異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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天空要塞

PHASE-1512【術者の差】

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 ――ヤヤラッタもそうだったが、

「尻尾って便利だな」
 前面へ展開した炎の障壁を避けるようにして打ち込んできた側面からの一撃が、尻尾によるものだったのを床に向かって落下している中で確認した。
 初手に受けた攻撃も同様だろう。

 ヤヤラッタとの違いは、今現在、相手取っているヤツのは蛇腹状で外殻からなる尻尾だということ。
 威力、太さと頑丈さでヤヤラッタに勝っている。
 しかもそれが二本も生えてんだから厄介なことこの上ない。
 でもってリーチもあるから更に厄介だ。

「足を止めてこちらを吟味。流石はいくつもの死地をくぐり抜けていると言うべきかな!」

「とっ!」
 即座に俺の側。
 アクセルではなく、羽ばたきで生み出した瞬発力のみ。

「大したもんだ」

「その余裕、打ち砕こう! 我がパイルストームで!」

「ちょ!?」
 発すると同時に即座に右腕に螺旋を描く濃密な風の杭――ドリルが顕現。
 ラズヴァートのお得意であり――苦手でもある大魔法。
 対してアドゥサルは、顕現させた風のドリルが生み出す風力に負けておらず、安定した飛行をしてみせる。
 これだけでも扱う者の差が分かるってもんだ。

「ここでも観察か! ならば刮目しながら死ねぃ!」
 風のドリル先端を向けられる中、床を滑るように疾駆すれば、アドゥサルも俺に合わせるように床すれすれを飛行しながら追走してくる――ところで、

「ぬぅ!」
 赤黒い二つの光刃の妨害で俺への追走を一時停止。
 舌打ちをしつつも、腕に纏った風のドリルで光刃を迎え撃つ。
 初見のものと違って、眼前のは使用者の体のサイズも大きいから、それに比例してドリルのサイズも倍以上。
 ソレを撫でるように動かすだけで、二つの光刃が簡単に消え去る。

「アンデッドの分際で邪魔をする」

「邪魔をするのは当然だろう。仲間が危機に陥っているのだからな」
 ルインリーダーと、無事だったエルダーによる攻撃のお陰で俺は難を逃れた。

「アンデッドが仲間意識ぃ? 貴様等の行動理由は、知性もなくただただ集まり彷徨だけ。仲間を求めるという考えがあるとするなら、生者を自分たちの側へと引きずり込みたいというおぞましくも情けない矮小な思考のみ!」

「ボロクソに言ってくれる」

「本当の事を言っただけよ。金色の鎧で着飾っているから、自分が高尚な存在と勘違いしているようだなスケルトン。風体が変わろうが、アンデッドはアンデッドなんだよ」

「別に高尚などとは思っていないさ」

「邪魔立てするなら貴様等を我が風の大杭で先に仕留めよう。文字通り、骨も残さずにな!」
 言うと同時にコウモリのような羽を大きく羽ばたかせる。
 一度の羽ばたきで瞬時にルインリーダーへと接近――するところで俺も先んじてアクセルを使用。

「横槍!」
 言いながらブレイズを纏わせた残火による上段からの振り下ろし。

「なんの!」
 強靱な外殻に守られた尻尾で受け止められる。

「ではこちらも」
 俺の反対側から、俺の動きに合わせてのエルダーによる斬撃。
 これもまた残りの尻尾で防がれ、

「ふん!」

「おわっ!?」
 右腕に纏わせたパイルストームを振り回すだけで俺達はその風圧で強制的に後退させられる。

「ハハハハハハハハハッ! 間隙を突いてもその程度か。ぬるいな――貴様等!」
 おうおう、強者然とした哄笑だ。コクリコもビックリだよ。
 まあ……、その高笑いに見合うだけの強者だというのは認めよう。
 アクセルでの側面からの攻めは、ブレイズを纏わせての得意の上段だったのに簡単に防がれたからな……。
 しかも体正面を俺へと向けるという動きも一切無く、ただ尻尾だけで受け止めてきた。

「幹部は伊達じゃないな……。クロウスはこれ以上ってことなんだろうし」

「貴様!」

「おっふぅぅ!?」
 あっぶね……。
 背を反らす動作がワンテンポ遅れていれば、今ごろ蛤刃で鼻から上の部分が吹き飛ばされていた……。

「余裕ある戦闘から打って変わっての殺意ある動きだったな」

「当たり前だ! この我をクロウスと比べるな!」
 姿を見せる前のやり取りでも、クロウスと比べたことで不機嫌になったよな。

「ライバル視してんだな」

「するか! 我の方が上なのだからするはずもない! 我より格下のくせに我の上役というのが気に入らん!」

「そう思っているのはお宅だけだろ」

「生意気なヤツだ。そもそも翼幻王ジズ様の評価基準がおかしいのだ!」

「おっと、ここで上司批判」

「したくもなる! それに我が真の主は翼幻王ジズ様の主である魔王様! 我が力を知っていただき、いずれは魔王様の右腕となる。今はその途上と言ったところよ」
 翼幻王ジズよりも派閥は魔王寄りって感じの発言だな。

「そう考えると今日は僥倖である。我らが同胞の命を奪い続ける勇者の首級を得る事が出来るのだからな。そうなれば魔王様も我を重用してくださるだろう」

「首を取る前にそんな事をいうのは良くないよ。負けると格好悪いことこの上ないからね」

「黙れ。そして――その首をよこせ!」

「ひゃあ!?」
 豪腕から繰り出される左手に握られた手斧は、右腕に纏っているパイルストームにも負けていない風切り音を轟かせる。
 床に当たれば床を瓦礫へと変貌させ、大きく抉ってみせた……。
 
 ―――……まったく……幹部一人でこの実力。
 こんなのがまだまだ後に控えてんだよな……。
 でもって大立者のクロウスもいれば、それ以上の翼幻王ジズも控えている。

「まいった、まいった」
 分かってはいたけども、今までで一番にやばい場所だな。ここは。
 
 でもまあ――、

「対処はできそうだ」

「言うではないか! その笑み――気に入らん! 本気でそう思っているという顔だ!」
 心内が表情に出ていたのか、相対するアドゥサルは大層に機嫌を損ねたようで、強い言葉と共に俺へと接近。
 
 ――パイルストームによる突撃は脅威。
 ラズヴァート以上に大きな風のドリルに、ラズヴァートでは成し得ない安定した姿勢での使用。
 
 これに加えて、

「よっと!」

「おう! 躱すか!」
 二本の腕と二本の尻尾。
 四方向からの連撃は脅威だし、

「アクセル!」
 横を取ってからの斬撃を見舞うも、

「中々に厄介な尻尾だよ」

「非常に厄介の間違いだろ?」
 俺の発言を訂正しながらこちらの攻撃を尻尾で防いでくる。
 アドゥサルが言うように非常に厄介である。
 でも、まったく対処できないってわけでもない。
 
 徐々にだけど、攻撃の軌道は見えてきている。
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