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発展と鍛錬
PHASE-1247【一気飲み回避】
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「――――!? あ、なるほどね」
「どしたよ。急に」
突然の俺の大声に、目の前のギムロンが怪訝な表情へと変わる。
「いやな。物言いはキツくておっかないけど、ドッセン・バーグって新人さん達に優しいんだなって思ったんだよ」
ランシェルを除き、昨日の内容を知らない眼前の面々は、頭に疑問符を浮かべるように揃って首を傾げていた。
――新人さん達を鍛えている最中、中身がポーションの小瓶を同時に四人へと投げ渡していたけど、小瓶のサイズを見た時、量の少なさから訓練用の仕様かなにかなのかと思っていたが、冒険、クエスト時に使用するものと同様のモノを投げ渡していたんだな。
俺達が王都にいない間も、身銭を切りながら新人さん達の面倒を見ていたんだろうな。
毎度、同様の事をしているとなると、結構な個人出費をしてくれているんだろう。
ドッセン・バーグ――出来たおっさんである。
以前と違って今度は真心から食事を奢らせてもらおう。
「何とも満足げな笑みを湛えているから、思い出している内容はいいもののようだの」
「まあね」
ぶっきらぼうだけども面倒見は良い。ああいった人物に育てられれば強い冒険者となってくれるだろう。
「で、トールの感想は?」
「これからは今までの半分の量ですむから携行する量も増える。つまりはそれだけ現場で活動する面々の生存率も高くなる。嬉しいことこの上ないね」
問うてくるシャルナへと返せば、ドヤッとした態度で胸を反らしてくる。
俺達が王都にいない間、この酒蔵で技術を高めてくれた方々のおかげなんだけどな。
――まあ以前、素材集めなんかを頑張ってくれていたシャルナだからな。ドヤる権利はあるとしよう。
しかし――だ。
「携行量が増えるのは喜ばしいけども、比例するように小瓶の携帯量も増えるよな。むしろ雑嚢なんかの収納にはかさばるような気がする。これなら今までの小瓶に入れて二回に分けて使用したほうがよくないか?」
「ベテランならそれでもいいかもな。だとしてもワシは新しい小型の小瓶を選択するけどの」
「なして?」
ヒゲをしごくギムロンに問えば、デカイ拳を作ってそこから拇指だけを立て、それをゲッコーさんへと向ける。
向けられた人物はそれに合わせるように、グラスに注がれた飴色の液体をグイッと一気に飲んでみせる。
「――と、いうわけよ」
「なるほど――ね」
ギムロンが何を言いたいのか直ぐに分かった。
前線で戦闘に参加する者達がポーションを飲むという状況というのは、当然、眼前では敵が攻撃を仕掛けてくる可能性が高い時。
戦いの最中となればベテランであっても焦りが生じるもの。
今までの小瓶に入れていたら、興奮と焦燥が入り交じる戦闘時に飲んだり体にかけるという動作をすれば、目の前のゲッコーさんのような一気飲みや全部を体に塗布する可能性が高い。
――というかそういった選択をしてしまう可能性しかない。
俺だったら間違いなく一気に飲むからね。
二回分の使用が可能なポーションを一度で使い切ってしまえば無駄な消費となってしまう。
「ギムロンが新しい小瓶を携帯するって理由に納得だな。俺もそっちを選択するね」
「じゃろ。確かに携帯するとなるとかさばるかもしれんが、命を預けるアイテムが増える事に越したことはないからの」
「しかり、しかり」
上機嫌なゲッコーさんが相槌を打つ。
「王都に戻ってからは戦士――兵士の休息を満喫してますね」
「さもあろう、さもあろう」
酒を飲むペースが早いみたいだな。
俺達がここを訪れる前から飲んでんだろうしな。まだ朝なのに。
まあ今までが大変だったから大目に見よう。わずかな期間だけど王都にいる間はゆっくりとしてもらいたいからな。
「お! 偉いぞトール。酔っ払いを目の前にして可哀想な目で見てこなかったな。まるで楽しんでほしいといった優しさのある目だったぞ。流石は勇者。その微笑み――俺は嬉しいぞ」
これは相当に酔っておられる。
ここまで上機嫌な姿ってのは本当に珍しい。
有事では冷静な行動をする人物だが、その姿からはあまりにもかけ離れている。
こんなゲッコーさんは初めて目にするかもな。
こっちの心を読んでくるところは酔っていても流石は伝説の兵士といったところだけども。
「あんまり飲みすぎないでくださいよ。体に毒ですからね」
「フッ――肝臓がシビれ上がってからが本番だ」
なんて素敵な声の無駄遣い……。
ものすごく格好いい渋声で、ものすごく恰好の悪い飲兵衛発言をしたもんだよ……。
ベルがこの場にいたら間違いなく鉄拳による制裁が下されただろうな。
「フッ、今は子グマにくびったけだからな」
――……いやもう本当に……。人の思考は飲んでいても読めるのは流石ですよ。
歴戦で培ってきた経験則により、相手の表情から心中を読めるのは凄いんだけども、いまここでのソレはスゲー才能の無駄遣いですね。
「そんな残念な目になるなよ。トールだけでなくシャルナとランシェルもな」
ここでギムロンが残念な目にならないのは、同じ飲兵衛仲間だからなんだろうな。
「お三方。この酒蔵一帯ではポーション以外の事でも励んでいるんだからな。そこでの評価も頼む」
だからそんな目を向けないでくれと言いつつも、レードルを手にして直ぐさま瓶から酒を注ぐ姿を見せられれば評価は渋いものになりそうですよ。
――グラス片手に飲兵衛と化したゲッコーさんが先頭を歩き、それに続いて酒蔵を後にする。
「シャルナは何に励んでいるか知ってんの?」
「ううん。私は酒蔵でポーション制作の手伝いをしてたくらいだから。それ以外は目にしたことがないんだよね」
「そうか」
酒蔵は西門付近にあるギルドハウスからしたら真反対の東門側にあり、王都の中でも中々に足を向けることはない。
だがこっち方面も以前と比べると、酒蔵以外にも発展していた。
その証拠とばかりに新しい建物がいくつか建設されている。
そんな新しい建物の中から俺達が目標として足を進めていくのは――木造平屋。
外観からして建設された建物の中でも真新しいものだというのが分かる。
新しい木造建築が醸し出す、木の良き香りを堪能できそうだな。
「どしたよ。急に」
突然の俺の大声に、目の前のギムロンが怪訝な表情へと変わる。
「いやな。物言いはキツくておっかないけど、ドッセン・バーグって新人さん達に優しいんだなって思ったんだよ」
ランシェルを除き、昨日の内容を知らない眼前の面々は、頭に疑問符を浮かべるように揃って首を傾げていた。
――新人さん達を鍛えている最中、中身がポーションの小瓶を同時に四人へと投げ渡していたけど、小瓶のサイズを見た時、量の少なさから訓練用の仕様かなにかなのかと思っていたが、冒険、クエスト時に使用するものと同様のモノを投げ渡していたんだな。
俺達が王都にいない間も、身銭を切りながら新人さん達の面倒を見ていたんだろうな。
毎度、同様の事をしているとなると、結構な個人出費をしてくれているんだろう。
ドッセン・バーグ――出来たおっさんである。
以前と違って今度は真心から食事を奢らせてもらおう。
「何とも満足げな笑みを湛えているから、思い出している内容はいいもののようだの」
「まあね」
ぶっきらぼうだけども面倒見は良い。ああいった人物に育てられれば強い冒険者となってくれるだろう。
「で、トールの感想は?」
「これからは今までの半分の量ですむから携行する量も増える。つまりはそれだけ現場で活動する面々の生存率も高くなる。嬉しいことこの上ないね」
問うてくるシャルナへと返せば、ドヤッとした態度で胸を反らしてくる。
俺達が王都にいない間、この酒蔵で技術を高めてくれた方々のおかげなんだけどな。
――まあ以前、素材集めなんかを頑張ってくれていたシャルナだからな。ドヤる権利はあるとしよう。
しかし――だ。
「携行量が増えるのは喜ばしいけども、比例するように小瓶の携帯量も増えるよな。むしろ雑嚢なんかの収納にはかさばるような気がする。これなら今までの小瓶に入れて二回に分けて使用したほうがよくないか?」
「ベテランならそれでもいいかもな。だとしてもワシは新しい小型の小瓶を選択するけどの」
「なして?」
ヒゲをしごくギムロンに問えば、デカイ拳を作ってそこから拇指だけを立て、それをゲッコーさんへと向ける。
向けられた人物はそれに合わせるように、グラスに注がれた飴色の液体をグイッと一気に飲んでみせる。
「――と、いうわけよ」
「なるほど――ね」
ギムロンが何を言いたいのか直ぐに分かった。
前線で戦闘に参加する者達がポーションを飲むという状況というのは、当然、眼前では敵が攻撃を仕掛けてくる可能性が高い時。
戦いの最中となればベテランであっても焦りが生じるもの。
今までの小瓶に入れていたら、興奮と焦燥が入り交じる戦闘時に飲んだり体にかけるという動作をすれば、目の前のゲッコーさんのような一気飲みや全部を体に塗布する可能性が高い。
――というかそういった選択をしてしまう可能性しかない。
俺だったら間違いなく一気に飲むからね。
二回分の使用が可能なポーションを一度で使い切ってしまえば無駄な消費となってしまう。
「ギムロンが新しい小瓶を携帯するって理由に納得だな。俺もそっちを選択するね」
「じゃろ。確かに携帯するとなるとかさばるかもしれんが、命を預けるアイテムが増える事に越したことはないからの」
「しかり、しかり」
上機嫌なゲッコーさんが相槌を打つ。
「王都に戻ってからは戦士――兵士の休息を満喫してますね」
「さもあろう、さもあろう」
酒を飲むペースが早いみたいだな。
俺達がここを訪れる前から飲んでんだろうしな。まだ朝なのに。
まあ今までが大変だったから大目に見よう。わずかな期間だけど王都にいる間はゆっくりとしてもらいたいからな。
「お! 偉いぞトール。酔っ払いを目の前にして可哀想な目で見てこなかったな。まるで楽しんでほしいといった優しさのある目だったぞ。流石は勇者。その微笑み――俺は嬉しいぞ」
これは相当に酔っておられる。
ここまで上機嫌な姿ってのは本当に珍しい。
有事では冷静な行動をする人物だが、その姿からはあまりにもかけ離れている。
こんなゲッコーさんは初めて目にするかもな。
こっちの心を読んでくるところは酔っていても流石は伝説の兵士といったところだけども。
「あんまり飲みすぎないでくださいよ。体に毒ですからね」
「フッ――肝臓がシビれ上がってからが本番だ」
なんて素敵な声の無駄遣い……。
ものすごく格好いい渋声で、ものすごく恰好の悪い飲兵衛発言をしたもんだよ……。
ベルがこの場にいたら間違いなく鉄拳による制裁が下されただろうな。
「フッ、今は子グマにくびったけだからな」
――……いやもう本当に……。人の思考は飲んでいても読めるのは流石ですよ。
歴戦で培ってきた経験則により、相手の表情から心中を読めるのは凄いんだけども、いまここでのソレはスゲー才能の無駄遣いですね。
「そんな残念な目になるなよ。トールだけでなくシャルナとランシェルもな」
ここでギムロンが残念な目にならないのは、同じ飲兵衛仲間だからなんだろうな。
「お三方。この酒蔵一帯ではポーション以外の事でも励んでいるんだからな。そこでの評価も頼む」
だからそんな目を向けないでくれと言いつつも、レードルを手にして直ぐさま瓶から酒を注ぐ姿を見せられれば評価は渋いものになりそうですよ。
――グラス片手に飲兵衛と化したゲッコーさんが先頭を歩き、それに続いて酒蔵を後にする。
「シャルナは何に励んでいるか知ってんの?」
「ううん。私は酒蔵でポーション制作の手伝いをしてたくらいだから。それ以外は目にしたことがないんだよね」
「そうか」
酒蔵は西門付近にあるギルドハウスからしたら真反対の東門側にあり、王都の中でも中々に足を向けることはない。
だがこっち方面も以前と比べると、酒蔵以外にも発展していた。
その証拠とばかりに新しい建物がいくつか建設されている。
そんな新しい建物の中から俺達が目標として足を進めていくのは――木造平屋。
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