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矮人と巨人
PHASE-1331【現実を受け入れて励もう】
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面頬によって表情は隠されているけども、感情が動きとなって出てしまう三人のオーク。
ペットボトルサイズの小悪魔の圧に後退りをすることで、オーク三人から金属の擦れ音が聞こえてくる。
その音ではたとなったミノタウロスは、
「ええい!」
まるで恐怖を振り払うように金棒を大きく一振り。
両手持ちによる大振りは轟音を生み出し、二十メートルは離れているこちらにまで風が届けば、俺の纏った六花のマントを靡かせる。
「やってやるぞい!」
恐怖を裂帛の気迫に無理矢理に変えての金棒を担う姿。
「牛頭で金棒。ミノタウロスっていうより、牛頭鬼のほうがしっくりとくる姿だな」
「地獄の獄卒のような威厳はないよ。まあ、オイラがパパッと倒してあげるよ」
「――無茶はするなよ。距離を取ってからだからな」
俺の心配を余所に左肩から余裕ある羽ばたきで宙空に留まれば、
「もう一回、恐怖を刻んであげるよ。まあ、次はあの世へと赴くことになるだろうね。そこでお前と同じ姿をしている地獄の獄卒からの責め苦を堪能すればいいさ――永劫にね」
ミルモンが右拳に黒い電撃を纏えば、大魔法であるダークネスライトニングだと思っているミノタウロスは、見舞われた時の事を思い出しているようで、引きつった表情へと変わる。
完全にトラウマになってしまっているようだな。
「美味しいね~その感情」
悪そうに笑むも可愛いミルモン。
五メートルサイズがブルリと体を震わせたのを合図として、
「くろいバリバリ!」
右拳から放たれる黒い電撃。
「ぐぅぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉ!!」
直撃すれば大きな体をまんべんなく黒い電撃が包むも、先ほどのように地面を転がるという情けない姿は見せない。
部下の手前というのもあるからか、醜態を晒すことは出来ないということなんだろうな。
そんな状況を俺は冷静に見つつ、やはり――と納得する。
「ぅぅぅうう……」
「無理しないでさっさと地獄に落ちなよ」
ミルモンの発言を耳にしながらも、体を守るように自然と体を丸くしていく中で――、
「ぬぅぅう……ぅぅ……ぅ……う? うん?」
体を丸めていたミノタウロスがやおら立ち上がり、表情から恐れが消えれば、疑問符でも頭に浮かべるような怪訝なものとなり、首を傾げてから自らの全身を見渡す。
徐々に黒い電撃が弱まっていき――消滅。
もう一度、全身を見渡すミノタウロスは、自分の体にダメージを受けた形跡がないことに安堵の息を漏らし、続けて、
「はぁ?」
と、間の抜けた声を一つ。
「へ?」
と、ミルモンも負けじと間の抜けた声を一つ。
やはりな。と、ここでも納得する俺。
「あれれ、おかしいな」
眼鏡の少年探偵のようなリアクションをしつつも、
「くろいバリバリ!」
再度ミノタウロスに見舞う。
「ぐぅ!?」
直撃に身構えるも、一撃目と違って身構えるのはわずかな時間だった。
直ぐさま仁王立ち。
「はれれ~!?」
「よし、ミルモン。下がるんだ」
まったく通用しないことが分かったので、ミルモンの体を摘まんで左肩へと座らせる。
「――なんだよ。ハッハー! なんだよ、なんだよ! 通用しねえない!」
「おかしいよ兄ちゃん。通用しないなんて。耐性でも出来たのかな?」
「今後も冒険は続くからな。鍛練して威力を上げていこうな」
「あ、うん……」
「俺と一緒に鍛練して、一緒に強くなっていこうな!」
「――うん!」
「よしよし」
俺なんかよりも切り替えの速さは優秀だよ。ミルモン。
耐性ではなく、そもそもが通用していなかったって事実を理解して受け入れ、次こそは! と、ミルモンからは力強い声。
くろいバリバリ――、初めて使用した時はミルモンとミノタウロス双方が勘違いをしていたんだろう。
何たってくろいバリバリはミルモンが最初から覚えている技だからな。
あれだけの巨体を有するミノタウロスに、ダメージを与えられるほどの技ではないということだ。
あの時のミノタウロスは、タチアナをこちらに奪還された時にダメージを受けていたからな。
大方そのダメージに続いて、使用された黒い電撃が強力な魔法だとミノタウロスが勝手に思い込んだことでパニックへと繋がり、受けてもいないダメージを受けたと思ったんだろう。
そこにヤヤラッタが拍車をかけるように、闇の大魔法――ダークネスライトニングってのと勘違いしたもんだから、見舞われた本人は信頼する軍監の発言を真に受けてしまったことで、余計にパニックに陥ったんだろうな。
でもって隆起した地面を派手に転がって、大石やら木に体を自ら勢いよく打ち付けたもんだから、それによって生じた痛みも加わって更にパニックが加速したんだろう。
そう思うと――、
「フッ」
「あん、俺の顔になんかあるかい小僧? 鼻で笑うない!」
「いや~、くろいバリバリを受けた時のお宅のリアクションを思い出してから、目の前のお宅を見てしまうとね。なんだコイツ――馬鹿じゃん。滑稽な存在なんだな~ってなってさ。ついつい鼻で笑ってしまったよ」
「貴様ぁ!」
「ほいっと」
バックステップで回避。
目の前では豪快なダッシュからの振り下ろしにより豪快に大地が抉られる。
「ほえ~凄いや」
あまりの膂力にミルモンが驚く。
実際に大したものだったからな。
膂力だけならヤヤラッタよりも上なのは今の一撃からも理解できる。
「こりゃ受け止めるのはやめたほうがよさそうだな」
独りごちりつつ目の前の対象へと視線を戻せば、
「ストーンブラスト!」
発動する声は――パロンズ氏のものではなくミノタウロスからだった。
「イグニース」
炎の障壁にて対処。
地中を移動するだけあって大地系の魔法も使用できるようだな。
「ただの脳筋とは違うようだ」
「当然だい! こちとらこの軍勢で幹部なんだからよい!」
「――喋り方はアレだけど」
「ほざけい!」
飛礫による面制圧を行い、俺が防御で足を止めたところに狙いを定めて――、
「ブッハァァァァァァァア!」
豪快な呼気を吐き出しながら、渾身の力で金棒を振り下ろしてくる。
「パターンなのよね」
今度は後方に下がらず、相手に近づくように足を進めて、斜め前方へと跳躍しながらの抜き胴。
「ぐぅ!?」
全身全霊の一振りは俺に当たることはなく、俺の胴斬りよる痛みに襲われたミノタウロスはバランスを崩す。
加えて自らが振り下ろす金棒の遠心力に振り回されたようで、派手に転倒。
身長差があるから胴を狙うにしても一々と跳躍しないといけないのが難しくもあるけども、このくらいの相手なら実力差でその差は補える。
そう思えるくらいに、このミノタウロスの実力は大したことない。
「ありゃりゃ、オイラも人のことを言えないけど、コイツも兄ちゃんを相手にするには鍛練が必要だね」
「そうみたいだな。鍛練、そして――経験は大事だ」
俺がいいお手本だからな。
五メートルを超える相手の一撃に臆することなく、足を前に踏み出せるようになったのも、偏に今までの鍛練と経験。それで培ってきた胆力によるものだからな。
ペットボトルサイズの小悪魔の圧に後退りをすることで、オーク三人から金属の擦れ音が聞こえてくる。
その音ではたとなったミノタウロスは、
「ええい!」
まるで恐怖を振り払うように金棒を大きく一振り。
両手持ちによる大振りは轟音を生み出し、二十メートルは離れているこちらにまで風が届けば、俺の纏った六花のマントを靡かせる。
「やってやるぞい!」
恐怖を裂帛の気迫に無理矢理に変えての金棒を担う姿。
「牛頭で金棒。ミノタウロスっていうより、牛頭鬼のほうがしっくりとくる姿だな」
「地獄の獄卒のような威厳はないよ。まあ、オイラがパパッと倒してあげるよ」
「――無茶はするなよ。距離を取ってからだからな」
俺の心配を余所に左肩から余裕ある羽ばたきで宙空に留まれば、
「もう一回、恐怖を刻んであげるよ。まあ、次はあの世へと赴くことになるだろうね。そこでお前と同じ姿をしている地獄の獄卒からの責め苦を堪能すればいいさ――永劫にね」
ミルモンが右拳に黒い電撃を纏えば、大魔法であるダークネスライトニングだと思っているミノタウロスは、見舞われた時の事を思い出しているようで、引きつった表情へと変わる。
完全にトラウマになってしまっているようだな。
「美味しいね~その感情」
悪そうに笑むも可愛いミルモン。
五メートルサイズがブルリと体を震わせたのを合図として、
「くろいバリバリ!」
右拳から放たれる黒い電撃。
「ぐぅぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉ!!」
直撃すれば大きな体をまんべんなく黒い電撃が包むも、先ほどのように地面を転がるという情けない姿は見せない。
部下の手前というのもあるからか、醜態を晒すことは出来ないということなんだろうな。
そんな状況を俺は冷静に見つつ、やはり――と納得する。
「ぅぅぅうう……」
「無理しないでさっさと地獄に落ちなよ」
ミルモンの発言を耳にしながらも、体を守るように自然と体を丸くしていく中で――、
「ぬぅぅう……ぅぅ……ぅ……う? うん?」
体を丸めていたミノタウロスがやおら立ち上がり、表情から恐れが消えれば、疑問符でも頭に浮かべるような怪訝なものとなり、首を傾げてから自らの全身を見渡す。
徐々に黒い電撃が弱まっていき――消滅。
もう一度、全身を見渡すミノタウロスは、自分の体にダメージを受けた形跡がないことに安堵の息を漏らし、続けて、
「はぁ?」
と、間の抜けた声を一つ。
「へ?」
と、ミルモンも負けじと間の抜けた声を一つ。
やはりな。と、ここでも納得する俺。
「あれれ、おかしいな」
眼鏡の少年探偵のようなリアクションをしつつも、
「くろいバリバリ!」
再度ミノタウロスに見舞う。
「ぐぅ!?」
直撃に身構えるも、一撃目と違って身構えるのはわずかな時間だった。
直ぐさま仁王立ち。
「はれれ~!?」
「よし、ミルモン。下がるんだ」
まったく通用しないことが分かったので、ミルモンの体を摘まんで左肩へと座らせる。
「――なんだよ。ハッハー! なんだよ、なんだよ! 通用しねえない!」
「おかしいよ兄ちゃん。通用しないなんて。耐性でも出来たのかな?」
「今後も冒険は続くからな。鍛練して威力を上げていこうな」
「あ、うん……」
「俺と一緒に鍛練して、一緒に強くなっていこうな!」
「――うん!」
「よしよし」
俺なんかよりも切り替えの速さは優秀だよ。ミルモン。
耐性ではなく、そもそもが通用していなかったって事実を理解して受け入れ、次こそは! と、ミルモンからは力強い声。
くろいバリバリ――、初めて使用した時はミルモンとミノタウロス双方が勘違いをしていたんだろう。
何たってくろいバリバリはミルモンが最初から覚えている技だからな。
あれだけの巨体を有するミノタウロスに、ダメージを与えられるほどの技ではないということだ。
あの時のミノタウロスは、タチアナをこちらに奪還された時にダメージを受けていたからな。
大方そのダメージに続いて、使用された黒い電撃が強力な魔法だとミノタウロスが勝手に思い込んだことでパニックへと繋がり、受けてもいないダメージを受けたと思ったんだろう。
そこにヤヤラッタが拍車をかけるように、闇の大魔法――ダークネスライトニングってのと勘違いしたもんだから、見舞われた本人は信頼する軍監の発言を真に受けてしまったことで、余計にパニックに陥ったんだろうな。
でもって隆起した地面を派手に転がって、大石やら木に体を自ら勢いよく打ち付けたもんだから、それによって生じた痛みも加わって更にパニックが加速したんだろう。
そう思うと――、
「フッ」
「あん、俺の顔になんかあるかい小僧? 鼻で笑うない!」
「いや~、くろいバリバリを受けた時のお宅のリアクションを思い出してから、目の前のお宅を見てしまうとね。なんだコイツ――馬鹿じゃん。滑稽な存在なんだな~ってなってさ。ついつい鼻で笑ってしまったよ」
「貴様ぁ!」
「ほいっと」
バックステップで回避。
目の前では豪快なダッシュからの振り下ろしにより豪快に大地が抉られる。
「ほえ~凄いや」
あまりの膂力にミルモンが驚く。
実際に大したものだったからな。
膂力だけならヤヤラッタよりも上なのは今の一撃からも理解できる。
「こりゃ受け止めるのはやめたほうがよさそうだな」
独りごちりつつ目の前の対象へと視線を戻せば、
「ストーンブラスト!」
発動する声は――パロンズ氏のものではなくミノタウロスからだった。
「イグニース」
炎の障壁にて対処。
地中を移動するだけあって大地系の魔法も使用できるようだな。
「ただの脳筋とは違うようだ」
「当然だい! こちとらこの軍勢で幹部なんだからよい!」
「――喋り方はアレだけど」
「ほざけい!」
飛礫による面制圧を行い、俺が防御で足を止めたところに狙いを定めて――、
「ブッハァァァァァァァア!」
豪快な呼気を吐き出しながら、渾身の力で金棒を振り下ろしてくる。
「パターンなのよね」
今度は後方に下がらず、相手に近づくように足を進めて、斜め前方へと跳躍しながらの抜き胴。
「ぐぅ!?」
全身全霊の一振りは俺に当たることはなく、俺の胴斬りよる痛みに襲われたミノタウロスはバランスを崩す。
加えて自らが振り下ろす金棒の遠心力に振り回されたようで、派手に転倒。
身長差があるから胴を狙うにしても一々と跳躍しないといけないのが難しくもあるけども、このくらいの相手なら実力差でその差は補える。
そう思えるくらいに、このミノタウロスの実力は大したことない。
「ありゃりゃ、オイラも人のことを言えないけど、コイツも兄ちゃんを相手にするには鍛練が必要だね」
「そうみたいだな。鍛練、そして――経験は大事だ」
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