異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1713【大水槽】

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 さて、不意打ちマジックカーヴは失敗したようだけども、

「不意打ち氷塊でネタ切れか? ここには伏兵もいないようだし。お前一人だぞ。ぼっちによる最終戦が始まるぞ」

「一人ではない! ジュニアもいれば、頼りになるのはまだまだいる」

「へ~。まだ隠し球があんのかよ」
 こちらのメンバーが揃ったところで見渡す。

「また広間か。どんだけこういった空間を地下に造ってんだよ。アリの巣か」

「アリの巣か。確かにな。凡愚な勇者としては良い例えだ」

「そいつはどうも」

「今後もこのような拠点は築いていくつもりだからな。アリの巣という呼称を採用させてもらおう」

「それは叶わないね」

「いや、成就させる。貴様等をここで終わらせてな!」

「出来ない事は言うなよ。隠し球があろうとも、これまでの手合いを見る限り、お前等の生み出したレベルならこちらは対応できるってもんだ」

「言ってくれる!」

「声が荒くなるのは馬鹿にされたからか、それとも正鵠を射ているからか」

「前者だ!」
 次の隠し球にはよほど自信があるようで。

「次から次へと戦力を投入しようともきっちりと仕留めてやる。そして多くの犠牲者の為、お前には生き地獄を味合わせてやるからな!」

「生き地獄は御免こうむるので、代わりに貴様等を地獄へと送ってやろう。私の最高傑作でな!」

「私達ではなく私の――になったな。これまで共に励んできた白衣連中も残念がるだろうよ」

「う、うるさい! 私の叡智さえ無事ならば何度でも巻き返せるというもの!」
 実際、コイツを逃せば間違いなく災厄を生み出してしまうからな。
 最高傑作と言うだけあって勝てる算段がある。
 だからバルバダイは踏み留まっているんだろうな。

「バジリスク・イミテイトじゃ意味ないぞ」

「あいつらはあいつらで有能だが、私の切り札とはなり得ない」

「お、そうか」

「余裕だな」

「最高傑作ってのを完膚なきまでに倒せば、お前も現実を知る事になるだろうからな」

「本当に生意気な凡愚だ」

「その凡愚が絶望を教えてやる」
 大胆不敵な笑みを顔に貼り付けてやれば、バルバダイも負けじとこちらへ見下すような嘲笑を向けてくる。
 殺意がMAXなベルもいるというのにあの余裕。
 本当の本当に切り札を投入してくるようだ。

 大切に抱いているゴロ太。
 そしてバルバダイから離れようとしないゴロ太。
 殺意MAXであってもゴロ太が離れないでいればベルも対応できない。
 だからこそ苛立っているのがヒシヒシと伝わってくる。
 
 バルバダイが見下し口調でこちらに言葉をぶつけてきている時点でガリオンが何かしらの毒を吐くはずだが、それをしないのはベルの苛立ちに緊張しているからだろう。
 ワックさんとジージーもベルに当てられている。

「落ち着けよ。感情むき出しのままだと、強者であっても躓くぞ」

「成長しているとはいえ、私に助言できるほどトールの実力は高いのか?」

「ベルと比べれば実力なんて無いようなもんだけど、ベルよりは冷静だ。全体を見ることが出来ているからな」
 実際、この場にいる全員に目を向けているのは俺くらいなもんだ。
 ベルは仲間がいまどんな顔をしているか見えていないだろう? そう問えば、

「確かに。トールのように周囲に気を配っていないのは事実だ」
 素直に反省。わりかし冷静ではある。
 
 まあ、

「相手に先手の権利を握らせているのは腹立たしい限りだけどな」

「まったくだ」
 ブーステッドからのアクセル。
 もしくはベルの高速移動。
 これで対応が可能かとなれば、可能だけども、俺たちが目の前から消えた時点でその隙にゴロ太に危害が及ぶ可能性もゼロじゃない。
 ゼロじゃない時点でそんなリスクを背負いたくないのは俺もベルも同意見。
 イニシアチブはバルバダイにある。
 この場にゲッコーさんかS級さん達がいれば難なく解決って結末でもあったんだろうけどな……。
 いない人物達に頼っても仕方ない。
 
「偉大なる叡智の持ち主」

「良い呼び方だ。なにかな?」

「さっさとご自慢の最高傑作ってので俺たちの度肝を抜いて見せろよ」
 先手の主導権を持つ者にこちらから促せば、

「よかろう」
 乗ってくる。
 見せてやろうとばかりにオーバーリアクションによる動き。
 白衣をマントのようにバサリと音を立てて靡かせれば、それが合図とばかりに広間の床が競り上がってくる。
 
 バルバダイが立つ側で競り上がってくる床はゴゴゴゴ――ッ! っという音はなく、摩擦の抵抗を感じさせることなく無音で競り上がってくる。
 広間中心で競り上がってくる床は十畳ほど。

「デカいな……」
 競り上がった床の下方は透明な大水槽。
 水槽内は水色の液体で満たされていた。
 
 当然ながら、

「ウネウネしたのが入ってるな……」
 大型のアローンガットを思わせる物体が液体の中で無数の触手をたゆたわせている。

「ご自慢の切り札はまた腸の化け物か?」

「いや違う。私の救世主はジュニアだけではないのだ」

「その触手の化け物も救世主か?」

「そうだ。そして化け物と呼ばないでもらいたいな! この造形美が分からんとは!」

「分からねえよ。そんな――ああっと、クラゲのような化け物」

「だから化け物と言うな!」

「触手の多い巨大な生物はどう見ても化け物なんだよ」

「触手の多さを不気味としか判断できない知性の低さよ」

「何回も何回も知性が低いだの凡愚だのと言いやがって」

「事実だろう」
 多くの触手――腕を有するということは、それだけで人間以上のことをこなせる。
 多数の腕を同時に自由自在に使えるということは、それだけで人間以上の知能を有することも可能な証拠。
 化け物ではなく神々しい存在だ! と、胸を張って言い切る。
 余程の自信作ってことか。

「バルバダイが言うように最高傑作のようだな」

「然り!」
 あえて個人名だけで言えば、仲間達との集大成なんて言い返すこともなく素直に受け入れる辺り、コイツにとって他の白衣連中は私兵たち同様、利用するだけの価値しかないようだな。
 
 自分の叡智さえ無事ならって言っていたしな。
 コイツにとって自分以外は、全てが利用するだけの愚者にしか見えていないんだろう。
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