異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

驕った創造主

PHASE－1688【波紋】

　良い連中なんだよな。
　――うむ。

「やはり話し合うのは大事だと思うんですがね。今一度、会話での解決を検討してもらえれば」

「力を示してから言うんだな。こっちを黙らせてみろよ冒険者」
　交渉するにはまずは力を見せないとってことか。

「ならば示しましょう。各自、こっちは圧倒的な力を見せないといけないので、誰一人命を奪う事なく屈服させるように！」
　言えば首肯が返ってくる。
　ガリオンは面倒くさそうだったけど。
　でもってルーフェンスさんは、

「縛に就かせてやる！」

「なにも違法な事はしていないんだがな……」
　感情まる出しのルーフェンスさんにソドンバアムは呆れ気味。
　しかも今は届かない位置にいるからね。

「下りてこい！」

「そう言われてお前は下りるのか？　騎鳥隊の隊長ならどうすれば有利に戦えるかってのを学んでいるはずだが？」
　言われて歯ぎしり。
　全くもって当たり前の事だからね。

「上ばかり見てるんじゃないぞ！」

「ほら下がって」
　むんずと襟元を掴んでから後ろに引いてやる。
　それをしなければ、ルーフェンスさんは今ごろ三人の向けてきた穂先によって串刺しだったよ。

「申し訳ありません……」

「感謝なら相手にしないと。隙だらけの相手にわざわざ声を発して攻撃したんですから」

「分かっているな冒険者。しかし精鋭である騎鳥隊も、己が足を大地へと触れさせればただの兵士だな」

「言ってくれる！」
　ソドンバアムに負けないくらいに余裕ある私兵たち。
　余裕はあっても隙は無し。
　自身の人生で培ってきた実力に裏打ちされた表情だ。
　製造所の私兵達もそこそこやり手ではあったけども、ここの面子はそれ以上のようだな。
　重要拠点に配置されているだけはある。

「次もしっかりと躱せよ！」

「躱すまでもねえよ！」

「なっ!?」
　俺たちの側面から飛び出てくる筋肉モリモリマッチョマン。
　急接近に余裕が消え去った私兵は、そのままの表情で吹き飛ぶ。
　ガリオンの拳に為す術も――、

「無く――ってことは無いな」

「あの状況でよく反応したもんだ」
　ガリオンからもお褒めの言葉。
　反応はしたけど、地面に倒れて動く事はない。
　――側面からの攻撃に対して槍の柄でガードしてきた。
　ガリオンの拳は柄を叩き割ってそのまま私兵を殴り飛ばしたけども、それでもガリオンの攻撃に対して反応しているのは素晴らしい。

「殺すなってことだから手を抜いてはいたけどな。全力なら反応することも出来ずに押っ死んでる」

「うわぁ……かっこわりいことをサラッと言いやがった……。言い訳がダセぇ……」

「じ、事実だからな！　本気だったら身動き一つ取れてねえよ！」
　必死に弁解してくるね。

「強いな。油断するなよ」
　こっちのやり取りを見ながらも冷静な語調。
　崩れないね。
　一人が勢いよくぶっ飛ばされても取り乱す事なく隊伍を整えてくる。
　一人が倒されれば、その部分を直ぐに後衛が補填し、三人一組となる。

「狙え！」
　の、発言から二間槍による同時攻撃。

「大したもんだがな！」
　余裕あるガリオンはオーラを足だけに纏わせ――回し蹴り。

「ぬぉ!?」
　同時に狙ってきた刺突だったが、穂を固定する口金部分に回し蹴りが入れば、穂だけが柄から切り離される。
　地面へと落下し三つの金属音が響く。
　気圧される事はなくても、この芸当には驚愕していた。

「なんだコイツ。強いのは最初の一撃で理解していたが予想以上だ。包囲しろ！」
　数は有利。だからこそ囲んでから狙う。
　槍を失っても人員同様、後方から直ぐに槍が補充される。

「いいね。いつまでその胆力が保つのか見ものだな。そして心をへし折った後の姿も見ものだろうな」
　悪役まる出しの笑みを浮かべるガリオン……。

「調子に乗らないように」
　釘を刺せば、

「調子に乗るなよ！」
　と、上方からも同様の発言。
　俺と違ってガリオンを思ってのものとは違うけども。
　レッサーワイバーンと名付けられた合成獣が急降下。
　降下速度を利用してからの――手槍の投擲を行えば急上昇。

「速いが他愛なし」
　躱さずにキャッチするも、そこを狙って三人一組三編制による包囲からの刺突。

「ふんっ！」
　回避を選択せず、その場で地面を強く一度だけ踏みつけるガリオン。

「「「「ぬぉおわっ!?」」」」
　刺突を仕掛けた九人の私兵が後方へと吹き飛ぶ。

「おお！　すげぇ！　初めて見た」

「初めて見せたからな」
　踏みつけた箇所から発生したのはオーラによる波紋。
　地面を踏みつけた足を中心としてオーラが放射状に広がり、私兵達の足元に到達したと同時に後方へと吹き飛ばす。

「加減はしてやった。本来なら衝撃で全身の骨が砕けていただろうさ」
　得意げに言う辺り、本気なら致命傷を与えることも可能な技のようだ。

「名前は？」

「アンリッシュ・インパルスと名付けている」
　ワンショット、バラッジに続く新たなる放出系の技はインパルス。

「生きているうちは成長って感じなことを言っていただけあって、おっさんなのに伸びしろがある」

「当然だ！　俺はまだまだ強くなる。お前よりもな小僧」

「言ってろよ。俺は更に先を行くからさ」
　お互いに強気な笑みをぶつけ合う。
　触発される相手がいるのはいい。現状より上を目指すための起爆剤となってくれるからね。