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天空要塞
PHASE-1588【二人には辛い戦いのようで】
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「兄ちゃん。提案があるよ!」
「はいはい。なんでしょうか勲功爵殿」
「こっちが勝ってんだからね。この最終戦である食卓闘技場での開始の合図は、こっちに権利があると思うんだ」
「お、そうか」
「だから、勝者側である代表の兄ちゃんに開始の合図をお願いするよ」
言いながら、腰に差した愛刀クロモジの収まる鞘を俺へと預けてくる。
預けながらのその発言を周囲が耳にすれば、自然と俺に視線が集まる。
早く始めろ! と、睨む生徒会長と他の面子。
始めるのではなく、止めるべきだろう。といった心配した目で見てくるこっちの最強さんと、向こうの最強さん。
二人の圧を受けきれるほど俺のメンタルは強くないけども、相対する二人がやる気満々だからね。止めるのは難しい。
「戦うにしてもルールは必要。俺が立会人をつとめる。戦いは一対一だぞ。あと、命に関わると判断したら俺かゲッコーさんが止めるからな。この案を受けるか」
「「もちろんだよ」」
受け入れる両名。
対して二人の美人は、なぜ自分たちに止める権利を与えないのかとこちらを睨んでくる。
だって、始まったと同時に絶対に止めるじゃん……。
一対一となればちびっ子ワイバーンの参戦はなし。
なので――、
「飛行禁止な」
「問題ないね。同じ目線で戦うって決めてるからね」
強気を崩さないミルモン。
「あと、可能な限り破壊は避けたいので、強力な技や魔法も禁止で」
「ハンデには丁度いいよ勇者」
「はっ! 使えないだけだろう」
「そ、そんなこと……ないやい!」
焦りよう。そんな事あるんだな。
「なんだ。本当にただの愛でるだけ専用なんだな」
この小馬鹿にしたミルモンの言い様に、怒り大爆発とばかりにポームスがミルモンへと向かって駆け出す。
「兄ちゃん!」
「おう、お互いにルール厳守。では――始め!」
「よっし!」
開始の合図を耳にし、ミルモンもポームスへと目がけて駆け出す。
「このぉ!」
ポームスは渾身の一撃を見舞おうと、拳を握り腕を後方へと引く。
――双方の間合いで。
悪手だな。悪い手本のテレフォンパンチだ。
対してミルモンは落ち着いており、大振りとなっているポームスの顔へと目がけて、
「シッ!」
ボクサーのような小気味の良い呼気にて先制の右ジャブ。
「うくぅ!?」
見事、左頬にヒット。
「巴投げもそうだが、今のも上手いな」
と、ゲッコーさんからお褒めの言葉。
タイミングバッチリだったからな。常に俺の左肩に留まり、戦闘を経験してきただけはある。
ミルモンが言うように経験の差は勝っている。
見舞われたポームスは突撃の勢いが削がれ、間合いの一歩外へと後退。
先手を取られたことで、ストームトルーバー達からは「「「「ああぁぁ……」」」」と、落胆の声が上がるが、
「五月蠅い!」
ベスティリスが俺達との戦闘時にも見せなかった鋭く冷たい目を落胆する声の方へと向ければ、天井に向かって真っ直ぐに背筋を伸ばし、開かれた口が一様に真一文字を書く。
「ハハッ! 勢いと口だけだな。ケサランパサラン」
強者としての佇まいによるミルモンの上から目線な発言。
巴投げと右ジャブを綺麗に決められたことで、自分の方が遙かに格上だと判断しているご様子。
だがしかし、
「まだそういった態度になるのは早いんじゃないか」
俺に聞こえる範囲でゲッコーさん。
然り――と、俺もゲッコーさんに聞こえる程度にて返す。
決闘が始まって直ぐに右ジャブが一発決まっただけ。
それだけで余裕となれば、足を掬われる事になるだろう。
相手は後退しているけども、目に宿る力強さは削がれていない。
油断大敵と言うべきだろうが、これは一対一の決闘。
横からの苦言やアドバイスはルール違反になる。
なので見守るだけ。
「さあ、来なよ。またきっついカウンターを喰らわせてあげるからさ!」
「生意気なんだよ!」
再び駆け出すポームス。
「芸が無いね」
同じ動きにミルモンは愛らしい嘲笑。
ボクサースタイルで構えるも、
「見誤ったな」
と、小声の俺。
「全くだ」
続くゲッコーさん。
「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
気合い漲る咆哮と共にポームスが繰り出す攻撃は――下半身へのタックル。
「うわっ!?」
「いいタックルだ」
解説となったゲッコーさんに俺が頷く。
両足に抱きついて膝裏から思いっきり引き上げれば、どんなにガタイがよくて力がある者でも転倒は必至。
ましてや同じ体格であの状況に持ち込まれれば、対処は出来ない。
「どうだ!」
見事にマウントをとって見せたポームスに、ストームトルーバー達から今度は歓声が上がる。
――が、
「何を嬉々と楽しんでいる? 楽しみたいなら相手になろうか?」
今度はこちらの美人様がベスティリスと同様の視線と声音をぶつければ、一斉に視線下方四十五度凝視からの口を真一文字。
リアクションの乱高下が激しいこって……。
声を上げての落胆と歓喜。
これらが封じられてしまった以上、ただただ黙って二人の戦いを見るだけになってしまう。
マウントを取るポームスは、勝ちを確実なものとするために、ミルモンを逃がさないように左手で胸ぐらを掴み、全体重を腹部へと乗せ、振り上げる右拳を――振り下ろす。
「ぐぅ!」
もちもちホッペがモフモフの拳によって変形。
あまりにも惨たらしい。と、ベルは弱々しい表情となって目を逸らしてしまう……。
普段はもっと凄いことをしてんのにな……。
「はいはい。なんでしょうか勲功爵殿」
「こっちが勝ってんだからね。この最終戦である食卓闘技場での開始の合図は、こっちに権利があると思うんだ」
「お、そうか」
「だから、勝者側である代表の兄ちゃんに開始の合図をお願いするよ」
言いながら、腰に差した愛刀クロモジの収まる鞘を俺へと預けてくる。
預けながらのその発言を周囲が耳にすれば、自然と俺に視線が集まる。
早く始めろ! と、睨む生徒会長と他の面子。
始めるのではなく、止めるべきだろう。といった心配した目で見てくるこっちの最強さんと、向こうの最強さん。
二人の圧を受けきれるほど俺のメンタルは強くないけども、相対する二人がやる気満々だからね。止めるのは難しい。
「戦うにしてもルールは必要。俺が立会人をつとめる。戦いは一対一だぞ。あと、命に関わると判断したら俺かゲッコーさんが止めるからな。この案を受けるか」
「「もちろんだよ」」
受け入れる両名。
対して二人の美人は、なぜ自分たちに止める権利を与えないのかとこちらを睨んでくる。
だって、始まったと同時に絶対に止めるじゃん……。
一対一となればちびっ子ワイバーンの参戦はなし。
なので――、
「飛行禁止な」
「問題ないね。同じ目線で戦うって決めてるからね」
強気を崩さないミルモン。
「あと、可能な限り破壊は避けたいので、強力な技や魔法も禁止で」
「ハンデには丁度いいよ勇者」
「はっ! 使えないだけだろう」
「そ、そんなこと……ないやい!」
焦りよう。そんな事あるんだな。
「なんだ。本当にただの愛でるだけ専用なんだな」
この小馬鹿にしたミルモンの言い様に、怒り大爆発とばかりにポームスがミルモンへと向かって駆け出す。
「兄ちゃん!」
「おう、お互いにルール厳守。では――始め!」
「よっし!」
開始の合図を耳にし、ミルモンもポームスへと目がけて駆け出す。
「このぉ!」
ポームスは渾身の一撃を見舞おうと、拳を握り腕を後方へと引く。
――双方の間合いで。
悪手だな。悪い手本のテレフォンパンチだ。
対してミルモンは落ち着いており、大振りとなっているポームスの顔へと目がけて、
「シッ!」
ボクサーのような小気味の良い呼気にて先制の右ジャブ。
「うくぅ!?」
見事、左頬にヒット。
「巴投げもそうだが、今のも上手いな」
と、ゲッコーさんからお褒めの言葉。
タイミングバッチリだったからな。常に俺の左肩に留まり、戦闘を経験してきただけはある。
ミルモンが言うように経験の差は勝っている。
見舞われたポームスは突撃の勢いが削がれ、間合いの一歩外へと後退。
先手を取られたことで、ストームトルーバー達からは「「「「ああぁぁ……」」」」と、落胆の声が上がるが、
「五月蠅い!」
ベスティリスが俺達との戦闘時にも見せなかった鋭く冷たい目を落胆する声の方へと向ければ、天井に向かって真っ直ぐに背筋を伸ばし、開かれた口が一様に真一文字を書く。
「ハハッ! 勢いと口だけだな。ケサランパサラン」
強者としての佇まいによるミルモンの上から目線な発言。
巴投げと右ジャブを綺麗に決められたことで、自分の方が遙かに格上だと判断しているご様子。
だがしかし、
「まだそういった態度になるのは早いんじゃないか」
俺に聞こえる範囲でゲッコーさん。
然り――と、俺もゲッコーさんに聞こえる程度にて返す。
決闘が始まって直ぐに右ジャブが一発決まっただけ。
それだけで余裕となれば、足を掬われる事になるだろう。
相手は後退しているけども、目に宿る力強さは削がれていない。
油断大敵と言うべきだろうが、これは一対一の決闘。
横からの苦言やアドバイスはルール違反になる。
なので見守るだけ。
「さあ、来なよ。またきっついカウンターを喰らわせてあげるからさ!」
「生意気なんだよ!」
再び駆け出すポームス。
「芸が無いね」
同じ動きにミルモンは愛らしい嘲笑。
ボクサースタイルで構えるも、
「見誤ったな」
と、小声の俺。
「全くだ」
続くゲッコーさん。
「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
気合い漲る咆哮と共にポームスが繰り出す攻撃は――下半身へのタックル。
「うわっ!?」
「いいタックルだ」
解説となったゲッコーさんに俺が頷く。
両足に抱きついて膝裏から思いっきり引き上げれば、どんなにガタイがよくて力がある者でも転倒は必至。
ましてや同じ体格であの状況に持ち込まれれば、対処は出来ない。
「どうだ!」
見事にマウントをとって見せたポームスに、ストームトルーバー達から今度は歓声が上がる。
――が、
「何を嬉々と楽しんでいる? 楽しみたいなら相手になろうか?」
今度はこちらの美人様がベスティリスと同様の視線と声音をぶつければ、一斉に視線下方四十五度凝視からの口を真一文字。
リアクションの乱高下が激しいこって……。
声を上げての落胆と歓喜。
これらが封じられてしまった以上、ただただ黙って二人の戦いを見るだけになってしまう。
マウントを取るポームスは、勝ちを確実なものとするために、ミルモンを逃がさないように左手で胸ぐらを掴み、全体重を腹部へと乗せ、振り上げる右拳を――振り下ろす。
「ぐぅ!」
もちもちホッペがモフモフの拳によって変形。
あまりにも惨たらしい。と、ベルは弱々しい表情となって目を逸らしてしまう……。
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