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天空要塞
PHASE-1589【変形したテニスボールみたい】
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「どうだ!」
勝利が自分へと傾いていると思っているからか、強く自信に満ちあふれた声音のポームス。
対して、
「ハハッ。この程度で――どうだ! とか、笑わせるね。翼幻王の側勤めなんか辞めて、ジェスターになって楽しませてあげなよ」
「なにおう!」
二発目を見舞えば、
「しめった拳で殴り続けても意味なんてないね!」
仰臥の状態、動きを制されていても強気な姿勢に変化はない。
――湿った拳って言い回しは格好良かったので、いつか俺も使わせてもらおうと思いました。
「生意気なチビめ!」
怒りのままに拳を振り下ろすポームス。
「トール。もう止めるべきだ」
「いま止めたらベルはミルモンに一生、嫌われるだろうな」
「だが、このままでは……」
まったく……。これが俺だったなら間違いなく――立て! この程度で何を心が折れることがある! ――とか言うだろうに。
余裕で脳内再生できる俺も俺だけど……。
「ミルモンを見ろよ」
「うう……」
殴られる姿は見たくないようだけども、
「ミルモンの挑む矜持を見ないのは失礼だな」
そう言えば、ちゃんと見るのがベル。
「どうよ。俺よりも圧倒的に強いベルから見て、ミルモンがどんな表情か」
「……まだ、諦めていない」
「その通り。ね、ゲッコーさん」
「ああ、ミルモンは狙っているんだろう」
圧倒的有利なポジションからのポームスの殴打。
連続で見舞われれば、もちもちホッペが大きく腫れてくる。
目の部分にも青あざ。
普段はくりくりのお目々だが、真紅の虹彩も腫れた瞼のせいで半分閉じた状態。
瞳のように赤いオールバックからなる髪型も大いに乱れている。
「やっぱり大したことないね! 最終戦はボクの勝ち。即ち結果として勇者一行の負けだよ!」
「だから、そんなしめった拳がオイラに通用するわけないだろう。お手々がモフモフだから、こっちに痛みなんて伝わってこないよ!」
「鏡で今の顔を見てから言うんだね!」
背を反らし、大きく拳を振り上げるポームス。
ミルモンの体を力任せに押さえつつ、現状の姿勢で可能な限り体のバネを利用しての一撃を見舞ってやろうという気迫が伝わってくる。
「これで終わり!」
――残念。それじゃ終わらない。
終幕となる一撃を繰り出そうと気持ちが逸ったな。
振り下ろす拳。
その威力を高めようとし、より高い位置から振り下ろそうとしたことが原因で、ミルモンを押さえていた腰が知らず知らずに浮いていた。
――戦闘経験の浅さが出たな。
その浅さをミルモンが見逃すなんてことは絶対にない。
戦いの中に身を投じてきた者なら、絶対に見逃さない。
なんたって見通す悪魔――千里眼の小悪魔だからな。
アザアル界の勲功爵はそこを好機とし、逆転の行動に出るだろう。
「フンスッ!」
はたして正にであり、腫れぼったい目をくわりと見開かせ、気合いと共に腰を突き上げれば、
「わあっ!?」
ポームスの振り下ろした拳は目標には当たらず空振り。
振り下ろす勢いも相まって、仰臥のミルモンの上で一回転し、そのままコロコロと食卓を転がる。
有利なポジションを失ってしまう。
対してマウントから解放されたミルモンは矢庭に立ち上がり、
「よくもまあしこたまオイラの顔を殴ってくれたもんだよ!」
しみったれた拳とは言うも、顔の腫れからして絶対に痛いだろうし、怒りも溜まるというもの。
鬱憤を晴らすかのように食卓を疾駆。
「なめるな!」
対するポームスもコロコロと転がりながらも素早く立ち上がり、駆けてくるミルモンを迎撃するために構える。
重心を低くし、肩幅に広げた両足は根を下ろしたような安定感がある。
不動の姿勢。
どんな攻撃でも受け止めて、後の手で仕留めるといったところか。
「そりゃ!」
疾駆からの勢いのある右ストレートを打ち込むが、両腕を前面に出して凌ぐポームス。
加速からの拳は体当たりに近いものだったが、それでもポームスは動かない。
重心が安定していると褒めるゲッコーさん。
そして――、
「そうするわな」
防ぎ、腰を落としての不動の構えから狙うのはミルモンの足。
先ほどと同様のタックルによるマウント狙い。
結果を出せているから二度目も狙いたくなるのは分かるが、戦闘経験が勝っている相手に対して実行するべきじゃない。
「二度も同じ状況を作れると思わないことだね!」
言いつつ、腰を落として飛び込んで来るポームスに対し、軽い跳躍。
体を横回転させ、回転の力を加えてからの、
「なんて綺麗なフォームによるローリングソバット」
と、俺が発せば、
「くぎゅぅ!?」
と、直ぐに痛みを伴った声が続く。
ミルモンの右足から繰り出したローリングソバットは、重心を低くしての足狙いだったポームスの顔面に直撃。
モコモコの頭部にミルモンの革靴がめり込み、その衝撃によって左方向へと飛ばされる。
水色と白からなる毛並み。
まるこいモコモコ頭部が大きく歪んだ姿は、ラケットでテニスボールを打った時に似た変形だった。
間違いなく大痛打。
綺麗な蹴撃からの着地は、勝利を確信したかのような腕組み。
コクリコがよく見せるガイナ立ちを真似、食卓に転がるポームスを見下ろす。
ボコボコになった顔ではあるが、自信に満ちあふれていた。
そして余裕は見せても先ほどのような油断はしないとばかりに、見下ろす先の相手が次はどう動くのか。と、目を離すことなく警戒も怠らない。
最初からそれが出来ていたなら、マウントなんて取られなかったんだけどな。
勝利が自分へと傾いていると思っているからか、強く自信に満ちあふれた声音のポームス。
対して、
「ハハッ。この程度で――どうだ! とか、笑わせるね。翼幻王の側勤めなんか辞めて、ジェスターになって楽しませてあげなよ」
「なにおう!」
二発目を見舞えば、
「しめった拳で殴り続けても意味なんてないね!」
仰臥の状態、動きを制されていても強気な姿勢に変化はない。
――湿った拳って言い回しは格好良かったので、いつか俺も使わせてもらおうと思いました。
「生意気なチビめ!」
怒りのままに拳を振り下ろすポームス。
「トール。もう止めるべきだ」
「いま止めたらベルはミルモンに一生、嫌われるだろうな」
「だが、このままでは……」
まったく……。これが俺だったなら間違いなく――立て! この程度で何を心が折れることがある! ――とか言うだろうに。
余裕で脳内再生できる俺も俺だけど……。
「ミルモンを見ろよ」
「うう……」
殴られる姿は見たくないようだけども、
「ミルモンの挑む矜持を見ないのは失礼だな」
そう言えば、ちゃんと見るのがベル。
「どうよ。俺よりも圧倒的に強いベルから見て、ミルモンがどんな表情か」
「……まだ、諦めていない」
「その通り。ね、ゲッコーさん」
「ああ、ミルモンは狙っているんだろう」
圧倒的有利なポジションからのポームスの殴打。
連続で見舞われれば、もちもちホッペが大きく腫れてくる。
目の部分にも青あざ。
普段はくりくりのお目々だが、真紅の虹彩も腫れた瞼のせいで半分閉じた状態。
瞳のように赤いオールバックからなる髪型も大いに乱れている。
「やっぱり大したことないね! 最終戦はボクの勝ち。即ち結果として勇者一行の負けだよ!」
「だから、そんなしめった拳がオイラに通用するわけないだろう。お手々がモフモフだから、こっちに痛みなんて伝わってこないよ!」
「鏡で今の顔を見てから言うんだね!」
背を反らし、大きく拳を振り上げるポームス。
ミルモンの体を力任せに押さえつつ、現状の姿勢で可能な限り体のバネを利用しての一撃を見舞ってやろうという気迫が伝わってくる。
「これで終わり!」
――残念。それじゃ終わらない。
終幕となる一撃を繰り出そうと気持ちが逸ったな。
振り下ろす拳。
その威力を高めようとし、より高い位置から振り下ろそうとしたことが原因で、ミルモンを押さえていた腰が知らず知らずに浮いていた。
――戦闘経験の浅さが出たな。
その浅さをミルモンが見逃すなんてことは絶対にない。
戦いの中に身を投じてきた者なら、絶対に見逃さない。
なんたって見通す悪魔――千里眼の小悪魔だからな。
アザアル界の勲功爵はそこを好機とし、逆転の行動に出るだろう。
「フンスッ!」
はたして正にであり、腫れぼったい目をくわりと見開かせ、気合いと共に腰を突き上げれば、
「わあっ!?」
ポームスの振り下ろした拳は目標には当たらず空振り。
振り下ろす勢いも相まって、仰臥のミルモンの上で一回転し、そのままコロコロと食卓を転がる。
有利なポジションを失ってしまう。
対してマウントから解放されたミルモンは矢庭に立ち上がり、
「よくもまあしこたまオイラの顔を殴ってくれたもんだよ!」
しみったれた拳とは言うも、顔の腫れからして絶対に痛いだろうし、怒りも溜まるというもの。
鬱憤を晴らすかのように食卓を疾駆。
「なめるな!」
対するポームスもコロコロと転がりながらも素早く立ち上がり、駆けてくるミルモンを迎撃するために構える。
重心を低くし、肩幅に広げた両足は根を下ろしたような安定感がある。
不動の姿勢。
どんな攻撃でも受け止めて、後の手で仕留めるといったところか。
「そりゃ!」
疾駆からの勢いのある右ストレートを打ち込むが、両腕を前面に出して凌ぐポームス。
加速からの拳は体当たりに近いものだったが、それでもポームスは動かない。
重心が安定していると褒めるゲッコーさん。
そして――、
「そうするわな」
防ぎ、腰を落としての不動の構えから狙うのはミルモンの足。
先ほどと同様のタックルによるマウント狙い。
結果を出せているから二度目も狙いたくなるのは分かるが、戦闘経験が勝っている相手に対して実行するべきじゃない。
「二度も同じ状況を作れると思わないことだね!」
言いつつ、腰を落として飛び込んで来るポームスに対し、軽い跳躍。
体を横回転させ、回転の力を加えてからの、
「なんて綺麗なフォームによるローリングソバット」
と、俺が発せば、
「くぎゅぅ!?」
と、直ぐに痛みを伴った声が続く。
ミルモンの右足から繰り出したローリングソバットは、重心を低くしての足狙いだったポームスの顔面に直撃。
モコモコの頭部にミルモンの革靴がめり込み、その衝撃によって左方向へと飛ばされる。
水色と白からなる毛並み。
まるこいモコモコ頭部が大きく歪んだ姿は、ラケットでテニスボールを打った時に似た変形だった。
間違いなく大痛打。
綺麗な蹴撃からの着地は、勝利を確信したかのような腕組み。
コクリコがよく見せるガイナ立ちを真似、食卓に転がるポームスを見下ろす。
ボコボコになった顔ではあるが、自信に満ちあふれていた。
そして余裕は見せても先ほどのような油断はしないとばかりに、見下ろす先の相手が次はどう動くのか。と、目を離すことなく警戒も怠らない。
最初からそれが出来ていたなら、マウントなんて取られなかったんだけどな。
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