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矮人と巨人
PHASE-1341【前か後ろか】
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「クッ――」
俺の発言に、相対する方は声が詰まったご様子。
顔真っ赤になりかけていたし、悔しかったのか――と思いきや、
「――ハッハッハッハッハ――」
哄笑で返してくる。
クッハッハッハッハ――か。
クッ――、が紛らわしいんだよ!
「中々におもしろいではないか勇者よ。気に入ったぞ。この俺の配下に加えてやってもいい」
コクリコの次は俺をスカウトか?
「あ、全力でお断りさせてもらうよ」
「なぜだ? カルナック様直属である俺の配下になれるのだぞ。無論、この周囲にいる者達とは違う。幹部として重く用いるということだぞ」
「うん。全力でお断り」
「カルナック様の下で励めば、なんでも好きに出来る立場になれるのだがな」
「こっちはお前等の好きに出来るという行為を全力で阻止したい立場なんだよ。そこを理解しろ」
「ハッ! 愚かな選択だな。ここで抗っても無駄だぞ。ここへは少数で来たのだろう? 何が出来るというのだ」
「数に物を言わせるのが如何にも蹂躙王の配下って発言だな」
「数こそは正義である」
「多けりゃ良いってもんじゃないだろうに」
「多ければ多いほどいい! 多勢の歩みは蹂躙の歩みとなる!」
――……例えカクエンのような実力の無いのでも、数がいればそれだけで力となるって考えか。
その思考こそが全てにおいて正しいと思っているんだろうな。
妄信に近い思考だな。
確かに数は力だ。それが同じ方向を向いて、十全の力を発揮できれば強力無比なんだが、ここの連中はそれがまったくもって発揮できていないからな。
さっきの戦いでもそうだった。気圧されたカクエンが隊列に組み込まれていることによって動作の妨げとなり、オークは弓を使用するのにも無駄な動作が増えていたからな。
そういったところには目を向けることもなく、ひたすらに数こそが正義と考えている脳筋タイプだな。
軍監のヤヤラッタの気苦労が窺える。
ふぃ~。
「お宅みたいなのがこの一軍を指揮できるだけの権限をよくも与えられたもんだよ」
小馬鹿――というよりは呆れ口調となって漏らしてしまえば、今までで一番に眉尻がつり上がる。
「そんな当たり前の事をよくも言えたものだな! この俺が有能だからに決まっているだろう!」
そう思わないから呆れが口から出たんだけどな。
――力、力、力――。
有したそれを行使して他を滅ぼす。
そこが評価されているからこそ前線指揮に選ばれたと自負する。
「でもお宅、親衛隊じゃん。前線指揮じゃなくてお偉いさんの周囲に侍っていればいいのにな」
「馬鹿め! 親衛隊だからこそ主の目となって、前線でも指揮をするということもあるのだ」
「そりゃそうだ」
「そもそもが親衛隊だけが主の周囲を守っているのではない。侍るのは別がやってくれる」
「ドラゴニュート百からなる、近衛のデイライトってやつか」
「お前。かなり詳しいな。誰から聞いた?」
「誰でもいいだろ。それよりも勇者である俺に知れ渡っているってのを誇りに思えばいいよ」
デミタスの事は口にはするまいよ。
この言い様からして、ヤヤラッタは俺やパーティーの情報は伝えていても、デミタスの仙狐なんかの情報は伝えていないみたいだしな。
「本当に剛胆だな。配下に加わらないのが残念でならん。ここで死ぬという運命だな」
「それはないよ」
きっぱりと言い切り、
「だってな」
と、ここでコクリコを見る。
「その頼りにしているという数というのが、ここに立つ我々の前で容易く散っていたわけですけども。その辺りはどうお考えなのでしょうかね~」
語末が嫌味さを感じさせる番記者みたいだったぞ。コクリコ。
しかもこの拠点に来てからぶれることのない嘲笑を相手に対して向けてくれている。
こうなれば相手の次のリアクションは分かるというもの。
「もう分かった。少しでもお前たちに慈悲を与え、こちらに登用しようとした考えが愚かだった。女は好きにしろ。勇者は俺の前に連れてこい。四肢を斬り落として散々に苦しめてから殺す。残りのドワーフは適当に殺せ」
おうおう。酷薄な言いっぷりだな。
だがしかし、
「散々偉そうに言っておいて、結局は部下任せかよ。自分で立ち向かってこいよ」
「阿呆が。数で勝るのになぜ大将が自ら出なければならんのだ。どういった思考だ。お前たちの王は軍を動かす時、自らが最前線に立ち、返り血を浴びるのか?」
――ううむ。
「時と場合」
「その場合というのは手勢が少ない時だろうが! ようは危機的状況の時だろう!」
「うん。まあ」
トップが易々と最前線には確かに出ないよな。
出る時はオーガロードが言うように、自分が指揮して動かさないといけないくらいに手勢が少なくなっている状況だろうしな。
でも五メートルを超える屈強なガタイの持ち主がその思考ってのがな。
親衛隊の思考がこうなら、カルナック自身も易々と前へと出るって事はしないタイプだと考えていい。
ガチガチに周囲を精鋭で守らせているんだろうな。
となると、いずれ戦うことになる時には、まずそこまで辿り着くのに骨が折れそうだ。
などと考えている中で、
「指揮官や王というのは後方で鎮座してればいいのだ。ゆとりあるその姿を目にすることで、配下にもゆとりが生まれるというもの」
一利ある。
この辺の考え方は、状況によって変化するってところだな。
俺の発言に、相対する方は声が詰まったご様子。
顔真っ赤になりかけていたし、悔しかったのか――と思いきや、
「――ハッハッハッハッハ――」
哄笑で返してくる。
クッハッハッハッハ――か。
クッ――、が紛らわしいんだよ!
「中々におもしろいではないか勇者よ。気に入ったぞ。この俺の配下に加えてやってもいい」
コクリコの次は俺をスカウトか?
「あ、全力でお断りさせてもらうよ」
「なぜだ? カルナック様直属である俺の配下になれるのだぞ。無論、この周囲にいる者達とは違う。幹部として重く用いるということだぞ」
「うん。全力でお断り」
「カルナック様の下で励めば、なんでも好きに出来る立場になれるのだがな」
「こっちはお前等の好きに出来るという行為を全力で阻止したい立場なんだよ。そこを理解しろ」
「ハッ! 愚かな選択だな。ここで抗っても無駄だぞ。ここへは少数で来たのだろう? 何が出来るというのだ」
「数に物を言わせるのが如何にも蹂躙王の配下って発言だな」
「数こそは正義である」
「多けりゃ良いってもんじゃないだろうに」
「多ければ多いほどいい! 多勢の歩みは蹂躙の歩みとなる!」
――……例えカクエンのような実力の無いのでも、数がいればそれだけで力となるって考えか。
その思考こそが全てにおいて正しいと思っているんだろうな。
妄信に近い思考だな。
確かに数は力だ。それが同じ方向を向いて、十全の力を発揮できれば強力無比なんだが、ここの連中はそれがまったくもって発揮できていないからな。
さっきの戦いでもそうだった。気圧されたカクエンが隊列に組み込まれていることによって動作の妨げとなり、オークは弓を使用するのにも無駄な動作が増えていたからな。
そういったところには目を向けることもなく、ひたすらに数こそが正義と考えている脳筋タイプだな。
軍監のヤヤラッタの気苦労が窺える。
ふぃ~。
「お宅みたいなのがこの一軍を指揮できるだけの権限をよくも与えられたもんだよ」
小馬鹿――というよりは呆れ口調となって漏らしてしまえば、今までで一番に眉尻がつり上がる。
「そんな当たり前の事をよくも言えたものだな! この俺が有能だからに決まっているだろう!」
そう思わないから呆れが口から出たんだけどな。
――力、力、力――。
有したそれを行使して他を滅ぼす。
そこが評価されているからこそ前線指揮に選ばれたと自負する。
「でもお宅、親衛隊じゃん。前線指揮じゃなくてお偉いさんの周囲に侍っていればいいのにな」
「馬鹿め! 親衛隊だからこそ主の目となって、前線でも指揮をするということもあるのだ」
「そりゃそうだ」
「そもそもが親衛隊だけが主の周囲を守っているのではない。侍るのは別がやってくれる」
「ドラゴニュート百からなる、近衛のデイライトってやつか」
「お前。かなり詳しいな。誰から聞いた?」
「誰でもいいだろ。それよりも勇者である俺に知れ渡っているってのを誇りに思えばいいよ」
デミタスの事は口にはするまいよ。
この言い様からして、ヤヤラッタは俺やパーティーの情報は伝えていても、デミタスの仙狐なんかの情報は伝えていないみたいだしな。
「本当に剛胆だな。配下に加わらないのが残念でならん。ここで死ぬという運命だな」
「それはないよ」
きっぱりと言い切り、
「だってな」
と、ここでコクリコを見る。
「その頼りにしているという数というのが、ここに立つ我々の前で容易く散っていたわけですけども。その辺りはどうお考えなのでしょうかね~」
語末が嫌味さを感じさせる番記者みたいだったぞ。コクリコ。
しかもこの拠点に来てからぶれることのない嘲笑を相手に対して向けてくれている。
こうなれば相手の次のリアクションは分かるというもの。
「もう分かった。少しでもお前たちに慈悲を与え、こちらに登用しようとした考えが愚かだった。女は好きにしろ。勇者は俺の前に連れてこい。四肢を斬り落として散々に苦しめてから殺す。残りのドワーフは適当に殺せ」
おうおう。酷薄な言いっぷりだな。
だがしかし、
「散々偉そうに言っておいて、結局は部下任せかよ。自分で立ち向かってこいよ」
「阿呆が。数で勝るのになぜ大将が自ら出なければならんのだ。どういった思考だ。お前たちの王は軍を動かす時、自らが最前線に立ち、返り血を浴びるのか?」
――ううむ。
「時と場合」
「その場合というのは手勢が少ない時だろうが! ようは危機的状況の時だろう!」
「うん。まあ」
トップが易々と最前線には確かに出ないよな。
出る時はオーガロードが言うように、自分が指揮して動かさないといけないくらいに手勢が少なくなっている状況だろうしな。
でも五メートルを超える屈強なガタイの持ち主がその思考ってのがな。
親衛隊の思考がこうなら、カルナック自身も易々と前へと出るって事はしないタイプだと考えていい。
ガチガチに周囲を精鋭で守らせているんだろうな。
となると、いずれ戦うことになる時には、まずそこまで辿り着くのに骨が折れそうだ。
などと考えている中で、
「指揮官や王というのは後方で鎮座してればいいのだ。ゆとりあるその姿を目にすることで、配下にもゆとりが生まれるというもの」
一利ある。
この辺の考え方は、状況によって変化するってところだな。
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