1,698 / 1,861
驕った創造主
PHASE-1698【白衣と再会】
しおりを挟む
地下施設の広大さに感心している中、俺が戦闘中に話していたことをちゃんと覚えてくれていたようで、居住区画の内部にゴーレムとクリエイトを封じたスクロールがまだ残されているとソドンバアムが教えてくれる。
喜ばしい情報だ。
絶対にゲットさせていただく。
――大人数を引き連れて通路へと足を踏み入れる。
横幅が十メートルはある広い通路。
人間サイズ以外の存在もここを利用していると考えていいだろう。
「止まれ!」
「あれが白衣連中直属の私兵達ですか」
「そうです」
道を守るように立つ五人の私兵の装備は他の私兵と同様だが、手にする二間槍の構え方が今までの連中と比べると様になっていない。
締めることなく開いた脇。
若干、及び腰な姿勢。
構えから伝わってくるのは、素人ではないが練度は備わっていないというもの。
連携を旨とする兵士としては中の下ってところだな。
ソドンバアムや一緒に行動している私兵は眼前のと比べれば上の上ってのが分かる。
白衣連中直属の私兵は自分たちよりも劣るとソドンバアムも言っていたが、それがよく分かる構えだ。
「なんだ大仰な! お前達が許可無く入れるのは闘技場までだろう。ここより先に用があるならソドンバアムと数人だけにしてもらいたい」
「では、その数人に自分たちを入れてもらいたいですね」
「なんだコイツは?」
「ムアー殿とは顔見知りなんですよ」
「適当な事を言うな! お前のような小僧が知り合いなわけないだろう!」
って言ってくるあたり、この私兵達は俺達とは面識がないってのが分かった。
「ここに来ている時点で、何かしらの理由があるってのは分かると思うんですけどね。警備責任者を連れてくるという考えは?」
「許可の無いものを通すわけにはいかない! 失せろ頭のおかしい小僧!」
意地でも通そうとしない姿勢は優秀。最後の発言はムカついたけど。
なので、
「キョカノナイモノヲトオスワケニハ、フヘッヘ――」
思いっきり煽ってやれば、
「ふざけたヤツめっ!」
鼻先まで突きつけられる穂先。
「何事だ!」
お、新たな人物登場。
これで数は六人。
――説明を守衛から簡潔に聞けば、こちらへと向けてくるのは鋭い眼差し。
「何者だ。許可が無ければ通せないぞ」
これまた同様のリアクション。
守衛から説明を受けて尚、一緒。
埒が明かないので――、
「十四階のブレバンズさんにデリバリーを」
「はぁ?」
「ほっ!」
小気味よく一足飛び。
面子の中でリーダー的な存在であろう六人目の懐へと入り込み、
「はぁ!?」
驚くところに拳を下から突き上げて顎に打ち込んでやる。
「拳のデリバリーをね」
宙を舞う一人に驚く五人。
はたとなって反撃――ということも許さないとばかりに、ベル、ガリオン、ジージー。そしてルーフェンスさんとソドンバアムがきっちりとテイクダウン。
内のメンバー三人は当然だけども、騎鳥隊隊長と元隊長も見事な絞め技でダウンさせた。
回り込んでからのチョークスリーパーによるダウンだった。
同じ所属で同じ訓練を行ってきたからだろう。構えと仕掛ける動きはそっくりだった。
「これでお前は完全に裏切り者だなソドンバアム」
「俺は裏切ってねえよ。今から会いに行く連中が商会を裏切ってんだからよ」
「それは――そう」
なんなのルーフェンスさん。それは――そうってのは口癖なんですかい?
「行きましょう勇者様。こうなれば大立ち回りをお見せしますよ! なあ皆!」
「「「「オウッ!!!!」」」」
ソドンバアムが音頭を取れば、野太くて頼りになる声が俺の背中に届く。
練度の高い私兵が五十人。
大いに頼らせていただこう。
まあ、殆どは俺たちが対応するつもりだけども。
――ソドンバアムによって開かれる鉄扉から続く通路をわずかに進めば、広い敷地。
上の洋館に酷似した建築物も見える。
どんだけ地下に広大な施設を造ってんだか。
そして――、
「この様な場所へわざわざお越しくださるとは――招待はしておりませんがね。どちら様かな?」
洋館の正面玄関前に立った存在からの誰何。
聞き覚えのある声には皮肉が含まれていた。
声の主の風貌――痩せ細った不健康そうな体。
伸びきって乱れた金髪と無精ヒゲ。やや垂れた目の中央にはくすんだ青い虹彩からなる瞳。
会場にいた時と同じ笑みを見せてくるけども、皮肉交じりの声にはわずかながらに――、
「焦りが見えますね。我々が無事だったからでしょうか?」
「ん? おお!? これは冒険者殿じゃないですか。出で立ちがなんとも立派になられ……て……?」
俺を見れば、作り笑いが引きつったものに変わる。
「その出で立ち……」
引きつった笑みからギリリッと響く歯の軋る音。
「あまり強く噛みしめると歯がボロボロになりますよ」
「申し訳ありませんね。なんとも不愉快な展開ですので。新人冒険者殿はまさかの勇者様であり、ミルド領公爵であらせられるトール様ではないですか?」
「そうですよ」
簡素に返せばムアーの周囲では響めきが生まれる。
直属の私兵達は困惑気味。
「堂々と言い切りましたね。よもやこの様な場所に勇者様が……」
「いやいや貴男ほどの知性がある方なら、こういった展開は予想できていたでしょう?」
開発や研究なんかに秀でた知能はあっても、戦略、術には長けていないから予測は難しかったかな?
製造所内でのお偉いさんたち襲撃の失敗も未だ把握していないようだし。
喜ばしい情報だ。
絶対にゲットさせていただく。
――大人数を引き連れて通路へと足を踏み入れる。
横幅が十メートルはある広い通路。
人間サイズ以外の存在もここを利用していると考えていいだろう。
「止まれ!」
「あれが白衣連中直属の私兵達ですか」
「そうです」
道を守るように立つ五人の私兵の装備は他の私兵と同様だが、手にする二間槍の構え方が今までの連中と比べると様になっていない。
締めることなく開いた脇。
若干、及び腰な姿勢。
構えから伝わってくるのは、素人ではないが練度は備わっていないというもの。
連携を旨とする兵士としては中の下ってところだな。
ソドンバアムや一緒に行動している私兵は眼前のと比べれば上の上ってのが分かる。
白衣連中直属の私兵は自分たちよりも劣るとソドンバアムも言っていたが、それがよく分かる構えだ。
「なんだ大仰な! お前達が許可無く入れるのは闘技場までだろう。ここより先に用があるならソドンバアムと数人だけにしてもらいたい」
「では、その数人に自分たちを入れてもらいたいですね」
「なんだコイツは?」
「ムアー殿とは顔見知りなんですよ」
「適当な事を言うな! お前のような小僧が知り合いなわけないだろう!」
って言ってくるあたり、この私兵達は俺達とは面識がないってのが分かった。
「ここに来ている時点で、何かしらの理由があるってのは分かると思うんですけどね。警備責任者を連れてくるという考えは?」
「許可の無いものを通すわけにはいかない! 失せろ頭のおかしい小僧!」
意地でも通そうとしない姿勢は優秀。最後の発言はムカついたけど。
なので、
「キョカノナイモノヲトオスワケニハ、フヘッヘ――」
思いっきり煽ってやれば、
「ふざけたヤツめっ!」
鼻先まで突きつけられる穂先。
「何事だ!」
お、新たな人物登場。
これで数は六人。
――説明を守衛から簡潔に聞けば、こちらへと向けてくるのは鋭い眼差し。
「何者だ。許可が無ければ通せないぞ」
これまた同様のリアクション。
守衛から説明を受けて尚、一緒。
埒が明かないので――、
「十四階のブレバンズさんにデリバリーを」
「はぁ?」
「ほっ!」
小気味よく一足飛び。
面子の中でリーダー的な存在であろう六人目の懐へと入り込み、
「はぁ!?」
驚くところに拳を下から突き上げて顎に打ち込んでやる。
「拳のデリバリーをね」
宙を舞う一人に驚く五人。
はたとなって反撃――ということも許さないとばかりに、ベル、ガリオン、ジージー。そしてルーフェンスさんとソドンバアムがきっちりとテイクダウン。
内のメンバー三人は当然だけども、騎鳥隊隊長と元隊長も見事な絞め技でダウンさせた。
回り込んでからのチョークスリーパーによるダウンだった。
同じ所属で同じ訓練を行ってきたからだろう。構えと仕掛ける動きはそっくりだった。
「これでお前は完全に裏切り者だなソドンバアム」
「俺は裏切ってねえよ。今から会いに行く連中が商会を裏切ってんだからよ」
「それは――そう」
なんなのルーフェンスさん。それは――そうってのは口癖なんですかい?
「行きましょう勇者様。こうなれば大立ち回りをお見せしますよ! なあ皆!」
「「「「オウッ!!!!」」」」
ソドンバアムが音頭を取れば、野太くて頼りになる声が俺の背中に届く。
練度の高い私兵が五十人。
大いに頼らせていただこう。
まあ、殆どは俺たちが対応するつもりだけども。
――ソドンバアムによって開かれる鉄扉から続く通路をわずかに進めば、広い敷地。
上の洋館に酷似した建築物も見える。
どんだけ地下に広大な施設を造ってんだか。
そして――、
「この様な場所へわざわざお越しくださるとは――招待はしておりませんがね。どちら様かな?」
洋館の正面玄関前に立った存在からの誰何。
聞き覚えのある声には皮肉が含まれていた。
声の主の風貌――痩せ細った不健康そうな体。
伸びきって乱れた金髪と無精ヒゲ。やや垂れた目の中央にはくすんだ青い虹彩からなる瞳。
会場にいた時と同じ笑みを見せてくるけども、皮肉交じりの声にはわずかながらに――、
「焦りが見えますね。我々が無事だったからでしょうか?」
「ん? おお!? これは冒険者殿じゃないですか。出で立ちがなんとも立派になられ……て……?」
俺を見れば、作り笑いが引きつったものに変わる。
「その出で立ち……」
引きつった笑みからギリリッと響く歯の軋る音。
「あまり強く噛みしめると歯がボロボロになりますよ」
「申し訳ありませんね。なんとも不愉快な展開ですので。新人冒険者殿はまさかの勇者様であり、ミルド領公爵であらせられるトール様ではないですか?」
「そうですよ」
簡素に返せばムアーの周囲では響めきが生まれる。
直属の私兵達は困惑気味。
「堂々と言い切りましたね。よもやこの様な場所に勇者様が……」
「いやいや貴男ほどの知性がある方なら、こういった展開は予想できていたでしょう?」
開発や研究なんかに秀でた知能はあっても、戦略、術には長けていないから予測は難しかったかな?
製造所内でのお偉いさんたち襲撃の失敗も未だ把握していないようだし。
2
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる