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発展と鍛錬
PHASE-1258【大きく広く】
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「こういった時はコクリコではなく、お前が場を締めないといけないんだろうがな」
周囲の大音声の中、ベルが呆れ気味に俺へと伝えてくる。
「ま、まああれだよ。昇級のための向上心を持つ者が発した方が、全体にも伝わるということでいいんじゃないの。それにいつも通りのコクリコだと思えばいいしな」
「確かにな」
なんとかごまかせた気がした。
――。
「ふぃぃぃ~やっと終わったわい」
「そんな長いものでもなかったでしょ」
昇級した者同士で語り合う。
前者は衆目が自分へと注がれなくなったからか、声の調子がいつものように豪快なものへと変わっていた。
「改めて二人ともおめでとう」
ここでベルが二人を祝福。
二人もそれに対して感謝の言葉を返していた。
「祝い事には――酒だな」
と、周囲に酒を振る舞っていたゲッコーさんもここで俺達のところへとやってくる。
手には飴色の液体が入ったグラスを乗せたトレー。
「緊張で喉が渇いとったからの。蔵元、感謝するぞ」
言いつつギムロンはグラスの中の酒を一飲み。常温の酒では喉は潤せないだろうと思うけど、ドワーフは違うようだ。
強さはないが、今のワシには丁度良いとの事。
まるで水を飲んでいるかのように二杯目も煽る。
シャルナにベル。先生も手にし――、
「ほらお前も。度数が低いのを選んだのはお前に合わせるためだ」
「配慮どうも」
飲めば言うように飲みやすかった。ハチミツを思わせる甘味のある酒は俺でも楽しめる。
飲兵衛二人を目にしているから呑まれることはない男になりたいけどね。
「そういえばリンは?」
「あの性悪は大勢の中にいるのは嫌だから、参加しないって前もって伝えてきたよ」
ほう。シャルナにそんな事を言うとはね。
「――本当にそれだけだったのか?」
わざわざ参加しないって発言だけをするってのはおかしいからな。
問うてみれば、シャルナは唇を尖らせつつ――、
「おめでとうって言ってくれた。意地悪そうに笑いながらね」
「如何にもリンだな。表情と内面は正反対なのがとくにな」
「表情と内面は一緒なんじゃないの?」
「あいつ上位アンデッドといると素が出るだろ」
「確かに。じゃあ素直に祝福してくれたと思ってあげようかな」
シャルナもシャルナでリンに対しては素直じゃないよな。
俺が死にかけた時は、二人揃って即、回復魔法を施してくれるというコンビネーションを見せてくれたのに。
口では言い争っていても、実際は良いコンビなんだよね。
「さてと。昇級式も終わったわけだし――」
解散と継ごうとしたところで、
「主。本番はここからですよ」
「はい?」
「めでたいことなのですからね。この場に集まってくださった方々にはもっと楽しんでいただかないと」
十分に楽しんでいるようですけど。酒盛りで大賑わいだし。
「酒には肴。酒が飲めない者達には美味いモノをってのが大事だよな」
「そうでしょうね」
ゲッコーさんに返しつつ、そのゲッコーさんの方を見れば悪い笑みを湛えていた。
え、なに?
「ここからは主に出資者となっていただき、皆を楽しませてもらいましょう」
「……はぁぁぁぁん!?」
「お願いします」
「いやいや先生、言ってましたよね。ギルドの財は無限じゃないって。公爵としても私的に使用するのもよくないって」
「言いましたよ」
「だったら」
「ですが主は個人的に持っているじゃないですか。そこから出してください」
オウ……。なんて清々しい笑みなのだろう……。
「ここで曇った表情を顔に貼り付けることなく、涼やかな表情で奢ると発せば、人々から更に敬慕の念を抱かれることとなるでしょう。無論――女人たちも――」
なんともまあ先生ってば嫌らしい事を言いますね。
まるで俺が語末の発言に刺激を受けるとでも思っているんでしょうかね?
「よ~し! 皆。好きなだけ楽しんでくれ! 俺の奢りだ!」
はたして正にですけどね。
先生の言葉に乗せられ、ノリと勢いで述べれば大歓声。
中には黄色い声も含まれていたので、心の中でガッツポーズ。
「トール。ご馳走になります」
「おう。出来れば手加減してくれコクリコ。今回の主役はこの二人だからな」
「私は主役を食う存在ですから」
わあ格好いい発言。
タダ飯をしこたま食べる気満々だな。
まあいいけど。
「ベルも楽しんでくれよな」
俺の豪気さに好感度を上げてちょうだい。
「そうしたいのは山々だが――」
「おん?」
「ゴロ太がおねむだ。私は戻らせてもらう」
「……お、そうか……」
「では楽しんでくれ」
そう言うと、ベルは微睡んでいるゴロ太を抱っこして、ギルドハウスから去っていく……。
王都に戻ってからというもの、本当にゴロ太を中心とした生活ですね……。
羨ましいことです……。
「じゃんじゃんと食事を私――私の前だけに持ってきてください!」
背中越しにコクリコの快活な声が届く。
反面、俺のテンションはだだ下がり。
アホみたいに楽しみやがって! といった負の感情が湧き上がっていきますよ。
まったく。めでたい事だってのに、俺ってなんとも情けない器の持ち主じゃないですか……。
もっともっと心を大きく広くしないといけないよな。
――――。
「うぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁあ!!」
「なんですかトール! その怒りの籠もりようは!? 私にどんな恨みがあるんですか!」
次の日にはコクリコと修練場で鍛練という名の八つ当たり!
ベルめ! ゴロ太との付き合いも大事だろうが、俺にも少しはその時間をくれたっていいじゃないか!
でもってコクリコ! 俺のテンションが下がっていった昨晩、反対にテンションが上がっていき、とんでもない量のメシを食ってくれたよ。
中々にデカい出費だったぞ!
ベルのゴロ太にばかり時間を使う姿と、コクリコの無遠慮。
それを理由として一心不乱に二本の木刀を振り続ける。
心を大きくも広くも出来なかった残念な俺。
振って振って振りまくる。
――八つ当たりだ!
周囲の大音声の中、ベルが呆れ気味に俺へと伝えてくる。
「ま、まああれだよ。昇級のための向上心を持つ者が発した方が、全体にも伝わるということでいいんじゃないの。それにいつも通りのコクリコだと思えばいいしな」
「確かにな」
なんとかごまかせた気がした。
――。
「ふぃぃぃ~やっと終わったわい」
「そんな長いものでもなかったでしょ」
昇級した者同士で語り合う。
前者は衆目が自分へと注がれなくなったからか、声の調子がいつものように豪快なものへと変わっていた。
「改めて二人ともおめでとう」
ここでベルが二人を祝福。
二人もそれに対して感謝の言葉を返していた。
「祝い事には――酒だな」
と、周囲に酒を振る舞っていたゲッコーさんもここで俺達のところへとやってくる。
手には飴色の液体が入ったグラスを乗せたトレー。
「緊張で喉が渇いとったからの。蔵元、感謝するぞ」
言いつつギムロンはグラスの中の酒を一飲み。常温の酒では喉は潤せないだろうと思うけど、ドワーフは違うようだ。
強さはないが、今のワシには丁度良いとの事。
まるで水を飲んでいるかのように二杯目も煽る。
シャルナにベル。先生も手にし――、
「ほらお前も。度数が低いのを選んだのはお前に合わせるためだ」
「配慮どうも」
飲めば言うように飲みやすかった。ハチミツを思わせる甘味のある酒は俺でも楽しめる。
飲兵衛二人を目にしているから呑まれることはない男になりたいけどね。
「そういえばリンは?」
「あの性悪は大勢の中にいるのは嫌だから、参加しないって前もって伝えてきたよ」
ほう。シャルナにそんな事を言うとはね。
「――本当にそれだけだったのか?」
わざわざ参加しないって発言だけをするってのはおかしいからな。
問うてみれば、シャルナは唇を尖らせつつ――、
「おめでとうって言ってくれた。意地悪そうに笑いながらね」
「如何にもリンだな。表情と内面は正反対なのがとくにな」
「表情と内面は一緒なんじゃないの?」
「あいつ上位アンデッドといると素が出るだろ」
「確かに。じゃあ素直に祝福してくれたと思ってあげようかな」
シャルナもシャルナでリンに対しては素直じゃないよな。
俺が死にかけた時は、二人揃って即、回復魔法を施してくれるというコンビネーションを見せてくれたのに。
口では言い争っていても、実際は良いコンビなんだよね。
「さてと。昇級式も終わったわけだし――」
解散と継ごうとしたところで、
「主。本番はここからですよ」
「はい?」
「めでたいことなのですからね。この場に集まってくださった方々にはもっと楽しんでいただかないと」
十分に楽しんでいるようですけど。酒盛りで大賑わいだし。
「酒には肴。酒が飲めない者達には美味いモノをってのが大事だよな」
「そうでしょうね」
ゲッコーさんに返しつつ、そのゲッコーさんの方を見れば悪い笑みを湛えていた。
え、なに?
「ここからは主に出資者となっていただき、皆を楽しませてもらいましょう」
「……はぁぁぁぁん!?」
「お願いします」
「いやいや先生、言ってましたよね。ギルドの財は無限じゃないって。公爵としても私的に使用するのもよくないって」
「言いましたよ」
「だったら」
「ですが主は個人的に持っているじゃないですか。そこから出してください」
オウ……。なんて清々しい笑みなのだろう……。
「ここで曇った表情を顔に貼り付けることなく、涼やかな表情で奢ると発せば、人々から更に敬慕の念を抱かれることとなるでしょう。無論――女人たちも――」
なんともまあ先生ってば嫌らしい事を言いますね。
まるで俺が語末の発言に刺激を受けるとでも思っているんでしょうかね?
「よ~し! 皆。好きなだけ楽しんでくれ! 俺の奢りだ!」
はたして正にですけどね。
先生の言葉に乗せられ、ノリと勢いで述べれば大歓声。
中には黄色い声も含まれていたので、心の中でガッツポーズ。
「トール。ご馳走になります」
「おう。出来れば手加減してくれコクリコ。今回の主役はこの二人だからな」
「私は主役を食う存在ですから」
わあ格好いい発言。
タダ飯をしこたま食べる気満々だな。
まあいいけど。
「ベルも楽しんでくれよな」
俺の豪気さに好感度を上げてちょうだい。
「そうしたいのは山々だが――」
「おん?」
「ゴロ太がおねむだ。私は戻らせてもらう」
「……お、そうか……」
「では楽しんでくれ」
そう言うと、ベルは微睡んでいるゴロ太を抱っこして、ギルドハウスから去っていく……。
王都に戻ってからというもの、本当にゴロ太を中心とした生活ですね……。
羨ましいことです……。
「じゃんじゃんと食事を私――私の前だけに持ってきてください!」
背中越しにコクリコの快活な声が届く。
反面、俺のテンションはだだ下がり。
アホみたいに楽しみやがって! といった負の感情が湧き上がっていきますよ。
まったく。めでたい事だってのに、俺ってなんとも情けない器の持ち主じゃないですか……。
もっともっと心を大きく広くしないといけないよな。
――――。
「うぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁあ!!」
「なんですかトール! その怒りの籠もりようは!? 私にどんな恨みがあるんですか!」
次の日にはコクリコと修練場で鍛練という名の八つ当たり!
ベルめ! ゴロ太との付き合いも大事だろうが、俺にも少しはその時間をくれたっていいじゃないか!
でもってコクリコ! 俺のテンションが下がっていった昨晩、反対にテンションが上がっていき、とんでもない量のメシを食ってくれたよ。
中々にデカい出費だったぞ!
ベルのゴロ太にばかり時間を使う姿と、コクリコの無遠慮。
それを理由として一心不乱に二本の木刀を振り続ける。
心を大きくも広くも出来なかった残念な俺。
振って振って振りまくる。
――八つ当たりだ!
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