異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

文字の大きさ
1,689 / 1,861
驕った創造主

PHASE-1689【それ内の商品!】

しおりを挟む
 二人して強気な笑みで見合っていれば、

「俺たちを前にして余裕がありすぎるんだよ!」

「あるのは当然よ! それほどの実力差があるのだからな!」

「ぎぃい!?」
 俺たち二人に相手にされなかったからと、お怒り気味な私兵達が整った隊伍にて一斉に攻撃を仕掛けてくるが、それを事も無げに崩すのはジージー。
 
 地面を滑空するように駆ける――のではなく、文字通り滑空。
 翅を使って地面を滑るように飛翔してから接近すれば、速度とフルプレート装備の重量を活かしての体当たり。
 そんなもんを見舞われれば練度の高い私兵でも一撃でダウン。

「そおぉぉぉら!」
 グレートヘルムからのくぐもった声。
 ほころびを見せて乱れた隊伍。立て直すことなど許さないと、むんずと首元を掴んで投げ飛ばしていく。
 十人張りを引ける腕力を持ってすれば、大の男を軽々と投げ飛ばすのもお手の物。
 ワックさんはともかくとして、宿屋から製造所までの間、巨躯なガリオンを片手で掴んで飛行してるんだからな。
 並みの体型なら綿の入ったぬいぐるみを投げ飛ばすかの如くだ。
 
 ――桁外れの強さを見せつけてくれるガリオンとジージー。
 この二人に任せているだけで全てが解決していきそうな状況。
 べらぼうな強さに対して流石に気圧されるかとも思ったけども、

「整えろ!」
 と、大したもんである。
 これだけの実力差を見せつけられながらも怯むどころか、

「滾ってやがる」

「高い戦意を維持できているのは有能な証だ」
 ここでもベルからお褒めのお言葉。
 褒めたくなるのも分かる。
 戦っているのに皆して笑みを浮かべているからな。
 強者に出会えている事に喜びを感じているようだ。

「気骨があっていいね」

「お前はどうなんだ! 冒険者!」

「やる方ですよ。貴方方が苦戦している二人から勝利を手にしていますからね」
 横隊による三位一体の刺突に対し、言葉を返しながら槍の突きを横移動で躱して一気に距離を詰め、隊伍の右側へと移動。

「どうです。横隊で横を取られた気分は?」
 真ん中と左側の動きがワンテンポ遅れちゃうからね。

「ラピッドか!」
 そう言いながら手にした槍を未練なく諸手から離せば、現在の間合いに適したショートソードへと持ち替えようとする判断の速さ。

「思い切りがいいっすね」
 と言いつつ、右ストレート。
 綺麗に顔面に入ればその場でうずくまる。
 残りの二人も同様に対応。
 ガリオンやジージーのような力強さはない地味なストレート。
 ピリア有りきなら派手に吹っ飛ばせるだろうけど、それをやると下手したら死んじゃうからね。

「コイツ等、本当に強いな」

「やりやがる」
 お褒めいただき有り難い。

「称賛を送ってないで攻撃を見舞ってやれ」
 天井付近を飛翔するソドンバアムから発破を掛けられると、私兵達は一斉に動き出す。
 今までのような三人一組による隊伍ではなく、倍の六人一組になっての行動。
 倒れた仲間達にもポーションを与えれば即座に復帰してくる。
 てことは、ハイポーションかそれ以上の代物か。
 連中が使用しているのは――白磁の小瓶。
 ――……白磁の……小瓶……。
 ――……内のギルドのヤツじゃねえか!
 ゲッコーさんが蔵元をしている酒蔵で製造されているポーションじゃねえか!
 ハダン伯が必死になって先生と交渉していたし、クルーグ商会に目を掛けていたってことだったからな。
 そういった繋がりで最低限購入した物が、ここの面子に配付されているってところか。
 私兵の中でも精鋭のようだから配られているようだ。

「よいポーションを使っているようで」

「最高の代物だよ。これを作りだした王都の連中は天才だ」
 褒めて貰えれば嬉しくもなる。
 そんでもって、ちゃんと王都産と理解もしてくれている。
 にやけていれば、何がおかしいのか? と、私兵達からは怪訝な顔を向けられた。

「貴重品だからな。あんまり消費させないでくれよ」
 とか言う辺り、まだまだ所持している模様。

「回復しても対応できないように意識を飛ばしてやらぁ!」
 悪人まる出しの語調で凄むガリオンが一足飛び。
 三人一組が六人一組になったところで、

「「うぎぃぃ……」」
 止められることなど不可能。一度のコンタクトで二人が吹き飛ばされ、

「ふんっ! ふっ! ふっ! ふんっ!」
 拳打四連撃にて残りの四人が宙を舞う。
 有言実行とばかりに六人が瞬時にして気を失い戦闘不能。

「どんだけ人数を増やして挑んだところで意味はねえよ。そもそも俺のインパルスで今以上の人数を吹っ飛ばしてんのを見ただろうが! 五十じゃ足りねえよ! 万は動員しやがれ!」
 威圧とばかりに自慢の上腕二頭筋を強調するかのようなダブルバイセップス。
 肩メロン! バミューダ三角筋! とか言ってあげたい立派な筋肉である。
 負けじとジージー。
 滑空飛行からの接近によるパワー重視のインファイト。
 ガリオンに対抗意識を持っているようで、膂力だけで私兵達を叩きのめしていく。
 ガリオンもガリオンでジージーの姿にオーラを禁じ手にしたのか、自慢の筋肉だけによるステゴロへと戦闘スタイルを変更。
 
 やはり二人だけで問題ないな。
 
 俺も活躍したかったけど、競い合うように大立ち回りをする二人の邪魔をしては悪いと思うので、見守る事にする。

「良い動きをする。連携もいい。経験もある。だが、俺を相手にするには単純に実力が足りない! 何よりも――個性が足りない!」
 集団戦を得意とする私兵達では意表を突くような奇抜な攻撃がない。
 真面目に隊伍を組んでいるだけの私兵達に躍りかかり、地面へと寝かせていく。

「いやはやガリオン殿の言は正しい」
 ジージーも同意見なようで、もっとこちらが度肝を抜くような動きを見せてほしいものだ。と、若干、小馬鹿にしていた。

「調子に乗って!」

「調子に乗らせてくれてるのはテメー等だぞ」

「然り、然り」
 ガリオンとジージーのこの返しに、無事な私兵達はお怒りモード。
 ここまで押されているのに怒りを抱くだけで後退を考えないのは根性がある証拠でもあるんだろうが、それだけが留まれる理由じゃないよな。
 奥の手ってのがあるんだろうね。
 天井付近を飛んでいるソドンバアムが大きく動かないのもそれが理由だろう。
 
 まだまだ戦える手段を隠し持ってるな。
しおりを挟む
感想 588

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...