異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1697【技術だけは凄い】

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「はいはい」
 言い合いを続ける騎鳥隊隊長と元隊長の間に割って入る。
 ジージーへと顔を向ければ、委細承知とルーフェンスさんを無理矢理に引き剥がしてくれる。

「ルーフェンスさんが言うように、よからぬ事を考えているって事ではないんですよね?」

「無論でございます」

「信じてもいいだろう」
 ここでベルが助け船。

「クルーグ商会の心証を悪くしないためにも、ここは我々に協力する事が賢い選択なのだろうからな」

「その通りです」
 白衣組――つまりはカイメラの考えには荷担しないし、していない。知らない。
 クルーグ商会が危険な組織ではないという事をこちらに協力する事で示し、勇者であり公爵のトールから信頼を得たいのだ。と、ベルが推測。

「どうでしょうか?」
 最終決定権は俺が有しているということから、俺へと判断を委ねてくるソドンバアム。
 他の私兵達も続くように俺へと視線を注いでくる。

「ここにいる私兵全員を伴っての行動――いいんじゃないですか。そもそも心証が良くなれば尚良しって俺から振ってますしね」
 即答。
 コレには私兵サイドは目を丸くする。
 熟考も逡巡もすることのない即答だったから面を喰らっていた。

「本当によろしいので?」

「ええ。ちょっとの付き合いでしたが、私兵の方々の人となりってのは理解していますし、戦いの最中にもこっちを気づかってくれましたからね。侵入者に対しての気づかいは行き過ぎではあるとは思いますが、それでも気づかいを受ける側としては好印象」
 甘ちゃん連中と言えばそれまでだが、嫌いにはなれないよね。
 甘ちゃんではあるけど、統率が取れてて強いのは事実。
 案内役だけでなく、味方として組み込んだ方がこっちとしても今後が楽になる。

「裏切るかもしれねえぞ」

「裏切るようならガリオンが制裁を加えてくれよ」

「お、そうか!」
 おかしな動きをすればどうなるか分かっているだろうな? と、睨みを利かせつつ、

「見る目が無かったことに対して、きっちりと制裁を加えてやるよ」
 と、右目を俺に合わせて言ってくる。

「へいへい、良いですよ。俺がこの筋肉パンパンおっさんに制裁を喰らわないためにも、背後から俺達を狙わないでくださいね」

「その様な愚行は起こしません」
 クルーグ商会の為にも、公爵と王都の面々を敵に回すなど考えられないとソドンバアム。

「ふむん」

「どうされました」

「敵に回すなんて考えられないってのは当然の発言ですよね」

「は、はい」
 なにを当たり前のことを――と首を傾げてみせるソドンバアム。
 ここの私兵達の考え方は当たり前なんだよな。
 でも、カイメラの連中は違う。
 ロイル領のお偉いさん達の命を奪おうとした行為。
 蛮行が知れ渡ればハダン伯を敵に回すし、この大陸全体も敵に回すことになる。
 そういった事になってもいいと思うほどに強大な力を手に入れているという事になるのだろうか?
 となれば――やはりゴロ太がキーパーソンになり得るってことなんだろうな。

「ゴロ太って一体なんなんだろうな」

「愛らしい。世界の中心だ」

「あ、はい」
 真顔で言うね。なんでここでポンコツモードを垣間見せるような発言が出来るのだろうか……。

「気を引き締めて――案内お願いします」

「喜んで」
 私兵五十名が仲間になった。
 笑顔のソドンバアムにルーフェンスさんはまだまだ納得はしていない模様。
 それでも案内役は必要だから仕方ないことだ。と、自分に言い聞かせていた。
 
 ――足を進める中で、

「この円形闘技場ではやはり合成獣の実験を?」

「はい。どの程度の戦闘力を有しているかなどの試験も行っていました」
 その為、私兵達が集団で戦うということもあるそうだ。
 その中でも一番の脅威だったのはムアーが肝いりで生み出したというバジリスク・イミテイトだったという。
 一頭に対して私兵が二十人で挑んでなんとか互角だったそうな。
 
 試験的なことから、バジリスク・イミテイトはマジックカーヴによる魔法を使用せず、巨体を活かした戦闘に限定されていたという。
 魔法有りきなら二十人で挑んでも太刀打ち出来ないとのことだった。
 
 連携が卓抜なやり手のソドンバアム達が二十人で挑んでも太刀打ち出来ないレベルとなれば厄介な相手だな。
 
 あれだけ大々的にお披露目したんだからムアーにとって一番のお気に入りってとこか。
 ならば厩舎にそのまま放置してこの地から離れるってのは考えられないから、やはりまだこの場に残っているようだな。

「ここに残って何をやっているのやら」
 製造所ではお偉方の命を狙っていた。
 これが成功したとしても一日もすれば製造所の外で待機しているであろう使用人なんかに怪しまれるからね。
 そうなれば駐屯兵も動く。
 一両日中にはこの場より撤退しないとロイル領全体から追われることになるだろうからな。
 それでも問題ないほどの力を有しているからこそゆとりを持った行動なんだろう。

「会ってみれば全て分かるか」

「この闘技場から真っ直ぐ伸びた通路を進めば、大広間を有した開発者専用の居住区画となります」

「はへ~」
 感心してしまう。
 地下にこれだけ大規模なものを建造しておいて、更に自分たちの居住区画までこさえているなんてね。
 悪道を歩んでいるが、そういったことを実行できる技術力を有していることには素直に感心してしまう。
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