異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1687【レッサーですらない】

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「見ろ。騎鳥隊として何を思ってここに来たのかをまともに口にする事もなく虚言を吐き、こちらを悪と認定する。不条理この上ないコイツ等こそ悪と判断するべきだな」
 ソドンバアムのもっともな発言に私兵達も首肯。
 そっちの騎鳥隊隊長が先に抜いたのだからと、手にした槍の穂先をこちらへと全方位から向けてくる。

「残念だ冒険者。演舞の時には良い関係が築けると思ったんだがな」

「ここに来るまでにも言われましたよ」

「そうか……」
 おっと。声のトーンが下がったな。

「命は奪っていないので」

「そうか!」
 喜んでくれて何より。
 仲間思いの良い人物ではあると思うんだよな。ソドンバアムって。

「話し合いでなんとかなりませんかね?」

「ここへと侵入した者達と話し合いだけで解決するというのは流石に無理があるだろう」

「そうですか。では――」

「戦わないとな。護衛や防衛。そして侵入者を撃退するってのが俺たち私兵の仕事。それで良い給金をもらってんだからよ」
 言えばソドンバアムがショートソードの柄に手を添えて、次には抜剣。
 切っ先をこちらへと向けてくれば、

「撃退せよ。相手は同胞に手心を加えてくれたようだが、俺たちは加減をする必要はない。抵抗するのならば命を奪う事もやむなし!」

「「「「オウッ!!!!」」」」

「気合い入ってんな」

「士気の高い者達は総じて強い」

「だな。ならその士気ってのをへし折ってやろうぜ」

「無論だ」
 隊伍を組みつつ俺とベルが先頭に立つ。

「おいおい……。舞姫を前に出すのか――いや、ここへと来ている時点で、麗しき舞姫も妖艶に踊るだけの存在じゃないんだろうな」

「試してみるといい」

「試すなら剣戟じゃなく寝室がいいんだけどな」

「不敬不遜だなソドンバアム!」

「横からしゃしゃるなよルーフェンス」

「騎鳥隊の恥は騎鳥隊が解決する!」
 俺とベルよりも更に前へと出るルーフェンスさん。

「リレントレス・アウルもいない状態で何をほざいているんだか。騎鳥隊は空を制してこそだろうに」

「それはお前も一緒だろう」

「一緒じゃねえよ」
 そう言ってソドンバアムは拇指と食指で輪を作ってから咥える。
 ピィィィィィ――と、円形闘技場に響く指笛。
 天井のある円形闘技場内を指笛が反響すれば、

「ギィィィィィィィ」
 建て付けの悪いドアの開閉音のような嗄声させいが、指笛の音と入れ替わるように場に反響する。
 
 次には、

「また随分とへんてこなのが出てきたな……」

「変なのとはひどいな冒険者。レッサーワイバーンだ」

「どこが!」
 何処をどう見たらワイバーンなんだよ。
 レッサーって頭についているから、亜種だったりワンランク下の扱いで見たとしても――、

「無理がある。ワイバーンはふかしすぎだ」
 
「そうか? 飛行能力ならリレントレス・アウルに引けを取らないんだぞコイツは」
 この一言にルーフェンスさんはこめかみに血管を浮き上がらせる。
 血管内をワームが移動しているかのように激しく脈動させていた。
 怒りの視線もどこ吹く風とばかりに、指笛に従ったレッサーワイバーンと呼称した生物の中心部分に設けてある鞍へと腰を落とす。
 主が乗りやすいように蜷局を巻く姿は完全に蛇。
 ワイバーンと違って前脚も無ければ後脚もない。
 灰色の鱗を持った大蛇に、同色からなるコウモリの羽をくっつけた生物だった。

「どういった生物を合成したんです?」

「ルーフェンスと違って冒険者は冷静そのものだな。それだけ場数を踏んでいるってことでもあるんだろう。面構えも違う」

「どうも」

「俺も詳しくは知らんが、毒蛇のキングリンカルスってのと、吸血大コウモリのマレ・リリアックってのから創り出したそうだ」
 毒蛇と吸血大コウモリか。
 主には従順みたいだけど、対峙する俺たちは敵視しているようで、蜷局を巻いたまま鎌首を上げれば、首の部分のフードをコブラのように広げ、大きく口を開いて威嚇。
 上顎には弧を描いたナイフサイズの牙が二本。
 攻撃性が高い大型の合成獣自体も脅威だ。

「ルーフェンスさんは他の私兵の相手をお願いします」

「嫌です」

「あ、はい……」

「騎鳥もしていないのに挑もうとするのは蛮勇。冒険者の冷静さがお前には必要だぞルーフェンス」

「黙れソドンバアム!」
 手にした剣を左手に持ち替え、右手には背負っていた手槍を握る。
 そして穂先を対象へと向けて助走をつけてからの――投擲。
 空中から手槍を投げるのが戦闘スタイルということもあってか技量は卓抜。
 槍は風切り音を発しながら勢いよくソドンバアムへと飛んでいく。

「怖い怖い」
 余裕ある発言で手綱を引けば、蜷局を巻いた尾だけを伸ばし、飛んでくる手槍を簡単にはたき落とす。

「どうだ。リレントレス・アウルでは出来ない芸当だろう」

「ぬかせ!」
 怒りにまかせて右手に剣を持てば、そのまま勢いよく突っ込んでいく。
 やれやれとばかりに肩を竦めながらもソドンバアムが手綱を軽く振り、それを合図にコウモリの羽を羽ばたかせる。
 突風を受けて駆ける勢いが削がれるも、それでも前へと突き進むルーフェンスさん。

「昔のよしみで俺が手ずから仕留めてやる」

「こっちの台詞だソドンバアム!」
 宙へと舞う羽のついた大蛇。

「よっし! 皆、撃退開始だ! ただし舞姫だけは傷をつけないように! 舞姫も戦うつもりのようだが、こちらは危害を与えることなく拘束だけに専念せよ!」

「自分たちが良い思いをしたいっていう下心からの考えなら無理な話ですよ」

「違うさ冒険者。システトル殿の情婦に手をつけたとなれば、こちらがこの領地で生きていけない。舞姫を安全に保護するだけだ」

「へ~真っ当ですね」

「真っ当だっての」
 ソドンバアムの今の発言からして、製造所内で老公を含めたお偉いさん達が襲われていた事を本当に知らないようだ。
 
 モーリスのおっさんたち同様、ここの私兵達もカイメラにいい様に使われているだけのようだな。
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