に満ちた返しだった。
「実力で習得したんですよ」
「お、おお」
続くマイヤの発言に俺は感嘆する。
と、同時に、情けなさも覚えた。
俺の場合、ラピッドは実力での習得じゃなかったからな。
マイヤによるインスタントな習得だったからね。自身の力だけで習得したコルレオン氏の実力は本物だ。
加えて向上心もある。
この世界の為に役に立ちたいという発言が偽りのないモノだというのが、自力習得からも伝わってくるってもんだ。
「本当に私なんかでいいのですか?」
「迷惑かな?」
「私は慣れているだけの器用貧乏。二刀に特化している訳ではありませんので」
なので二刀を普段から使用する者から学んだ方がいいと言う。
「でもギルドのメンバーでカイルとマイヤを超える者となると、俺のパーティーメンバーくらいしか思い浮かばないんだよね。でもってパーティーには二刀の使い手はいないからな」
ベルとゲッコーさんなら可能なのかもしれないが、二刀はさておきで別の事を鍛えられそうだからな。
「やっぱりマイヤだな」
「そこまで言ってくだされば私も嬉しい限りです。協力はいたしますが、その前に私が思い浮かぶ人物を一人、推薦しても?」
「え、だれ?」
「狂乱の双鉄鞭という異名を持つ、アンダリア伯なのですが――」
「却下!」
力強くマイヤへと返す。
声音から理解できるだろう――絶対に嫌だという思いが!
刀剣ではないものの、二本のオリハルコンからなる硬鞭を戦場で振るう猛将バリタン伯爵なら確かにいい指導をしてくれるだろう。
刀と硬鞭では違いはあるが、左右に得物を持って振るとなると、モーションとしては似た動作ではある。
間違いなくバリタン伯爵の動きは参考になるだろう。
――……でも嫌……。
王都での再会時の姿が、上半身裸のおっさんとかさ……。
しかも体中から湯気を上げているようなむさいおっさんに教わるなんてゴメンである……。
王侯貴族の中でも図抜けて武闘派なおっさんよりも、目の前の美人に教わりたい。
向上心を重んじるなら、当然バリタン伯爵を選択するべきなのだろうけどな。
でも向上心を芽生えさせるには、モチベーションってのが何よりも大事だとおもうの。
導き出される答えは――禿頭の裸おっさんよりも絶対に美人!
――である。
「顔がにやけているようですが」
「お、そうか」
ツッコんでくるのはランシェル。
頬を膨らませるといったリアクションは女の子にしてもらいたいッス……。
でもってそのリアクションを目にして、わずかにでも可愛いと思ってしまった俺……。
――……違う、違う!
「とにかく、よろしくお願いします」
「指導役としてまだまだの存在ですが、会頭のためなら喜んで協力します」
「ありがとう」
なんて素直な美人様だろう。
少しはベルにも見習ってほしいね。
これはマイヤルートという新しいルートがあったりするんじゃないんですかね?
「ですから――顔がにやけています!」
「お、そうか」
ランシェルの嫉妬が爆発。
嬉しいような、そうでないような複雑な気持ちが入り交じる。
「あの、マイヤ殿」
「これは丁度いい。こっちに」
「はいっ!」
「これはこれは、お久しぶりですね。コルレオン氏」
「お帰りなさい会頭!」
「朝の給仕のお仕事が終わったようで」
「はいっ!」
元気な返事が続くね。
初めて会った時のオドオドとしていたコボルトさんとは思えないくらいに、自信に満ちあふれている。
ギルドメンバーはともかくとして、野良さん達の中には荒くれ者も多いだろうからな。
そんな方々も利用するお食事処で常に励んでいれば、精神面だって成長するってものなんだろうが――、それとは別のことでも自信が身についているご様子。
「防具で身を固めていますね」
コルレオン氏の仕事は一階での給仕。
配膳や掃除などを手早く綺麗に行ってくれていた記憶がある。
コボルトって種族は大人でも人間の子供くらいの背格好だが、とても働き者の種族であり、今のギルドにとって大切な存在。
ただ、戦いは好まないというのがこの種族の特徴でもあるのだけれど、コルレオン氏の今の姿は戦闘用そのものだった。
肩当てのないレザーアーマーと、つや消しされた鉄製のブレストプレートを併用した装備。
肩当てがないことから軽快な立ち回りを主としているようだ。
実際、お食事処での仕事の動きは敏捷だったからね。
で、腰には以前から使用している、妥協のない作りからなるY字のスリングショット。
「そういえばワックさんは、この素材を作れるようになったんですかね?」
スリングショットのゴムが気になったので、持ち主のコルレオン氏に問えば――、
「いえ、まだのようです」
相も変わらず、この世界限定の技術でゴムを製造するってことは出来ていないようだ。
ゴムの木が現状では入手できないって事だったからな。
「ですが、酒蔵では下準備をしているそうですよ」
「下準備?」
と、返せば、コルレオン氏からは首肯が返ってくる。
でも何をどこまでやっているのかは分からない模様。
これは後で訪れてみるか。
再びコルレオン氏を上から下まで眺めれば、妥協を許さないスリングショットとは別に――、
「ショートソードが二振り」
といっても、人間の子供サイズが成人のコボルトが使用するショートソードとなれば、全長は五十センチほど。
鞘から推測する剣身は三十センチとちょっと。人間目線だと長めのナイフといったところだ。
「それにしても、なんでそんな恰好を?」
「このギルドだけでなく、この世界の為に少しでも役に立ちたいと思いまして、冒険者の道を歩む選択をしました。今はマイヤ殿に稽古をつけてもらっています」
「そうなんですね。ですが力を振るう事に抵抗は?」
「もちろん有りますが、それ以上にこの世界の為という思いが勝りました」
「素晴らしい」
「コルレオンはとても優秀なんですよ」
と、マイヤが言えば、コルレオン氏は嬉しいのか尻尾を振っていた。
「給仕の時の動きからも身のこなしの良さは分かっているからね。これに加えてラピッドなんかのピリアが使用できれば、動きに鋭さが増すことだろうね」
と、言ってみれば、
「あ、習得は済んでいます」
「お、そうですか」
以前のようなオドオドしたイメージを払拭させるような自信に満ちた返しだった。
「実力で習得したんですよ」
「お、おお」
続くマイヤの発言に俺は感嘆する。
と、同時に、情けなさも覚えた。
俺の場合、ラピッドは実力での習得じゃなかったからな。
マイヤによるインスタントな習得だったからね。自身の力だけで習得したコルレオン氏の実力は本物だ。
加えて向上心もある。
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