異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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矮人と巨人

PHASE-1330【合挽ですって】

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 ――…………。
 
 ――……。
 
 まさかこれほどとは……ね……。
 
 修練場では魔法ではなく、サーバントストーンのコントロール向上と、それと併用して俺の二刀の練習をしていたくらいだったからな。
 魔法を使用し、実戦による敵性への使用となるのは初めて目にする。
 圧巻の威力に生唾を飲んでしまった。
 アドンとサムソンの力を使用すると、本当にコクリコの魔法じゃないみたいだ。
 土壁の破壊も凄かったけども、目の前で一つの魔法を発動しただけで、多くの敵がバタバタと倒れていくというのは、俺の知るコクリコさんじゃないよ……。

 ――……ん?

 随分と静かじゃないか。
 ド派手な音が発生した後だから静けさを余計に感じる。

「コクリ……コ?」
 恐る恐る名を出せば、

「フフフ……」
 ――……ああ……。これは嵐の前の静けさってやつだな……。

「アッ――ハッハッハッハッハッハ――! ヒャハハハハハハハハハハ!!!!」
 後半の哄笑は美少女が発していいものじゃないぞ……。ちょい前のクールな声音はどこにいった……。
 馬鹿まる出しの高笑いが、お邪魔した拠点一帯に木霊する。
 完全に自分が思っていた以上の威力だったようだ。
 非殺傷であるものの、アークディフュージョンにより多くの相手が地に倒れ、その光景を目の当たりにする残りの連中は、今までコクリコに向けていた怒りや性欲というものが消え去り、代わりに恐怖を刷り込まれてしまったようで、足を止めるどころか一斉に後退り。
 その動きを見れば、コクリコは更に高揚感に包まれた哄笑を一帯へと響かせた。
 
 コクリコも凄いけど、リンが製作した装身具であるオスカーとミッターによる魔力の底上げ効果がぶっ飛んでる。
 で、カトゼンカ氏のアドンとサムソン。
 これらが混ざり合って力を発揮すれば、とてつもない破壊力を生み出せるわけだ……。

「とんでもないですな」

「そうでしょうとも! もっと私に対して喝采をしてもいいのですよ」
 パロンズ氏の感嘆にさらに気分が良くなっている――ので、

「コクリコさんのもっと良いところ、見てみたい」
 呷ってみれば、

「いいですとも! お次はこれです! ポップフレア!」
 バーストフレアと比べれば可愛らしい炸裂魔法なのだが、アドンとサムソンが術者に呼応し、三方向から一点に集中させることでの連鎖爆破は派手なものだった。

「同時炸裂だとバーストフレアみたいだな」

「ハハハハ――ッ!!」
 擬似的でありながらも威力は上位魔法クラス。
 コクリコのテンションがマックスへとなったところで、

「パロンズ氏」

「お任せを! ストーンブラスト!」
 ポップフレア三連発の隙間に向けて、石つぶてによる散弾の面制圧。
 炸裂魔法の直撃を免れた者達がパニックになっている所に飛礫の雨が横殴りで打ち込まれれば、激痛からなる声を上げる。
 必殺とまではいかないが、動きを止めるには十分なパロンズ氏の魔法。

「一気にたたみ込むのだ」
 自らが召喚したマッドゴーレムに再度の突撃を命じれば、苦痛を上げる者達の方へとドスドスと足音を立てて突き進んでいく。

「Go! ゴロ丸!」

「キュウ!」
 マッドゴーレムと連携して挟撃させるようにゴロ丸に突撃を行わせれば、土の巨人が暴れる時よりも大きな悲鳴が上がっていく。
 良い装備で身を固めていても、質量のあるミスリルの拳の前では無意味。
 殴られた部分が大いにヘコんだり、衝撃で防具が吹き飛び、体が地面に叩き付けられる前には既に事切れていく集団。

「貴様等ぁぁぁぁぁぁあ!」
 派手に暴れ回る中、ここでようやく相手側にも増援がやってくる。
 パニック状態になっていない増援の中から声を荒げてくる存在に、

「兄ちゃん!」
 警戒をしてくれるミルモン。

「強そうなのは俺が担当をしよう」
 ここへと来る前に戦った十体長なるオーク同様に、ワンオフを思わせるモーニングスターを振り回してくる存在。
 
 構える俺の前で、

「といや!」
 飛び蹴り一閃でコクリコがモーニングスター持ちを転がすと、追撃のアークウィップを三方向から打ち込んで仕留める。
 で、ホクホクの笑顔を俺達へと向ければ、

「強そうなのは私が担当しましょう!」
 魔法と接近による大立ち回りで今現在、無双状態のコクリコは、出会った中で一番ご満悦な表情を見せてくれる。

「じゃあ任せる」

「いいんだね」

「いいんだよミルモン。俺は強そうなのじゃなくて、超強そうなのを相手にするさ」
 言いつつ見上げれば、

「ドラァ!」
 高い跳躍から豪快に拳を地面へと叩き付けての登場は、さっき見た顔。
 というか頭。
 地面に向かって打ち込んだ拳と視線。その体勢から顔だけを正面に向けてくれば、

「よくもやってくれたもんだない!」
 血走らせた目にてこちらを睨み、豪快な鼻息で息巻いてくる。
 
「なんだミノタウロスじゃないか。兄ちゃん、超強そうは言い過ぎだよ。アレは背後から女の子を襲うことしか出来ないつまんないヤツだよ」
 俺の左肩からは対面の存在とは正反対な冷静な口調。

「黙れチビ悪魔! さっきはよくも恥を掻かせてくれたない!」

「恥? 恐怖に支配されたの間違いでしょ。オイラの力をくらって、情けない声を上げて転げ回ってただけじゃないか」

「う、うるさいぞ! オイッ!」
 醜態を周囲へと隠したいとばかりに大音声で後方へと手を伸ばせば、ミノタウロスと一緒にここへと馳せ参じてきたオークが三人がかりで運んでくるものは――金棒。
 三人がかりで持ってきた金棒を伸ばしていた片手でむんずと掴んでこちらへと向けてくる。
 五メートルを超える身長に見合うだけの長さからなる金棒。ざっと見て三メートルはありそうなそれを軽々と振るだけの膂力があるのは見た目通りだな。

「さっきは地中移動の為に素手だったが、今回は本気だぞい! コイツでお前等の軟弱な体をぐしゃぐしゃに叩きつぶして挽肉にしてやらぁな!」

「挽肉って、お前のほうにぴったりな言葉だと思うんだけど。ねえ、兄ちゃん」

「怒りに染まってミンチにしてやる! と、発してしまったことを思い出して恥ずかしくなってしまうので、言わないでもらいたい」

「あの時の顔は悪魔であるオイラも恐怖を感じたよ。でもあそこで怒りに染まるのはしかたないさ。それよりも兄ちゃん、付き添いがオークならさ、あいつ等も揃って挽肉にして――合挽にしてやろうよ」
 ブラックジョークをクツクツとした笑い――嗤いで発する小悪魔ミルモン。
 その嗤いに気圧されたのか、五メートルを超えるミノタウロスがペットボトルサイズであるミルモンを恐れているのが分かる。
 それが伝播したようで、金棒を持ってきたオーク三人も同様の感情に支配されたようだった。
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