異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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天空要塞

PHASE-1464【経験の差】

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 連中の動きにここでも感心していれば、

「隙だらけだな!」
 後方から気迫ある声。
 振り向けば地面すれすれを滑空しながら俺へと迫ってくる。

「声を発するなら背後から狙う意味はないよ――っと!」

「ガフッ!?」
 高速滑空で迫る相手の穂先を躱し、俺を通り過ぎるところで背中にワンパン。
 地面に叩き付けてやれば、ズザザァァァァァァァァ――アッ! と派手に音を出しながら芝生の上を滑っていく。

「ざっと見てここに展開している兵数は二百ってところか」
 殴ってから見上げる空には、通路で戦った時よりも多い兵数。
 さっきの場所にいた連中も合流していると見ていいだろうな。

「数だけですね。対したことありません。なんったって一騎当千であるコクリコ・シュレンテッドがいるのですからね!」

「お、頼りになる~」

「さもありましょう!」
 一騎当千ってのが随分と気に入ったようだな。
 実際にそう思わせるくらいの活躍をしてくれているからな。
 個人だけでなく、集団を鼓舞するのも上手いのがコクリコ。

 でもって、

「ど、堂々と言い切ってくれる!」
 上空の相手を見上げながらの発言に、相手は以外と気圧されている。
 数の利があろうともこちらが怯むことがないからか、数の差を覆せる強力な力を有していると思っているご様子。

 ――まあ、持ってますけどね。
 
 シャルナは個人の能力だけでそれが発動できるし、コクリコも装身具とサーバントストーンを利用すれば強烈な攻撃を発動できる。
 
 ――……この中だとプレイギア無しなら俺が一番地味かもな……。
 
 スプリームフォールを使用できるってのが強味なんだけども、今回の場合は相手は空を飛んでいるし、水がこちらにまでくれば、激流で天空要塞から落下という恐れもあるので使用できない。
 うむ。毎度思うことだが使いづらい大魔法である。
 リズベッドの恩恵で得る事が出来たから文句は言えないけども。

「飛んで突撃するだけの取り柄しかないならば、先ほどのトールを真似て地面に叩き付けてやりましょう!」
 と、ここでワンドを左手に持ち、黄色と黒の二色からなるローブを靡かせて腰から取り出すのは、接近戦にて毎度使用している自慢のミスリルフライパン。

「語りもふざけているが、武器もふざけているな! なんだその希少鉱物の無駄遣いは!」

「無駄かどうかは交えてみないと分かりませんよ。分かった時には意識は遠のいているでしょうがね」
 挑発するように右手に持ったフライパンでクイクイと、こっち来いよ。というジェスチャー。

「やってやる!」
 お怒りになった一人がコクリコへと急降下してくれば、それに続けとばかりに一斉に急降下。

「わお、空が暗くなったな」
 兵達により眼界の空が覆われる。

「元々、外殻の中ですからね。日の光もない曇天模様ですからそんなに変わりはないですよ」

「だよね~」 
 続くシャルナ。
 俺たち三人に共通しているのは余裕ある語り。
 
 一糸乱れぬ動きでこちらへと仕掛けてくる集団。

「右手のモノに挑発されて、左手は見ないんですからね」
 悪そうに笑むコクリコの姐御。
 迎撃準備は整っているとばかりに、ワンドの貴石を黄色へと輝かせるコクリコはアドンとサムソンも展開。
 装身具による底上げも終えている。

「一塊なのが有り難いですよ!」
 そう言って左手に握るワンドを空へと向け、

「アークディフージョン!」
 下位の電撃魔法を三方向から放つ。
 練りに練った電撃はいびつな蛇行で空を駆け上がっていき、

「ふぎぃ!?」
 と、一人が声を上げれば、電撃は先頭から伝播していき、塊となって急降下してきた連中が似たような声を上げ、痺れにより翼や羽が硬直。
 羽ばたくことを制限され、地面へと落下してくる。

「流石に全力で放っただけはあるな」
 魔法耐性装備であっても、限度を超えれば対応は出来ないようだ。

「運がよければ助かるってところか」
 最初に落下してきた連中は後から落下してきた連中の下敷きになっているから助からないだろうけど。

「他愛なし!」
 難を逃れた後続連中へとワンドを向ければ、コクリコの所作に背筋を伸ばしていた。
 完全に呑まれたようだな。
 数はいる。連携も出来ている。
 でも圧倒的に実戦経験が浅い。だからこそ強烈なインパクトを見せられると容易く気圧されてしまうのだろう。
 
 訓練が大事なのは当然だけど、実戦の経験が浅いのは問題だな。
 覚悟を決めることに時間がかかりすぎている。
 対してこちらはソレに関しては問題ない。
 覚悟の差で数の差を覆すことも出来そうだな。
 二百いようが、こっちは全くもってビビってないからな。

 コイツ等が外殻の中で訓練している最中、俺達は実戦で大人数相手に大立ち回りをしてきた。
 百単位の数なんて最早、少ないくらいだ。

 それにしても、こちらに攻撃が通用しない度に一々と動きが膠着していてはダメダメ。

「動きがないのはいいことです」
 不敵に笑むコクリコは、相手が動かないならばこちらは力を練るだけ練って更に強烈なのを放つことが出来ますからね! と、継ぐと、

「と、止めるぞ!」
 これ以上のを見舞われるのは御免こうむるとばかりに再び動き出すも、焦燥からの動きは統一性がなく、攻めてくる連中の動きは乱れている。
 誇れる編隊を組まないままに仕掛けてくる接近戦への対応は簡単でしかない。
 
 しかもこちらは先ほどまでとは違い、安定した地面の上に立っているから好きなだけ動き回れる。
 アクセルで俺が翻弄――させたところでシャルナとコクリコが仕留める。
 とっておきの魔法はまだまだ使用しないといったところか、ミスリルフライパンで相手の兜をヘコませる殴打で戦闘不能に追い込んでいくコクリコ。

 その横ではシャルナが必中の矢を放てば、兜のスリットから矢を生やしながら地面へと落下。
 接近されれば弓の末弭うらはず本弭もとはずからフォールディングタイプのミスリル刃を展開し、弭槍として斬り伏せていく。
 
 色素の薄い金糸のような髪を靡かせながらの槍捌き。
 舞を舞っているかのようで、一つ一つの動きに魅入ってしまう。
 
 美しい動きだけでなく、シャルナの槍捌きも上達している。
 近、遠距離を弓矢で対応し、これに強力な魔法も使用できるという超バランス型。

「うむ。強い!」
 数で劣っていようとも、この二人と一緒に戦えば不安なんてありゃしない。
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