異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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天空要塞

PHASE-1494【生徒会長】

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 耳栓でごまかせているんだから、いらんことは言わないようにしとかないとな。
 ボロを出さないようにラズヴァートとの会話は俺じゃなく、移動中は捕縛してくれているリンに任せよう。
 コイツも美人と会話してる方が嬉しいだろうし。

 ――。

「おお! 盛大じゃないか」

「あの光景を見ても随分と余裕をもった態度だな」

「今のところは余裕だからな。なんたって彼の有名なストームトルーパー所属のラズヴァートをちょちょいのちょいで倒している男だからね」
 言えば、「けっ」とだけ返してくる。
 石畳の道を歩き、ようやく要塞中心部へと到着。
 ジージーが守っていた城壁とは違ってここのは高さはない。
 ざっと見て四メートルほど。
 ピリアを使用して跳躍すれば簡単に飛び越えられる程度だ。
 狭間はあるけどタレットはない。
 外側の城壁と比べれば、最低限の防衛が出来ればいいってところだな。

「随分と大立ち回りをしているようだな。勇者一行よ」

「あ、どうも」
 壁上に立つ人物はラズヴァートと同じ服装の人物。
 ラズヴァートと違って生真面目そうな銀髪センター分けのイケメンさんだ。
 右目にはモノクル。
 モノクルじゃなく眼鏡だったら、少女漫画に出てくるイケメン生徒会長そのものである。

「お宅がああいった落ち着きあるイケメンさんタイプだったなら、俺から痛い目に遭わされなくても済んだかもな」

「うるせえよ!」

「ラズヴァート、無事だったか」

「ご覧の通りだよ」
 縛られた自分の姿をとくと見よ! とばかりに要塞側に身をさらす。

「はい、余計な動きはしない」
 リンがグンッと引っ張れば、抵抗することなく戻ってくる。
 で――リンに向かってダイブしそうだったので、

「見え見えなんだよマヌケェ」

「あがっ!?」
 蹴りを入れてやった。

「勇者とは拘束した捕虜に暴行を振るうのだな」
 こちらの行動に生徒会長が真顔で発言。

「いやいや、今のはこっちの仲間に危機が迫ってたからね。お宅はコイツとご同輩だろう。だったら分かるだろう」

「――確かに」
 納得するんだな。

「素行の悪さはしかたないとしても、私にとっては大切な同胞。その同胞が拘束されているとなれば救出しないとな」

「人質として扱ってるわけだから、こっちに対して攻撃はしないほうがいいんじゃないかしら?」

「おい、リン……」
 悪そうな笑みを湛えてなにを言ってやがるこの死霊魔術師は……。
 人質として利用するつもりはあるが、言い方と表情よ……。
 完全にこっちが悪役みたいじゃないか……。

「勇者一行の正体見たり――だな」

「何も見えていない。お宅は一切、俺達の人間性が見えていない!」

「黙れ外道」

「ようよう落ち着けよ。生徒会長」

「私はそんな名ではない。アイル・ゼトハンだ」

「自己紹介ありがとう」

「礼は必要ない。そして人質も意味が無いと知るといい」

「おいおいおい! ちょっと待ってくれ!」
 焦りを見せるラズヴァート。
 その姿を目にするに、相手の次の行動を理解する俺は、

「大切な同胞は救出って言う前言はどうするんだよ」

「救出はする」
 と、生徒会長。

「ラズヴァート。素行は残念だが忠誠心は本物。それを汚すのは心許ない。勇者一行に囚われたのは恥だろう。死にて開放してやる。それが魂の救出だ」

「スゲえ理論を展開してきたな……。なんだあいつ。お前のことが実は嫌いなのか? 嫌いだからついでにってことか」

「いや違う……あいつは本気で恥辱を拭ってやろうと思ってるんだよ。虜囚は戦士としての恥。その恥からの開放――つまりは死。それがあいつなりの好意だ」

「喋り方は優等生だけど思考は鎌倉武士バーサーカーみてえだなオイ! じゃあ俺達は人質取ってるモンゴル軍ってか。人質もろとも攻撃されるルートじゃねえか」

「一斉攻撃」
 ザザッと相対する方から聞こえる。
 整った動作。
 そこから放たれる魔法の色は整っておらず多彩。
 集団戦になれば必ずと言っていいほどに目にしてきたカラフルな光景だ。

「アイルッ! この馬鹿野郎が!」
 拘束されたラズヴァートからの怒号。
 忠誠心はあっても、そう易々と死んでたまるか! という考えはあるようで、生きての救出対策を考える事もせず魔法による物力攻撃を指示した者に対し、ぎらついた目で睨んでいた。

「今度こそいい所を見せましょう」
 ぎらつく目のラズヴァートを拘束したまま、フィンガースナップ。

「うわ、器用」
 自分の魔法技量を見せつけたいと思ったのか、ドーム状や単純な壁タイプのプロテクションではなく、迫ってくる魔法一つ一つを防ぐかのように、六角形の小さな障壁をいくつも展開して防いでいく。

「お見事!」
 と、ラズヴァートが迫ってきた魔法を全て防ぎきる緻密な業前に興奮を混じらせての感嘆の声。

「お見事」
 と、同じ言葉でありながらも、前者と違って冷静な声音での称賛をするのは生徒会長。

「少しは良いところ見せたでしょう」

「十分だ」
 返せば、フフンと鼻を鳴らして胸を反らしてくるリン。
 うむ。ベルほどではないが立派なお胸様だ。
 自慢の魔法で活躍できてなかったこともあって、意地でも自分の技量を見せつけたかったんだろうな。
 シャルナからは緻密な防御をするくらいなら攻撃するべきと言われるも、自分が防いでる間に攻撃しなかった貴女には言われたくないと不敵に返せば、ぐぬぬ……。と唸るシャルナ。
 毎度のように言い負かされる姿を見ているところで、

「波状にて攻める」
 次の手に出てくる生徒会長。
 発言に従うように、要塞側から一斉に飛び立ってこちらへと迫る軍勢。
 装備は俺達が今まで戦ってきた面々と同様のもの。

 各部隊の一般兵を指揮するのは――ストームトルーパー。
 生徒会長と共に、結構な数がこの場に出張ってきているようだ。
 難敵多し。
 こりゃ今まで以上に気合いを入れないとな。
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