異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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矮人と巨人

PHASE-1363【建造物に妥協なし】

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「地下に続く場所を探せばいいというわけですね」
 皆して地面を見ている中で、一人、顔を上げれば、誰よりも早く口を開いたコクリコは、誰よりも早く動き出す。
 
 一目散に目指したのはハルダームが居住していた大型の竪穴住居。
 頭目の建物の中に地下へと続く道があるだろうと判断したようだ。

「逃散した中には、森じゃなくて、頼れる軍監に助けを求めるために合流した連中もいるかもしれないからな。アンブッシュには気をつけていこう」

「心配ご無用!」
 アドンとサムソンを従えてコクリコがハルダームの根城へと突入していく。
 単独行動はダメですと言いながらタチアナが続けば、その護衛のためにコルレオンも続く。
 この面子の中で最も精神部分が疲弊しているであろう二人が、コクリコに続いて動いたのは驚きだった。
 コクリコの漲るやる気に触発されたのかもしれない。
 
 ――周囲を奮い立たせて行動させる。
 
 これが数人から数百になっても同様の事が出来るようになれば、士気を高く維持する兵達と共に大軍を相手にし、恐れずに勝利を掴み取ることが可能となる――、

「真の一騎当千になるんだろうな」
 コクリコがこの拠点で一騎当千と口にしていたけども、案外、本当にそういった存在になるかもしれない。

 三人にやや遅れて、俺達も屋敷内へと入っていく。

「流石に身なりを大事にしていただけあって、室内は今までの竪穴住居とは違うね」
 土埃なんかが舞えば、大事な巧鬼の鎧と外套を汚すことになる。
 それが許されないとばかりに、床全体を板張りにした造りにしていた。
 
 部屋数も結構あるようだった。

 六メートル越えの存在が使用するのだから、俺達から見ればでかい建物だけども、これに部屋数もあるとなると、建築時にはかなりの時間を要したんだろうな。
 でもってここでも室内の造りの良さにパロンズ氏が感嘆の声を上げ、敵ながら手がけた者は尊敬に値すると、やや興奮気味に語る。

「はっはー!」
 俺の側でパロンズ氏が感嘆の声を漏らしている中、快活な声が奥の方から聞こえてくる。
 何かしらの手がかりを見つけたってのが声音からでも分かるというもの。

「でかしたぞコクリコ」

「さもありましょう」
 まだ何を見つけたのかを聞いてもいないけど、とりあえず褒めておくと当然とばかりに誇ってくる。
 自身の手柄であるとばかりにコクリコが俺達を手招きすれば、屋敷の最奥部分にあたるであろう場所には、地下へと続く階段。
 隠すことなく存在した階段だったので、見つけるのは誰でも出来たことだけども、そこは口には出すまいよ。

「流石に巨人が使用するだけあって、階段の段差が俺達には優しくないものだな」

「まったくですね……」
 俺なんかよりも更に小柄であるパロンズ氏から重たい返事。
 コルレオンは身体能力が高いから問題ないといった感じだけども、短い足の樽型ボディであるパロンズ氏の表情は、この階段をくだりたくないといったモノだった。

「行きますよ!」
 曇った表情に活を入れるように発せば、地下へと続く階段をコクリコが先頭になっておりていく。

 まったくよ……。
 なんで大声を出しながらおりていくんだよ……。

「地下に相手がいるとするなら、間違いなく今のコクリコ殿の声で我々の存在が知られたでしょうね……」

「でしょうね……」
 空笑いのパロンズ氏に俺も空笑いで返す。

「バレてると判断して進んで行けば問題ないよ」
 強気なのはコクリコだけじゃない。シャルナも同様で、手にしたMASADAを構えつつ、レビテーションで下へと移動していく。
 二人して暗闇が支配する地下を進んで行く。

「バレてると考えていい状況だから、タチアナはファイアフライを使用していいからな」

「分かりました」
 こうなりゃ堂々と行こうじゃないか。

 ――――ほうほう。

「こ、これは凄い……」
 俺の思いを段差の高い階段を下るだけで疲れた様子のパロンズ氏が、息も絶え絶えな状態で代弁してくれる。

「大した地下施設ですね」

「まったくです」
 地下施設は色々と見てきた。
 その中でもリンが山城の地下に築いていた地下施設はダントツの造りだけども、ここも中々だ。
 岩肌と土からなる洞窟ではあるけども、壁も天井も綺麗なもの。一切の凹凸がなかった。

「一年ほどでこれほどの坑道をつくるんだからな」
 しかも主な使用者は巨人。
 五、六メートルの身長からなるヤヤラッタやハルダーム。ミノタウロスにトロール。
 こういった巨躯からなる連中が往来するための大型の坑道を造り上げるのは凄いことだ。
 大人数で行ったとしても、凹凸のない滑らかな坑道の壁と通路は、一切の妥協を許さないという気概が伝わってくる。
 工事の中心となっている存在の指示レベルが高いというのも窺える。

「道が徐々に広くなってきてますね」
 先頭を行くコクリコからの報告。
 その報告にコクリコの一歩後ろを歩くシャルナが銃を構えつつ足を進める。
 射撃姿勢での移動も格好良かった。

「道幅が広がっていくって事は、ここから先は大広間みたいになっているってことなのかね~」
 言いつつコクリコの横まで移動。

「――その通りだ」
 反響して耳朶に届く声。
 反響はしているけども間違いなく俺達の向かう先から聞こえてきた。

 そして、聞き覚えのある声。

「指揮官が倒れたってのに助けにもこないで、こんな穴蔵で引き籠もっているのはどうなんだろうね」

「我々では成し得ないことをする為の力を得る為だ」

「ほうほう。それは何とも聞き捨てならない発言だな――ヤヤラッタ」

「聞き捨てならないならどうする?」

「もちろん、阻止する!」

「阻止できるだけの時間はもう無いだろうがな」
 てことは、相手にとって待ちに待った状況になっているって事か。

「じゃあ、その待ちに待った状況を破綻させるしかないな」

「中々に難しいと思うぞ」
 自信のある声音だ。
 ヤヤラッタがそれだけの声音になるってことは、自分たちの現状を好転させることが可能なだけの力を得たということか。
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