1,435 / 1,861
前準備
PHASE-1435【初期スタイル】
しおりを挟む
――二メートルを超える体躯の後退。
ここは絶対に見逃してはいけない。
攻勢にでないと勝ちを取る機会を逸してしまう場面。
「ララララララララライィィィッ!」
連撃――というよりは乱撃。
二振りの木刀を一心不乱に振りながら、足を止めることなく前へと進める。
エルウルドの森にて経験を積んできた二刀。
同じ方向に振り下ろすだけの単純な攻撃ではなく、あらゆる方向から対象に向かって振っていく。
多方向からの高速斬撃に、ガルム氏もファースンからアンリッシュにするタイミングが掴みにくいようで、反撃よりもガードを優先してくる。
ダメージが入っているわけじゃないけど、打ち込めば打ち込むだけオーラを削ぎ落とせているのが見て取れる。
一振りによる削りは微々たるものだけど、着実に削り取っている。
――煩わしいとばかりにガードからガルム氏の反撃。
こちらを振り払うようにオーラの腕を振り回してくる。
それを躱しつつ、前進を止めることなくひたすらに木刀を振り、オーラアーマーを削っていくということにだけ力を注いでいく。
「流石に鬱陶しいぞ!」
「それを狙ってるんで!」
「だが連撃の威力が落ちているのは分かるぞ」
でしょうね。
だからガードから攻撃へとシフトチェンジしてきたんだろうから。
俺がブーステッドの使用を止めているのを動きから理解しているご様子。
振り続ける間、限界突破状態を維持する持続力はないからな。
俺の動きは鋭さが無くなってはいるだろうけども、俺の攻撃に対してカウンターを合わせづらいようではある。
攻撃速度よりも足を止めることなく前進する姿に圧倒されているようだ。
なのでこの状況を続けさせてもらうよ。
でも……、
「火力不足は否めない!」
ならば!
「マスリリース!」
左の木刀に黄色い輝きを纏わせ、
「フンスッ!」
思いっきり投擲。
斬光を放つのではなく、木刀ごとガルム氏へと投擲。
「窮したか。そんな使い方は見たことがない」
投げた木刀をガルム氏が巨大なオーラの腕でガード。
イメージでは、触れたらその箇所が爆発――みたいな事が起こるかと思ったけど、炸裂系ではなく斬撃系であるマスリリースを纏った木刀は、オーラの腕に掠り傷を入れた程度でしかなかった。
斬光を放つ本来の使用法じゃないから十全な効果を発揮することはなかった。
窮したと思われても仕方がない動作――と、思ってくれればしめたものだ。
「どりゃぁぁぁあ!」
上段からの渾身の一振りは、両手持ちによる一刀。
「これは!」
手数は少なくなるけども、一撃の重さと威力。そして振る速度は二刀より一刀が勝る。
纏っているオーラの削れ方が二刀の時よりも遙かに大きかった。
ガルム氏本人は無傷だが、俺の攻勢に嫌気が差してくれたのか、ここでようやく俺が待ち望んでいた距離を取るという行動を選択してくれた。
一刀の威力だけでなく、気迫に呑まれたと思いたい。
戦いでは相手にその感情を芽生えさせた方がイニシアチブを握ることが出来るからね。
こんな事なら分厚いオーラアーマーである豺覇になった時、ヤヤラッタとの最終戦時のような初期スタイルである一刀に、素早く変更するべきだったな。
二刀を習得していることで無駄に固執してしまった。
臨機応変って発言をした以上は、柔軟に戦闘スタイルを変更できるようにもならないといけない。
――戦いを重ねれば、学ぶことも増えていく。
「さあ! さあ! さあぁ!」
反省をしつつ、距離を取ったガルム氏へ威圧をするように、すり足でゆっくりと近づいていく。
先ほどまでの一気に詰め寄ってのラッシュから一転し、気勢を吐きながらズリズリと距離を縮めようとすれば、ガルム氏は一定の間合いを維持する。
距離が縮まることはない。
ガルム氏――明らかに俺の気迫に呑まれているようだ。
「アクセル」
ここぞとばかりに虚を衝く接近。
体の重心を整え、両手持ちに変えた一刀にて、背後より上段から零距離マスリリースを見舞えば、大きくオーラが削れる。
当然ながら俺もダメージを受けるけども、気にしないで手首を返しての下段から切り上げ。
青いオーラがチリチリと舞う光景は美しい。
といった光景を目で追えるくらいの余裕が出てきている。
「はい! ほい! ていや!」
小気味よく三連撃を打ち込む。
オーラの中で眉間に皺を寄せるガルム氏。ここでも距離を取る。
――いいぞ。
戦いを有利に進めるための最初のステップである、相手を気後れさせることは成功。
次のステップは、こちらが思い描くように相手に動いてもらうよう誘導すること。
今のガルム氏は、正に俺がこう動いてほしいという動きを行ってくれているので、それも成功。
「続けていきますよ!」
発せば、
「ええい!」
わずかに焦燥が混ざった声と共に、両掌を俺の方向へと突き出すと、バランスボールサイズの気弾を二発放ってくる。
それを待っていたとばかりに跳躍。
「当たりませんよ!」
――さあ、次を!
「ならば!」
対空の為に気弾をばらまいてくる。
サイズは地壊雨槍という技と同サイズの野球ボールサイズ。
「兄ちゃん!」
どうする? って聞いてくる前に、
「気合いで押し通る!」
と、返す。
「ええ……」
無策とばかりの精神論の返答に、呆れ声のミルモン。
迎撃に耐える為だけではないんだミルモン。
この戦いの幕を閉じるため、最後のブーステッド発動に――持ってくれ俺の体! という自らを奮い立たせる意味もあるんだ。
ここは絶対に見逃してはいけない。
攻勢にでないと勝ちを取る機会を逸してしまう場面。
「ララララララララライィィィッ!」
連撃――というよりは乱撃。
二振りの木刀を一心不乱に振りながら、足を止めることなく前へと進める。
エルウルドの森にて経験を積んできた二刀。
同じ方向に振り下ろすだけの単純な攻撃ではなく、あらゆる方向から対象に向かって振っていく。
多方向からの高速斬撃に、ガルム氏もファースンからアンリッシュにするタイミングが掴みにくいようで、反撃よりもガードを優先してくる。
ダメージが入っているわけじゃないけど、打ち込めば打ち込むだけオーラを削ぎ落とせているのが見て取れる。
一振りによる削りは微々たるものだけど、着実に削り取っている。
――煩わしいとばかりにガードからガルム氏の反撃。
こちらを振り払うようにオーラの腕を振り回してくる。
それを躱しつつ、前進を止めることなくひたすらに木刀を振り、オーラアーマーを削っていくということにだけ力を注いでいく。
「流石に鬱陶しいぞ!」
「それを狙ってるんで!」
「だが連撃の威力が落ちているのは分かるぞ」
でしょうね。
だからガードから攻撃へとシフトチェンジしてきたんだろうから。
俺がブーステッドの使用を止めているのを動きから理解しているご様子。
振り続ける間、限界突破状態を維持する持続力はないからな。
俺の動きは鋭さが無くなってはいるだろうけども、俺の攻撃に対してカウンターを合わせづらいようではある。
攻撃速度よりも足を止めることなく前進する姿に圧倒されているようだ。
なのでこの状況を続けさせてもらうよ。
でも……、
「火力不足は否めない!」
ならば!
「マスリリース!」
左の木刀に黄色い輝きを纏わせ、
「フンスッ!」
思いっきり投擲。
斬光を放つのではなく、木刀ごとガルム氏へと投擲。
「窮したか。そんな使い方は見たことがない」
投げた木刀をガルム氏が巨大なオーラの腕でガード。
イメージでは、触れたらその箇所が爆発――みたいな事が起こるかと思ったけど、炸裂系ではなく斬撃系であるマスリリースを纏った木刀は、オーラの腕に掠り傷を入れた程度でしかなかった。
斬光を放つ本来の使用法じゃないから十全な効果を発揮することはなかった。
窮したと思われても仕方がない動作――と、思ってくれればしめたものだ。
「どりゃぁぁぁあ!」
上段からの渾身の一振りは、両手持ちによる一刀。
「これは!」
手数は少なくなるけども、一撃の重さと威力。そして振る速度は二刀より一刀が勝る。
纏っているオーラの削れ方が二刀の時よりも遙かに大きかった。
ガルム氏本人は無傷だが、俺の攻勢に嫌気が差してくれたのか、ここでようやく俺が待ち望んでいた距離を取るという行動を選択してくれた。
一刀の威力だけでなく、気迫に呑まれたと思いたい。
戦いでは相手にその感情を芽生えさせた方がイニシアチブを握ることが出来るからね。
こんな事なら分厚いオーラアーマーである豺覇になった時、ヤヤラッタとの最終戦時のような初期スタイルである一刀に、素早く変更するべきだったな。
二刀を習得していることで無駄に固執してしまった。
臨機応変って発言をした以上は、柔軟に戦闘スタイルを変更できるようにもならないといけない。
――戦いを重ねれば、学ぶことも増えていく。
「さあ! さあ! さあぁ!」
反省をしつつ、距離を取ったガルム氏へ威圧をするように、すり足でゆっくりと近づいていく。
先ほどまでの一気に詰め寄ってのラッシュから一転し、気勢を吐きながらズリズリと距離を縮めようとすれば、ガルム氏は一定の間合いを維持する。
距離が縮まることはない。
ガルム氏――明らかに俺の気迫に呑まれているようだ。
「アクセル」
ここぞとばかりに虚を衝く接近。
体の重心を整え、両手持ちに変えた一刀にて、背後より上段から零距離マスリリースを見舞えば、大きくオーラが削れる。
当然ながら俺もダメージを受けるけども、気にしないで手首を返しての下段から切り上げ。
青いオーラがチリチリと舞う光景は美しい。
といった光景を目で追えるくらいの余裕が出てきている。
「はい! ほい! ていや!」
小気味よく三連撃を打ち込む。
オーラの中で眉間に皺を寄せるガルム氏。ここでも距離を取る。
――いいぞ。
戦いを有利に進めるための最初のステップである、相手を気後れさせることは成功。
次のステップは、こちらが思い描くように相手に動いてもらうよう誘導すること。
今のガルム氏は、正に俺がこう動いてほしいという動きを行ってくれているので、それも成功。
「続けていきますよ!」
発せば、
「ええい!」
わずかに焦燥が混ざった声と共に、両掌を俺の方向へと突き出すと、バランスボールサイズの気弾を二発放ってくる。
それを待っていたとばかりに跳躍。
「当たりませんよ!」
――さあ、次を!
「ならば!」
対空の為に気弾をばらまいてくる。
サイズは地壊雨槍という技と同サイズの野球ボールサイズ。
「兄ちゃん!」
どうする? って聞いてくる前に、
「気合いで押し通る!」
と、返す。
「ええ……」
無策とばかりの精神論の返答に、呆れ声のミルモン。
迎撃に耐える為だけではないんだミルモン。
この戦いの幕を閉じるため、最後のブーステッド発動に――持ってくれ俺の体! という自らを奮い立たせる意味もあるんだ。
1
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる