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天空要塞
PHASE-1476【メンタル――大事】
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トラウマの恐怖からヘタレになって、全体を見るだけの余裕がない……。
だからこそ本当にミルモンには助けられた。
「今の突きは本当に危なかったよ。兄ちゃん……」
「助かったよミルモン」
礼を述べたところで、
「一騎討ちの中で口を出すのはいかがなものかな――使い魔よ!」
決定打となりえたと本人も思っていたのだろう、だからこそミルモンの発言によりその決定打を無下にされたことに怒り心頭のようで、俺からターゲットを変更。
白刃が狙うのは俺の左側。
豪腕からの刺突。
見舞われれば間違いなくミルモンは……、
「させるかよ!」
「ぬぅう!?」
自然と前に出る俺の体。
次には蹴撃をジージーの脇腹に見舞っていた。
「なんだ。腰が引けていない蹴りも出来るんじゃないか」
烈火を見舞っても弾き返してきただけあって、ダメージは皆無。
インクリーズにストレンクスンで強化していても効果なしか。
だが、蹴りで剣の間合い外に押し出すことには成功した。
「今までと違って気迫がこもっていたな。見事だった」
と、継いでジージーは称賛。そして急に動きが良くなったからか、警戒したのか構えるだけで仕掛けてこない。
「いいぞトール。それでこそだ。以前を思い出せ。お前が初めて脅威に対して振るい、命を奪った一刀を」
ここでベルが一年前の事を思い出すように言ってくる。
命を奪った一振り――。
二度目の王都防衛の事後処理だったか――。
子供たちも作業を手伝っていた時だったな。
死体に紛れていたゴブリンが子供に襲いかかってきた。それを俺は斬った。
初めて奪った命に呆然となったし、ベルにはその姿が情けないと言われたっけ。
でもその後、ゲッコーさんからは自分の事では動けなくても、人を守る為に力を振るえのは間違いなく勇者だって感じで褒めてもらったな。
それが凄く嬉しかったし、救われた。
「あの時は私も感情のままにトールを侮蔑した。そしてゲッコー殿、荀彧殿の発言に自身の発言を恥じた」
あの後、俺に謝罪してきたもんな。
あの時の俺はベル達に全てを任せて、自分は何もしないという丸投げ思考に近かったからな。
不愉快になって当然だ。
だからキツい言葉を投げつけられても仕方なかった。
「トール。今のお前はミルモンを守る為に動いた。ゲッコー殿の言葉をお借りするなら――自分のことでは躊躇が生まれても、人のためとなれば行動し力を行使することが出来る。間違いなくお前は勇者だよ――だ」
「お、おう……」
なんか体の底から熱く――というより温かなものが湧き出てくる感じだ。
「トラウマがどうした。今、トールは動けていた!」
普段からは想像できないベルの大声。
凛として涼やかでありながらもよく通る声がベルなんだけども、今のベルの声音は非常に強いものだった。
「他者のためになら動ける。それがお前がこの世界で得た勇者としての最初の素養だろう。トラウマは勇者となる以前のものだ。勇者となったいま――そのようなトラウマなど些事。他者のために振るえる力こそ克服の証」
「ベル――」
「見せてやれトール。本来のお前の実力ならば、眼前の相手は取るに足らないということを」
――おお――。
なんだよ。この沸々と心底からこみ上げるものは――。
「兄ちゃん」
「見せて上げなさいトール」
「トールの真の実力をね!」
ミルモン、コクリコ、シャルナからの背中を押してくれる激励。
ややあって――、
「勝てる相手にいつまでも手間取らないことね」
と、皆の視線を受けてからリンも続いてくれる。
他者のために動ける存在――それが勇者。
勇者と呼ばれる以上、俺はその名に恥じないための責任も課せられる。
セミが原因で死んだ俺と、今の俺は違う。
他者のため。
この世界にて力を持たない人々のためにも、セミで命を落としたというトラウマ
をいつまでも引きずり続けている場合じゃないし、そんな暇もない。
――そう、セミなんかにいつまでもかかずらう暇なんてないんだよ!
――深く長い呼吸を一つ――。
「立ち止まっている暇はないからな。勝たせてもらう!」
「ほお! 随分と言葉と姿勢が変わったな。初対面時のような悠々とした余裕がある」
「だろ」
「そういった者に勝たなければ意味がない」
「情けない姿ばかりで申し訳なかったよ。お礼になんかしてやるよ」
「首を斬り落とす時も雄々しく表情は崩さないでもらいたい。弱々しい表情からなる首級を主に渡してもお喜びにはならん」
「無理な相談だね。だって俺が勝つから」
「上からな言い様。生意気な態度も戻ったな!」
まあ、言動に強気は戻ったけど、正直まだ気後れしているのも事実。
でも――、
「今までのような無様な姿は見せないように努力するさ!」
「だね♪」
誓いを立てる発言に、左肩に座るミルモンが機嫌良く短く返す。
俺の負の感情がさっきまでより緩和しているってことなのか、ミルモンの表情は柔らかなモノになっていた。
実際、体はさっきまでと違って鯱張ってはいない。
やっぱりメンタルコントロールって大事だな。
特に勝負事の最中で左右されれば、勝てる相手にも負ける。
安定した精神力を常に維持する事が出来る者こそが強者でもあるわけだ。
剣術に体術だけでなく、精神面もまだまだ強者の域にはほど遠いね。
だからこそ本当にミルモンには助けられた。
「今の突きは本当に危なかったよ。兄ちゃん……」
「助かったよミルモン」
礼を述べたところで、
「一騎討ちの中で口を出すのはいかがなものかな――使い魔よ!」
決定打となりえたと本人も思っていたのだろう、だからこそミルモンの発言によりその決定打を無下にされたことに怒り心頭のようで、俺からターゲットを変更。
白刃が狙うのは俺の左側。
豪腕からの刺突。
見舞われれば間違いなくミルモンは……、
「させるかよ!」
「ぬぅう!?」
自然と前に出る俺の体。
次には蹴撃をジージーの脇腹に見舞っていた。
「なんだ。腰が引けていない蹴りも出来るんじゃないか」
烈火を見舞っても弾き返してきただけあって、ダメージは皆無。
インクリーズにストレンクスンで強化していても効果なしか。
だが、蹴りで剣の間合い外に押し出すことには成功した。
「今までと違って気迫がこもっていたな。見事だった」
と、継いでジージーは称賛。そして急に動きが良くなったからか、警戒したのか構えるだけで仕掛けてこない。
「いいぞトール。それでこそだ。以前を思い出せ。お前が初めて脅威に対して振るい、命を奪った一刀を」
ここでベルが一年前の事を思い出すように言ってくる。
命を奪った一振り――。
二度目の王都防衛の事後処理だったか――。
子供たちも作業を手伝っていた時だったな。
死体に紛れていたゴブリンが子供に襲いかかってきた。それを俺は斬った。
初めて奪った命に呆然となったし、ベルにはその姿が情けないと言われたっけ。
でもその後、ゲッコーさんからは自分の事では動けなくても、人を守る為に力を振るえのは間違いなく勇者だって感じで褒めてもらったな。
それが凄く嬉しかったし、救われた。
「あの時は私も感情のままにトールを侮蔑した。そしてゲッコー殿、荀彧殿の発言に自身の発言を恥じた」
あの後、俺に謝罪してきたもんな。
あの時の俺はベル達に全てを任せて、自分は何もしないという丸投げ思考に近かったからな。
不愉快になって当然だ。
だからキツい言葉を投げつけられても仕方なかった。
「トール。今のお前はミルモンを守る為に動いた。ゲッコー殿の言葉をお借りするなら――自分のことでは躊躇が生まれても、人のためとなれば行動し力を行使することが出来る。間違いなくお前は勇者だよ――だ」
「お、おう……」
なんか体の底から熱く――というより温かなものが湧き出てくる感じだ。
「トラウマがどうした。今、トールは動けていた!」
普段からは想像できないベルの大声。
凛として涼やかでありながらもよく通る声がベルなんだけども、今のベルの声音は非常に強いものだった。
「他者のためになら動ける。それがお前がこの世界で得た勇者としての最初の素養だろう。トラウマは勇者となる以前のものだ。勇者となったいま――そのようなトラウマなど些事。他者のために振るえる力こそ克服の証」
「ベル――」
「見せてやれトール。本来のお前の実力ならば、眼前の相手は取るに足らないということを」
――おお――。
なんだよ。この沸々と心底からこみ上げるものは――。
「兄ちゃん」
「見せて上げなさいトール」
「トールの真の実力をね!」
ミルモン、コクリコ、シャルナからの背中を押してくれる激励。
ややあって――、
「勝てる相手にいつまでも手間取らないことね」
と、皆の視線を受けてからリンも続いてくれる。
他者のために動ける存在――それが勇者。
勇者と呼ばれる以上、俺はその名に恥じないための責任も課せられる。
セミが原因で死んだ俺と、今の俺は違う。
他者のため。
この世界にて力を持たない人々のためにも、セミで命を落としたというトラウマ
をいつまでも引きずり続けている場合じゃないし、そんな暇もない。
――そう、セミなんかにいつまでもかかずらう暇なんてないんだよ!
――深く長い呼吸を一つ――。
「立ち止まっている暇はないからな。勝たせてもらう!」
「ほお! 随分と言葉と姿勢が変わったな。初対面時のような悠々とした余裕がある」
「だろ」
「そういった者に勝たなければ意味がない」
「情けない姿ばかりで申し訳なかったよ。お礼になんかしてやるよ」
「首を斬り落とす時も雄々しく表情は崩さないでもらいたい。弱々しい表情からなる首級を主に渡してもお喜びにはならん」
「無理な相談だね。だって俺が勝つから」
「上からな言い様。生意気な態度も戻ったな!」
まあ、言動に強気は戻ったけど、正直まだ気後れしているのも事実。
でも――、
「今までのような無様な姿は見せないように努力するさ!」
「だね♪」
誓いを立てる発言に、左肩に座るミルモンが機嫌良く短く返す。
俺の負の感情がさっきまでより緩和しているってことなのか、ミルモンの表情は柔らかなモノになっていた。
実際、体はさっきまでと違って鯱張ってはいない。
やっぱりメンタルコントロールって大事だな。
特に勝負事の最中で左右されれば、勝てる相手にも負ける。
安定した精神力を常に維持する事が出来る者こそが強者でもあるわけだ。
剣術に体術だけでなく、精神面もまだまだ強者の域にはほど遠いね。
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