異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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驕った創造主

PHASE-1698【白衣と再会】

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 地下施設の広大さに感心している中、俺が戦闘中に話していたことをちゃんと覚えてくれていたようで、居住区画の内部にゴーレムとクリエイトを封じたスクロールがまだ残されているとソドンバアムが教えてくれる。
 喜ばしい情報だ。
 絶対にゲットさせていただく。

 ――大人数を引き連れて通路へと足を踏み入れる。
 横幅が十メートルはある広い通路。
 人間サイズ以外の存在もここを利用していると考えていいだろう。

「止まれ!」

「あれが白衣連中直属の私兵達ですか」

「そうです」
 道を守るように立つ五人の私兵の装備は他の私兵と同様だが、手にする二間槍の構え方が今までの連中と比べると様になっていない。
 締めることなく開いた脇。
 若干、及び腰な姿勢。
 構えから伝わってくるのは、素人ではないが練度は備わっていないというもの。
 連携を旨とする兵士としては中の下ってところだな。
 ソドンバアムや一緒に行動している私兵は眼前のと比べれば上の上ってのが分かる。
 白衣連中直属の私兵は自分たちよりも劣るとソドンバアムも言っていたが、それがよく分かる構えだ。

「なんだ大仰な! お前達が許可無く入れるのは闘技場までだろう。ここより先に用があるならソドンバアムと数人だけにしてもらいたい」

「では、その数人に自分たちを入れてもらいたいですね」

「なんだコイツは?」

「ムアー殿とは顔見知りなんですよ」

「適当な事を言うな! お前のような小僧が知り合いなわけないだろう!」
 って言ってくるあたり、この私兵達は俺達とは面識がないってのが分かった。

「ここに来ている時点で、何かしらの理由があるってのは分かると思うんですけどね。警備責任者を連れてくるという考えは?」

「許可の無いものを通すわけにはいかない! 失せろ頭のおかしい小僧!」
 意地でも通そうとしない姿勢は優秀。最後の発言はムカついたけど。

 なので、

「キョカノナイモノヲトオスワケニハ、フヘッヘ――」
 思いっきり煽ってやれば、

「ふざけたヤツめっ!」
 鼻先まで突きつけられる穂先。

「何事だ!」
 お、新たな人物登場。
 これで数は六人。

 ――説明を守衛から簡潔に聞けば、こちらへと向けてくるのは鋭い眼差し。

「何者だ。許可が無ければ通せないぞ」
 これまた同様のリアクション。
 守衛から説明を受けて尚、一緒。
 
 埒が明かないので――、

「十四階のブレバンズさんにデリバリーを」

「はぁ?」

「ほっ!」
 小気味よく一足飛び。
 面子の中でリーダー的な存在であろう六人目の懐へと入り込み、

「はぁ!?」
 驚くところに拳を下から突き上げて顎に打ち込んでやる。

「拳のデリバリーをね」
 宙を舞う一人に驚く五人。
 はたとなって反撃――ということも許さないとばかりに、ベル、ガリオン、ジージー。そしてルーフェンスさんとソドンバアムがきっちりとテイクダウン。
 内のメンバー三人は当然だけども、騎鳥隊隊長と元隊長も見事な絞め技でダウンさせた。
 回り込んでからのチョークスリーパーによるダウンだった。
 同じ所属で同じ訓練を行ってきたからだろう。構えと仕掛ける動きはそっくりだった。

「これでお前は完全に裏切り者だなソドンバアム」

「俺は裏切ってねえよ。今から会いに行く連中が商会を裏切ってんだからよ」

「それは――そう」
 なんなのルーフェンスさん。それは――そうってのは口癖なんですかい?

「行きましょう勇者様。こうなれば大立ち回りをお見せしますよ! なあ皆!」

「「「「オウッ!!!!」」」」
 ソドンバアムが音頭を取れば、野太くて頼りになる声が俺の背中に届く。
 練度の高い私兵が五十人。
 大いに頼らせていただこう。
 まあ、殆どは俺たちが対応するつもりだけども。
 
――ソドンバアムによって開かれる鉄扉から続く通路をわずかに進めば、広い敷地。
 上の洋館に酷似した建築物も見える。
 どんだけ地下に広大な施設を造ってんだか。

 そして――、

「この様な場所へわざわざお越しくださるとは――招待はしておりませんがね。どちら様かな?」
 洋館の正面玄関前に立った存在からの誰何。
 聞き覚えのある声には皮肉が含まれていた。
 声の主の風貌――痩せ細った不健康そうな体。
 伸びきって乱れた金髪と無精ヒゲ。やや垂れた目の中央にはくすんだ青い虹彩からなる瞳。
 会場にいた時と同じ笑みを見せてくるけども、皮肉交じりの声にはわずかながらに――、

「焦りが見えますね。我々が無事だったからでしょうか?」

「ん? おお!? これは冒険者殿じゃないですか。出で立ちがなんとも立派になられ……て……?」
 俺を見れば、作り笑いが引きつったものに変わる。

「その出で立ち……」
 引きつった笑みからギリリッと響く歯の軋る音。

「あまり強く噛みしめると歯がボロボロになりますよ」

「申し訳ありませんね。なんとも不愉快な展開ですので。新人冒険者殿はまさかの勇者様であり、ミルド領公爵であらせられるトール様ではないですか?」

「そうですよ」
 簡素に返せばムアーの周囲では響めきが生まれる。
 直属の私兵達は困惑気味。

「堂々と言い切りましたね。よもやこの様な場所に勇者様が……」

「いやいや貴男ほどの知性がある方なら、こういった展開は予想できていたでしょう?」
 開発や研究なんかに秀でた知能はあっても、戦略、術には長けていないから予測は難しかったかな?
 製造所内でのお偉いさんたち襲撃の失敗も未だ把握していないようだし。
 
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