異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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天空要塞

PHASE-1586【天空要塞最終戦? 幕開】

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「もっと楽しんでもらわないとね。次は何が欲しいかしら」

「自分で取るんで」

「では、左肩の小悪魔殿は?」

「オイラはホットミルクをもらうよ」

「喜んで」
 ミルモンの注文に、この要塞のトップが嬉々として応え、ミルクを運んでくる。
 
 ――ふむん。
 なんかこう、ベスティリスはアレな感じがする。
 俺と一緒に行動する一人の人物と同じような気がしてならない。

「美味しいホットミルクだね」

「まだ必要かしら?」
 と、小さなマグカップにおかわりを注ごうとすれば、

「こんな綺麗なお姉ちゃんに注いでもらえるなんて、オイラ幸せすぎるよ♪」

「そう言ってもらえると、こちらもとても嬉しいわね」
 心の底から嬉しいようで、ベスティリスの声は非常に明るく楽しげ。
 ミルモンも調子に乗っていい飲みっぷりを見せれば、これまた嬉しそうなベスティリス。
 ここにベルも参加し、ミルモンの愛らしさを二人して堪能。
 傾国級の美人二人に喜んでもらえるとか羨ましすぎだなミルモン。
 そこ代わって……。

「おかわり!」
 快活の良いミルモンの声が大広間に響けば、その声がどうしても我慢できなかった者もいた。

「いい加減にしなよ! 図々しいぞチビ悪魔!」
 怒気を飛ばしてきたのは、ポームス。

「ああん? なんだい。チビ獣。オイラの興を削ぐとはいい度胸をしているね」

「はっ! いい度胸をしているのはどっちだ。ボク達の主に好き勝手に注文を出してさ!」

「この姉ちゃんが好きでやっているってのを見て理解できないとか、頭の中も獣並だね。いや、獣に失礼か。ハハハハハッ」

「おい、ミルモン」
 良くないよ。そうやって馬鹿にするのは。

「ふざけやがって!」
 ほらお怒りだよ。
 コアラのような可愛いモフモフフェイスが思いっきり睨んでるよ。
 可愛いだけなんだけど。

「ポームス。落ち着きなさい」

「黙っててよ!」

「あ、ええ……」
 おお……。ベスティリスが気圧されている。
 お世話係であるポームスの怒りに気圧されているというよりは、これ以上なにかを言えば、ポームスの怒りが自分に向けられるのでは――という不安から一歩後退といったところか。

「ポームス。はしたないですよ。ミルモン殿に謝罪を」
 ここでクロウス氏。

「死んでもやだね!」
 断固とした拒否で返してくる。
 大立者に続き幹部のガーゴイル二人も間に入ってくれるが、ポームスの怒りは収まらない。
 ちびっ子ワイバーンの背で立ち、小さな鼻をひくつかせ、鼻息荒くミルモンを睨み続ける。

「恰好の悪いことだよね~。自分より上役の面々が止めに入っているのに、言うことを聞かずにダダをこねるなんてさ。身の丈同様、精神面も子供だよ。ねえ、兄ちゃん」

「うん。ミルモンもだからな」

「オイラの何処があいつと一緒だってのさ! 全然ちがうよ!」
 って、声を荒げる時点で一緒なんだよな……。

「落ち着くのだミルモン」

「姉ちゃんは黙ってて!」

「あ、ああ……」
 目の前の美人様と同じようなリアクションのベル。
 ミルモンに嫌われたくないという事から一歩後退。
 美人二人の共通した動作。
 間違いねえな。
 ベスティリスからはベルと同類の香りがしてくる。
 戦闘中にミルモンから指摘を受ければ、反省して訂正していたしな。
 あれだ、目の前の圧倒的な強者も愛玩ラブラブ勢だ。
 絶対にそうだ! こいつぁ――ポンコツだ!!
 
 推測している間も、500㎖ペットボトルサイズの二頭身ボディからなる二名の舌戦が熱を上げる。

「自分自身で飛べもしないヤツが偉そうなんだよね。この要塞には不釣り合いなんじゃないの!」
 俺の左肩から飛べば、ポームスの周囲を得意げに飛んでみせる。

「お、お前! ボクが気にしている事を!」

「あ、ごめ~ん。気にしてたんだ。だったら努力すればいいのに。飛行魔法だってあるんだからさ。ま、君なんかじゃ習得は無理だろうけどね」

「グギギィィッ!」
 歯を軋らせ悔しがるポームス。
 それを少し高い位置から見下ろし、

「アハハハハハハ――ッ。そんなんでオイラに楯突くなんてね」
 固有能力で飛行を持つ者としてのアドバンテージからミルモンは哄笑。

「ふぐんっ!?」
 そんな笑いが止められる。
 強制的に……。

「「「「あ!?」」」」
 笑いが止まり、物が詰まるような声に、俺を含めた周囲の面々が呆気にとられた声を出す。
 ミルモンの笑いが止まったのは、無理矢理に口を塞がれたから。
 塞いだ原因は、俺の親指ほどのソーセージ。
 俺達からすれば標準サイズだけども、ペットボトルサイズのミルモンの口からすれば大きいもの。

「よっし!」
 ガッツポーズのポームス。

「あ~あ……」
 反面、主のベスティリスは手で顔を隠して気怠そうに溜め息。
 それに続くようにクロウス氏とガーゴイルの二人も嘆息。
 ボクの今の的確な投擲攻撃を見た! と、ポームスがはしゃげばはしゃぐほど、周囲の表情は渋いものとなっていく。
 
 そんな中で――パキリッ! という耳心地の良い音が一つ響く。

「んんっ! んっぐぅ! んふふん。――いやいや……中々に美味だよ。歯触りの良い皮。中からあふれ出てくる肉汁は非常に上質。ハーブやスパイスも良い物だ。魔界の勲功爵であるオイラが保証するよ。これは――最高だってね!」
 クリティカルで口に入ったウインナーを根性でかみ切り、咀嚼、嚥下からの台詞。

 クールぶってはいるが、怒りを気炎と変え、体から迸らせておられる……。
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