1,751 / 1,861
驕った創造主
PHASE-1751【ぶれないね……】
しおりを挟む
「それで――地下牢の場所は? この詰所の地下にあったりします?」
「ございます。会いますか?」
「会ってみましょう。見下した笑いを向けたいので」
「性格悪いな」
「とか言うガリオンも悪い笑みだな」
「どんな馬鹿面を拝ませてくれるのかは楽しみではある」
――広間にいる老公と別れて地下牢へと到着。
薄暗くて湿気が支配した陰鬱な場所と想像していたが、そうではなかった。
灯りが煌々と通路全体を照らしてくれている。
街中やクルーグ商会の製造所と同様、ファイアフライのタリスマンが使われているようだ。
カツカツと足音を立てて通路を進む。
足音を出来るだけ立てないようにしても音が生じるのは、この場での動きを直ぐに察知できるようにするための工夫なのだろう。
一つの牢獄の前には三人一組で編制されている兵達が獄卒として立っている。
中にいる咎人が妙な動きをしないように常に炯眼にて睨みを利かせていた。
この地の内相であるタークさんが彼らを横切っても軽く会釈をする程度。
挨拶よりも囚人達に隙を与えないということに重きを置いているのは職務に忠実な証拠。
「申し訳ありません。公爵様に対しての非礼。この責任は自分が負いますので」
「負う必要なんて何もないですよ。素晴らしい兵士の皆さんというのが真っ先に浮かんだ感想ですから」
「そう言っていただけると大いに助かります」
ぶち込まれているカイメラの連中はうつむいている。
急遽、大人数をぶち込まないといけなくなったからか、牢獄の広さに対して定員より遙かに多い人数が入れられているのが分かる。
囚人服も人数分、用意できなかったというのは、白衣のままぶち込まれているのが物語っている。
おかしな動きは一切無い。
頭を抱えてへたり込んでいる者や、わずかなスペースの中で力なく天井を見ている者――などなど。
「逃げようとする気力も無いようですね。無くていいですけど。それだけ監視の方々の威厳が、中にいる連中に伝わっているということでしょう」
「有り難うございます」
称賛すればタークさんは自分のように喜んでくれる。
カツカツと足音が響く中、俺の後方では更に強い足音。
「コイツ等に逃げ果せようという考えはねえだろうよ。この先、自分たちの命運がどうなるのか――って不安と恐怖で頭がいっぱいみてえだからな。逃げる算段なんて立てる余裕はねえよ」
「然り。演技であるのならば大したもの。ですが――」
「なあ――」
悪そうな声音になる後方の二人。
次には、
「「「「ひぃぃぃぃぃぃぃ……」」」」
牢獄内から声を揃えて悲鳴が上がる。
試しにとばかりに強者二人が睨みを利かせれば、それだけで情けない声を上げるほどに連中のメンタルはボロボロ。
「ハハハハハッ! こんな連中が脱走を企てるなんて無理よ無理」
「然り、然り。脆弱な連中ですな」
哄笑を上げるガリオンとグレートヘルムの奥から侮蔑の声を漏らすジージー。
「あんまり挑発するなよ。中には反骨心のあるのもいるかもしれないんだから」
「いるわけねえよ」
「だとしても、コイツ等にはマジックカーヴもあるんだからさ」
バルバダイが使用したような魔法を使われても困るというもの。
「そこは問題ありません」
と、タークさん。
問題を起こした冒険者が頭を冷やすためにも使用される場所。
なので魔法を発動してもそう簡単に壊れないような造り。
もし牢から抜け出せても通路は一本道。直ぐに封鎖が可能だそうな。
魔法対策として大魔法であるラプスが使用できればなんの問題もないが、そんな大魔法を使用できる存在は限られるし、それを常時発動可能なんて人材は更に限られる。
「そんな存在がいるなら、ラプスなんて発動しなくても実力だけで逃げようとするのを叩き伏せるだろうけどな」
「だな」
ガリオンの言は正しい。
言葉を交わしながら足を進めていけば、
「ここか」
最奥へと到着。
ここは五人一組の兵によって監視されており、今までの詰め込まれた牢獄とは違って、
「お一人様専用のスイートルームで良かったな。バルバダイ」
「黙れ!」
「おう、流石は天才様。他の連中と違って反骨心が残ってる」
監視の数が多いのも分かるというものだ。
五人編制の内、二人はローブ姿。
如何に堅牢な牢獄の造りであっても、コイツだけは特別ってところ。
魔法対策は魔法が使用できる者達で対処するってところだな。
「ギラギラだな」
このままでは終わらないとばかりに、強い目力でこちらを睨んでくる。
他の連中と違って気骨があるのは大したもんだ。
絶対的な自信があるからこそ、自分が間違っていないという思いの表れ。
だからこそ、このような場所に自分がぶち込まれていることに納得がいっていないようだ。
「救いようがねえな」
「救いよう――だと? ふざけた事を口から出す小僧だ」
「事実だろう。お前は自分がどういったことをしでかして此処へとぶち込まれているのかが分かっていないんだからさ」
「分かるはずがない! 私の行いを否定するということは、私の大望を理解できない頭しか持っていない証拠。そんな者達と、崇高な大義の下で活動する私が分かりあえるはずがない!」
饒舌なことで。
「分からなくていいよ。分からない事が正常だということだからな」
「は! 異常の間違いだな!」
「お前のコレまでのやりようが正常なら、この世界はとっくに終わってるさ」
「終わらせたいんだよ。私を受け入れられない世界などな!」
――……ぶれねえな。
ある意味すげえよ。
「ございます。会いますか?」
「会ってみましょう。見下した笑いを向けたいので」
「性格悪いな」
「とか言うガリオンも悪い笑みだな」
「どんな馬鹿面を拝ませてくれるのかは楽しみではある」
――広間にいる老公と別れて地下牢へと到着。
薄暗くて湿気が支配した陰鬱な場所と想像していたが、そうではなかった。
灯りが煌々と通路全体を照らしてくれている。
街中やクルーグ商会の製造所と同様、ファイアフライのタリスマンが使われているようだ。
カツカツと足音を立てて通路を進む。
足音を出来るだけ立てないようにしても音が生じるのは、この場での動きを直ぐに察知できるようにするための工夫なのだろう。
一つの牢獄の前には三人一組で編制されている兵達が獄卒として立っている。
中にいる咎人が妙な動きをしないように常に炯眼にて睨みを利かせていた。
この地の内相であるタークさんが彼らを横切っても軽く会釈をする程度。
挨拶よりも囚人達に隙を与えないということに重きを置いているのは職務に忠実な証拠。
「申し訳ありません。公爵様に対しての非礼。この責任は自分が負いますので」
「負う必要なんて何もないですよ。素晴らしい兵士の皆さんというのが真っ先に浮かんだ感想ですから」
「そう言っていただけると大いに助かります」
ぶち込まれているカイメラの連中はうつむいている。
急遽、大人数をぶち込まないといけなくなったからか、牢獄の広さに対して定員より遙かに多い人数が入れられているのが分かる。
囚人服も人数分、用意できなかったというのは、白衣のままぶち込まれているのが物語っている。
おかしな動きは一切無い。
頭を抱えてへたり込んでいる者や、わずかなスペースの中で力なく天井を見ている者――などなど。
「逃げようとする気力も無いようですね。無くていいですけど。それだけ監視の方々の威厳が、中にいる連中に伝わっているということでしょう」
「有り難うございます」
称賛すればタークさんは自分のように喜んでくれる。
カツカツと足音が響く中、俺の後方では更に強い足音。
「コイツ等に逃げ果せようという考えはねえだろうよ。この先、自分たちの命運がどうなるのか――って不安と恐怖で頭がいっぱいみてえだからな。逃げる算段なんて立てる余裕はねえよ」
「然り。演技であるのならば大したもの。ですが――」
「なあ――」
悪そうな声音になる後方の二人。
次には、
「「「「ひぃぃぃぃぃぃぃ……」」」」
牢獄内から声を揃えて悲鳴が上がる。
試しにとばかりに強者二人が睨みを利かせれば、それだけで情けない声を上げるほどに連中のメンタルはボロボロ。
「ハハハハハッ! こんな連中が脱走を企てるなんて無理よ無理」
「然り、然り。脆弱な連中ですな」
哄笑を上げるガリオンとグレートヘルムの奥から侮蔑の声を漏らすジージー。
「あんまり挑発するなよ。中には反骨心のあるのもいるかもしれないんだから」
「いるわけねえよ」
「だとしても、コイツ等にはマジックカーヴもあるんだからさ」
バルバダイが使用したような魔法を使われても困るというもの。
「そこは問題ありません」
と、タークさん。
問題を起こした冒険者が頭を冷やすためにも使用される場所。
なので魔法を発動してもそう簡単に壊れないような造り。
もし牢から抜け出せても通路は一本道。直ぐに封鎖が可能だそうな。
魔法対策として大魔法であるラプスが使用できればなんの問題もないが、そんな大魔法を使用できる存在は限られるし、それを常時発動可能なんて人材は更に限られる。
「そんな存在がいるなら、ラプスなんて発動しなくても実力だけで逃げようとするのを叩き伏せるだろうけどな」
「だな」
ガリオンの言は正しい。
言葉を交わしながら足を進めていけば、
「ここか」
最奥へと到着。
ここは五人一組の兵によって監視されており、今までの詰め込まれた牢獄とは違って、
「お一人様専用のスイートルームで良かったな。バルバダイ」
「黙れ!」
「おう、流石は天才様。他の連中と違って反骨心が残ってる」
監視の数が多いのも分かるというものだ。
五人編制の内、二人はローブ姿。
如何に堅牢な牢獄の造りであっても、コイツだけは特別ってところ。
魔法対策は魔法が使用できる者達で対処するってところだな。
「ギラギラだな」
このままでは終わらないとばかりに、強い目力でこちらを睨んでくる。
他の連中と違って気骨があるのは大したもんだ。
絶対的な自信があるからこそ、自分が間違っていないという思いの表れ。
だからこそ、このような場所に自分がぶち込まれていることに納得がいっていないようだ。
「救いようがねえな」
「救いよう――だと? ふざけた事を口から出す小僧だ」
「事実だろう。お前は自分がどういったことをしでかして此処へとぶち込まれているのかが分かっていないんだからさ」
「分かるはずがない! 私の行いを否定するということは、私の大望を理解できない頭しか持っていない証拠。そんな者達と、崇高な大義の下で活動する私が分かりあえるはずがない!」
饒舌なことで。
「分からなくていいよ。分からない事が正常だということだからな」
「は! 異常の間違いだな!」
「お前のコレまでのやりようが正常なら、この世界はとっくに終わってるさ」
「終わらせたいんだよ。私を受け入れられない世界などな!」
――……ぶれねえな。
ある意味すげえよ。
2
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道
コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。
主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。
こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。
そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。
修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。
それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。
不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。
記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。
メサメサメサ
メサ メサ
メサ メサ
メサ メサ
メサメサメサメサメサ
メ サ メ サ サ
メ サ メ サ サ サ
メ サ メ サ ササ
他サイトにも掲載しています。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる