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矮人と巨人
PHASE-1355【まだ精神には余裕あり】
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こっちとしては相手側の戦闘意思をなくしたいんだけども、まだそこまで精神を削るって事はできてない。
挑んでくる姿を崩さないからな。
ならば!
「挑んでくるなら、挑むのが嫌になるくらいに戦意をそぎ取ってやるさ!」
恫喝するように発し、向かってくる相手にAR-57のトリガーを引きっぱなしにして弾丸を叩き込んでいく。
5.7㎜が体へと撃ち込まれれば、声を出さない者もいれば、痛みにより絶叫を周囲へと伝える者もいるし、苦痛のうめき声を漏らす者もいる。
共通するのは、銃撃によってダメージを受けた者達は地面に倒れるということ。
「まだまだ行くぞ!」
新しいマガジンを装着して銃口を向けて凄む。
「臆するな!」
未だに怒りが消え去っていないハルダームが後方から大音声を発せば、
「その通りだ、立ち止まれば恰好の的だぞ。プロテクションを使える者は周囲に気を配れ、その後方から遠距離で圧を与えるのだ」
ハルダームに続くのはブラストスマッシュから難を逃れた十体長の一人。
その十体長の指示の元、隊列を変更してくる。
機敏な動きに練度の高さが窺える。
素早く陣形を変えてくる兵達を見て、ハルダームは満足そうに鷹揚に頷いていた。
少しは怒りの感情も消えたかと思ったけど、俺と目が合えば直ぐさま血走ったものへと変わる。
「勇者とハイエルフの攻撃に備えよ。後方の盾は不要だ。前衛に渡せ。最前列は武器は不要。盾だけを持て!」
「へ~」
こっちとしてはそういった動きをとられると困るんだけども、さっきから的確に指示を出してくる十体長はただもんじゃねえな。
両手には刃幅の広い直刀であるファルシオンを二振り。
二刀使いってのが敵だけども親近感を抱いてしまう。
「放て!」
「っと」
感心していたら腸繰が飛んでくる。
今までのより速度のあるものだったけど対応は出来る。
回避した後に前衛の盾持ちの後方を見れば、構えていたのはクロスボウ。
弓に比べれば次射に時間はかかるけども、一般的な弓では生み出すことの出来ない張力による一矢は、当たれば腸繰の鏃が体を貫いてくるという風圧。
「魔法、弓隊。弩の次射に備えて放て!」
「イグニース!」
俺が発せば、
「シルフィード」
と、シャルナも発する。
プロテクションを封じられてもシャルナは上位の障壁魔法も使用できるから遠距離からの一斉攻撃にも対応できる。
――の、だけども。
「足を止めたぞ」
最後方のハルダームのこの発言に、
「かかれ!」
十体長が呼応して部隊を動かす。
「フラググレネード」
ピンを抜いてからの投擲。
中衛部分へと投げてやれば、先ほど指揮官にダメージを与えたモノだと直ぐに理解して回避行動。
俯瞰から見れば中衛の隊列は乱れていることだろう。
爆発すれば逃げ遅れた者達から激痛を伴う声が上がるし、途端に動きが鈍くなる。
「爆ぜる面妖な武器が面倒だな!」
「もう一回、顔面に喰らうかい?」
「チッ! 臆せず進め!」
挑発してもやはり動かないね。
よほど俺とのタイマンは避けたいようだな。
にしても――、
「きりがねえな」
数百はいると見るべきなんだろうけども、中々に減らない。
こっちは七人とゴロ丸でよくやってるけども、減ってる感がまったく感じられない。
このままだとC-4の爆発で割いた部隊が戻ってきてしまう。
それに相手もこちらの銃撃に対応してきている。
体力と膂力のありそうなオークが厚みのある鉄製のシールドを二重にして最前列に立ち、プロテクションやウォーターカーテンを展開しつつ、着実に接近を試みてくる。
摩訶不思議な遠距離攻撃に耐えつつ、接近戦へと持ち込んで包囲さえできれば有利になる! といった内容を二刀持ちの十体長が念仏のように唱えながら部隊を進めてくる。
正直、数で圧倒的に上回っているのに有利になるという発言はどうなの? とも思うんだけども。
それだけ俺たちの事を脅威だと判断してくれるのはこちらとしては誇れることだけどな。
相手のフィールドで地の利に劣り、数でも劣る。
これに追加された大魔法ラプスにより中位までの魔法を封じられるという状況下でありながら、相手に自分たちの方が不利であるという感情を抱かせているのは素晴らしい事だ。
こちらとしてはもっとそういった感情を抱かせたいところなんだけども――。
「正面からしか撃つことが出来ないからな。もっと多方向から攻めたいな」
「難しいよね」
俺から少し離れた場所から返してくれるシャルナ。
MASADAを構えて撃つ姿だけになっている。
上位魔法を使用できるとはいえ、集中に時間が必要な状況だと使用も限られてくるからな。
攻撃のブラストスマッシュではなく、防御のための障壁魔法シルフィードに重きを置く辺り、相手の攻撃が苛烈になってきているってことだろうし。
俺とシャルナに向けられるヘイトが他へ移らない――移らせないためにも派手に動かないといけないけども、こういった状況だから決定打に欠ける。
「ちょっとこの場をトール一人任せていいかな?」
「この状況を変化させる手があるなら、好きなだけ俺を酷使してくれていいぞ!」
「流石はトール。頼りになるよ」
「いや~」
眼前から迫ってくる大軍の中でも、美人に頼られれば嬉しくなれる辺り、俺の精神はまだまだ余裕である。
挑んでくる姿を崩さないからな。
ならば!
「挑んでくるなら、挑むのが嫌になるくらいに戦意をそぎ取ってやるさ!」
恫喝するように発し、向かってくる相手にAR-57のトリガーを引きっぱなしにして弾丸を叩き込んでいく。
5.7㎜が体へと撃ち込まれれば、声を出さない者もいれば、痛みにより絶叫を周囲へと伝える者もいるし、苦痛のうめき声を漏らす者もいる。
共通するのは、銃撃によってダメージを受けた者達は地面に倒れるということ。
「まだまだ行くぞ!」
新しいマガジンを装着して銃口を向けて凄む。
「臆するな!」
未だに怒りが消え去っていないハルダームが後方から大音声を発せば、
「その通りだ、立ち止まれば恰好の的だぞ。プロテクションを使える者は周囲に気を配れ、その後方から遠距離で圧を与えるのだ」
ハルダームに続くのはブラストスマッシュから難を逃れた十体長の一人。
その十体長の指示の元、隊列を変更してくる。
機敏な動きに練度の高さが窺える。
素早く陣形を変えてくる兵達を見て、ハルダームは満足そうに鷹揚に頷いていた。
少しは怒りの感情も消えたかと思ったけど、俺と目が合えば直ぐさま血走ったものへと変わる。
「勇者とハイエルフの攻撃に備えよ。後方の盾は不要だ。前衛に渡せ。最前列は武器は不要。盾だけを持て!」
「へ~」
こっちとしてはそういった動きをとられると困るんだけども、さっきから的確に指示を出してくる十体長はただもんじゃねえな。
両手には刃幅の広い直刀であるファルシオンを二振り。
二刀使いってのが敵だけども親近感を抱いてしまう。
「放て!」
「っと」
感心していたら腸繰が飛んでくる。
今までのより速度のあるものだったけど対応は出来る。
回避した後に前衛の盾持ちの後方を見れば、構えていたのはクロスボウ。
弓に比べれば次射に時間はかかるけども、一般的な弓では生み出すことの出来ない張力による一矢は、当たれば腸繰の鏃が体を貫いてくるという風圧。
「魔法、弓隊。弩の次射に備えて放て!」
「イグニース!」
俺が発せば、
「シルフィード」
と、シャルナも発する。
プロテクションを封じられてもシャルナは上位の障壁魔法も使用できるから遠距離からの一斉攻撃にも対応できる。
――の、だけども。
「足を止めたぞ」
最後方のハルダームのこの発言に、
「かかれ!」
十体長が呼応して部隊を動かす。
「フラググレネード」
ピンを抜いてからの投擲。
中衛部分へと投げてやれば、先ほど指揮官にダメージを与えたモノだと直ぐに理解して回避行動。
俯瞰から見れば中衛の隊列は乱れていることだろう。
爆発すれば逃げ遅れた者達から激痛を伴う声が上がるし、途端に動きが鈍くなる。
「爆ぜる面妖な武器が面倒だな!」
「もう一回、顔面に喰らうかい?」
「チッ! 臆せず進め!」
挑発してもやはり動かないね。
よほど俺とのタイマンは避けたいようだな。
にしても――、
「きりがねえな」
数百はいると見るべきなんだろうけども、中々に減らない。
こっちは七人とゴロ丸でよくやってるけども、減ってる感がまったく感じられない。
このままだとC-4の爆発で割いた部隊が戻ってきてしまう。
それに相手もこちらの銃撃に対応してきている。
体力と膂力のありそうなオークが厚みのある鉄製のシールドを二重にして最前列に立ち、プロテクションやウォーターカーテンを展開しつつ、着実に接近を試みてくる。
摩訶不思議な遠距離攻撃に耐えつつ、接近戦へと持ち込んで包囲さえできれば有利になる! といった内容を二刀持ちの十体長が念仏のように唱えながら部隊を進めてくる。
正直、数で圧倒的に上回っているのに有利になるという発言はどうなの? とも思うんだけども。
それだけ俺たちの事を脅威だと判断してくれるのはこちらとしては誇れることだけどな。
相手のフィールドで地の利に劣り、数でも劣る。
これに追加された大魔法ラプスにより中位までの魔法を封じられるという状況下でありながら、相手に自分たちの方が不利であるという感情を抱かせているのは素晴らしい事だ。
こちらとしてはもっとそういった感情を抱かせたいところなんだけども――。
「正面からしか撃つことが出来ないからな。もっと多方向から攻めたいな」
「難しいよね」
俺から少し離れた場所から返してくれるシャルナ。
MASADAを構えて撃つ姿だけになっている。
上位魔法を使用できるとはいえ、集中に時間が必要な状況だと使用も限られてくるからな。
攻撃のブラストスマッシュではなく、防御のための障壁魔法シルフィードに重きを置く辺り、相手の攻撃が苛烈になってきているってことだろうし。
俺とシャルナに向けられるヘイトが他へ移らない――移らせないためにも派手に動かないといけないけども、こういった状況だから決定打に欠ける。
「ちょっとこの場をトール一人任せていいかな?」
「この状況を変化させる手があるなら、好きなだけ俺を酷使してくれていいぞ!」
「流石はトール。頼りになるよ」
「いや~」
眼前から迫ってくる大軍の中でも、美人に頼られれば嬉しくなれる辺り、俺の精神はまだまだ余裕である。
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