異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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天空要塞

PHASE-1495【初見殺し】

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 念のための確認。

「側仕えであり先遣隊であるストームトルーパーが、まさか両手で数えられる程度ってことはないよな?」

「当たり前だ」
 素直に答えてくれるラズヴァート。

「有り難いね~」
 精鋭はこざこざと出てきてくれた方がこっちとしては戦いやすい。
 各個撃破の方が遙かに楽だからな。

「常に連携を心がけろ。距離を開きすぎて互いの意思疎通に齟齬が生じぬように」

「生徒会長は仕切りがお得意のようだ」

「仕切るだけの頭でっかちだよ」

「軽口ばかりのヤツよりは、耳を傾けるだけの信頼は築いているようだけどな。皆して呼応してるぞ」

「うるせえよ!」
 生徒会長を話題にすればラズヴァートは露骨におもしろくないといった表情になる。
 ライバルなのかな?
 まあ今はそんな憶測はいいや。それよりも、

「目の前の脅威だな」

「多いわね~」
 相手の数に面倒くさそうな声音のリン。
 数による圧を受けようとも、脅威よりも面倒という感想の方が上回っているご様子。
 
 生徒会長の発言を嚆矢とするように、前衛を担当する先駆けが動き出す。
 低い城壁に留まっているのが後衛担当か。
 前後をざっと見渡す。
 おおよそ五百の兵力からなるね。
 
 正直、ベルとリンがいるから大した数ではないんだけども、負担は軽減したいよな。
 
 耳に手を当てつつ、

「特効の出番ですよ」

『お、そうか』

「潜入中ですからね。それを優先するならここでの特効は止めるべきでしょうが――」

『気にするな!』
 と、耳朶に届く声はノリノリ。
 ゲッコーさんって爆発させる時って楽しそうだよな……。
 爆発させる事が好きって言うよりは――、

『お前の剣舞を見れないことが残念でならないがな』
 滑稽な剣舞モドキを見る事ができないってのが理由……。

『見せてやれ。お前の二刀による新バージョンの剣舞を』
 渋声は嬉々としたもの。
 間違いなく笑ってるな。
 
 ――段取りを始める。
 俺達が要塞の正面方向から来ているのは逐次報告で済ませている。
 なので剣舞で決めの振りをする時は正面向かって右――南門から訪れたので東側にに振れということ。

 短いやり取りにて段取りが済んだところで、

「来るがいい。我が奇跡からなる一振りで要塞を爆ぜさせてやろう! お前達では真似ることの出来ない勇者の奇跡を刮目せよ!」

「訳の分からぬ事を言っているが、脅威となるなら優先する。各員、勇者を狙え」
 俺に攻撃を集中させるという、お手本のような下知を出す生徒会長。

「俺達が行く!」
 生徒会長の指示に従い、前衛担当のストームトルーパーの一人が、指揮する一部隊と一緒になって俺へと迫ってくる。

「させませんよ!」
 迫る部隊にコクリコがアドンとサムソンと共に放つのは、練りに練ったポップフレア。
 これにシャルナのブラストスマッシュと、リンのライトニングサーペントが続く。
 炸裂、風、電撃による魔法攻撃。

「なんて火力だ!」
 言えば俺への接近を諦める――ということはなく、

「防ぐ。止まるな」
 短く生徒会長。
 後方の壁上に立つ面々と共に障壁をいくつも展開。
 過剰とも言える障壁にて女性陣三人の魔法を防ぎきった。

「大げさね」
 障壁魔法の過剰展開にリンが呆れる。

「あいつは超がつくほどの慎重派だからな」
 と、ラズヴァート。
 慎重なタイプはやりにくいんだよな。チマチマしてるから。
 消極的な戦いってのは臆病にも見えるけど、攻め手側からすれば攻めづらい。
 力を温存した戦い方で対応されれば。長期戦になるからな。
 でもって今までの連中以上に連携もいい。
 
 普通にぶつかれば時間と体力の消耗につながるけども――、

「普通にぶつからなければいいだけ」
 前衛が動きを止めることなく迫ってこようが――。

「仕留める!」
 なんて言葉を裂帛な気迫にて言ってこようが――。

「俺は剣舞を実行する!」

「分かった」
 信用できる仲間がいれば問題なし。
 剣舞という発言で理解したベル。
 
 十文字槍を手にして地上に向かって突っ込んでくるストームトルーパーの一人の側面へと瞬時に移動し、長い足による蹴りを一閃。
 声を出すことも出来ず、地面へと叩き落とされるという光景。
 共に行動する部隊は、部隊長的な立場である一人がいきなり戦闘不能となったことで動きが悪くなってしまう。

「戦闘中に前衛が動きを止めるな」
 見逃すという甘さは見せず、空中にて動きが鈍くなった部隊に対し、ベルが空中戦を始める。
 そう、空中戦……。

「マジかよ……」

「マジだよ」
 剣舞を始めるつもりが、ラズヴァートと共にベルの動きに魅入ってしまう。
 部隊の一人一人を蹴り落としつつ踏み台として活用し、空中に留まっている。
 八艘飛びってのはあんな感じの芸当だったのかね~。

「なんだあの女は!? まずは危険な白髪から対処だ!」
 別のストームトルーパーが指揮する部隊が俺ではなくベルへと向かう。
 このまま放置すればやばいって判断したんだろう。
 判断はいい――。
 が、対処はまずい。
 ここで取るべき行動は、ベルとの戦闘は徹底的に避けることが最適解なんだよな~。
 ベルとの初めての戦闘だからな。そこまで答えを導き出すことは難しいか。

 THE・初見殺し。
 
 俺が通俗的表現を頭で思い浮かべている時にも、飛行する者達を踏み台にしつつ、的確に踏み台にした者達の急所を攻撃しながら地面へと落としていくという現実離れした光景は続く。

 急所を突くと言っても命を奪うのではなく、蹴りや手刀で相手の首部分をトンッと軽く打ち込んでいくだけ。
 落下する仲間を救出するという動きも相まって、相手方前衛はベル一人によって初手で大いに崩されてしまう。

 埒外の強さを己が身を以て体験するといい。
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