異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

文字の大きさ
1,305 / 1,861
矮人と巨人

PHASE-1305【大生物のあとしまつ】

しおりを挟む
 ――対処できたことと安堵で二人が笑みを向け合う中――、

「ですが遅かったのも事実。シャルナとタチアナの掩護ありきでしたよ。もっと次への行動へと素早く移行できないと駄目です。相手は待ってくれませんからね」
 俺とは逆に悪いところを指摘するコクリコ。
 発言に対して素直に頷く二人。
 本来なら称賛と一緒に俺がその部分も言わないといけない事だったな。
 コクリコに言わせたのは申し訳なかった。

「まあ前衛が一体を中衛と後衛に任せっきりだったのは反省だよな」

「あえてでしょ」

「まあ、うん」
 このくらいの手合いを対処できないなら申し訳ないけど、アラムロス窟に強制待機とも考えていたからな。
 その心配はないくらいに練度は高かったけど。
 
 後は場慣れだろう。

 慣れていけば冷静な状態を維持しつつ、素早く次への行動に移る事が出来るようになるだろうからな。
 この部分は俺も研鑽していかないといけないところだけども。

「ううう……」

「どうしたミルモン?」

「オイラも活躍したかったよ……」

「いやいや、道を指し示すこと自体が大活躍だからな」

「オイラとしては戦闘に参加したかったよ……」
 短気ゆえに好戦的でもあるからな。

「アクセル使用時に、離れなかったのは凄かったぞ」

「まあね」
 褒めてあげるとちょっと機嫌がよくなった。

「活躍する機会はあるさ。ミルモンにはミルモンに出来る事ってのがあるからな。そこで力を振るってほしい。というか、現状でも十分に振るってもらってるしな。今後も頼むよ」

「お任せさ!」
 あっという間に上機嫌。
 やはりミルモンの扱い方は、コクリコと同じような方法がいいようだな。

「それで――このアジャイルセンチピードはどうします?」
 俺とミルモンのやり取りに一区切りついたところでコルレオンが死骸を指さす。
 巨大なムカデの亡骸が四体。
 このままにするのは惜しいとのこと。
 素材として確保するべきだろうと提案するコルレオンにパロンズ氏も賛同。
 鉄球によるダメージは受けたけども、ダートを弾くだけの外骨格は防具の素材として適しているし、一メートルを優に超える左右の長い顎肢も剣やナイフとして使用できる。
 アジャイルセンチピードの幼体の顎肢を利用して、ゴロ太がソードブレイカーを俺の為に制作してくれたしな。
 ――……まあ、使ったことはほぼ無いと言ってもいいけども……。
 アンクルホルスターに収まるチーフスペシャルと、ゴロ太のナイフからは「解せぬ……」という幻聴が聞こえてきそうだ。

「会頭。どうしますか? 無理なら放置ということでいいでしょうか?」

「大地に帰らせ、新たなる動植物の糧にするのもいいでしょうな」
 と、コルレオンとパロンズ氏。
 それはそれでいいとも思うけど、素材として活用できるのをこのままにするってのは貧乏性な俺には出来ないのも事実。

「この辺りならまだ窟まで近いから、ドワーフさん達にお願いするのもいいかもしれないけども――」
 わざわざ戻るのも面倒だし、窟の方々に迷惑をかけるのもあれだしな。

 となると――、

「トールはトラックなるものが出せるでしょう。なにをそんなに考え込む必要があるのですか」

「コクリコの言うとおりだよな」
 俺もその答えを選択しようとしていたところなんですよ。
 木々が伸び、下生えと隆起した地面の中で召喚するのが難しいと思っていたから躊躇していただけ。
 コルレオンがトドメを刺したアジャイルセンチピードがダメージを受けた時に地面で暴れ回ってくれたことで、そこそこ広い空間が出来ていたのでそこを利用させてもらおう。
 
 ――……利用はしたけども、流石にトラック一台を召喚するには無理があったようで、木々が原因で傾いた姿で召喚。
 こういう時、宙空に大小構わずなんでも収納できるアイテムボックスという能力がある主人公たちが羨ましくなる。
 車体の姿勢はどうあれ、積めそうだから良しとしよう。
 
 問題は、

「どう積み込むかだな」

「私は周囲を警戒しておくから」
 即そう発するのはシャルナ。
 虫系はベルと同様で苦手だからな。
 切り口からは青い体液も出ているし……。
 俺も積み込み作業は拒否したいところ。
 
 なのでシャルナに便乗するように――、

「俺は防衛を行う!」

「駄目です!」

「駄目かぁ……」
 直ぐさまコクリコから却下。
 現状、脅威もないのに防衛なんてしなくていいと、至極真っ当な返しを受ける。
 でもってシャルナと一緒に自分も周囲を警戒すると言って、積み込み作業をスマートに回避。

「はぁ……」
 大体、こんなデカいのを持ち上げて運ぶとか、ピリアで肉体強化しても流石に無理があるっての……。

「ぶつ切りにして運びます?」

「お、おお……」
 そう言って双剣の一振りだけを抜剣するコルレオン。
 バイタリティは俺よりもはるかに高い。
 艶ある紫黒の外骨格の切り口から青い体液が出ているだけでも嫌なのに、これ以上に体液まみれとなった部位を持って運ぶなんて、拙者、嫌でござる。
 以前の洞窟で、ダイヒレンの白い体液が一帯を染め上げた光景を思い出してしまい、背中から尻にかけて寒いものが走る……。

「よし、ここはゴロ丸に頼もう」
 三メートルサイズのミスリルゴーレムの力なら積み込み作業も楽ってもんだ。
 首にぶら下げている地龍の角の一欠である曲玉を手にしようとしたところで、

「会頭。ここは自分に全てを任せてください。その間、皆さんは体を休めていてください」
 ズイッと俺へと距離を詰めてきてからの力強い発言。

「パロンズ氏だけに運ばせるなんて出来ませんよ」
 いくら筋力向上を目指しているとはいえ、そういうのは安全圏である王都だけでやっていただきたい。
しおりを挟む
感想 588

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...