異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1751【ぶれないね……】

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「それで――地下牢の場所は? この詰所の地下にあったりします?」

「ございます。会いますか?」

「会ってみましょう。見下した笑いを向けたいので」

「性格悪いな」

「とか言うガリオンも悪い笑みだな」

「どんな馬鹿面を拝ませてくれるのかは楽しみではある」
 ――広間にいる老公と別れて地下牢へと到着。
 薄暗くて湿気が支配した陰鬱な場所と想像していたが、そうではなかった。
 灯りが煌々と通路全体を照らしてくれている。
 街中やクルーグ商会の製造所と同様、ファイアフライのタリスマンが使われているようだ。

 カツカツと足音を立てて通路を進む。
 足音を出来るだけ立てないようにしても音が生じるのは、この場での動きを直ぐに察知できるようにするための工夫なのだろう。
 
 一つの牢獄の前には三人一組で編制されている兵達が獄卒として立っている。
 中にいる咎人が妙な動きをしないように常に炯眼にて睨みを利かせていた。
 この地の内相であるタークさんが彼らを横切っても軽く会釈をする程度。
 挨拶よりも囚人達に隙を与えないということに重きを置いているのは職務に忠実な証拠。

「申し訳ありません。公爵様に対しての非礼。この責任は自分が負いますので」

「負う必要なんて何もないですよ。素晴らしい兵士の皆さんというのが真っ先に浮かんだ感想ですから」

「そう言っていただけると大いに助かります」
 ぶち込まれているカイメラの連中はうつむいている。
 急遽、大人数をぶち込まないといけなくなったからか、牢獄の広さに対して定員より遙かに多い人数が入れられているのが分かる。
 囚人服も人数分、用意できなかったというのは、白衣のままぶち込まれているのが物語っている。
 おかしな動きは一切無い。
 頭を抱えてへたり込んでいる者や、わずかなスペースの中で力なく天井を見ている者――などなど。

「逃げようとする気力も無いようですね。無くていいですけど。それだけ監視の方々の威厳が、中にいる連中に伝わっているということでしょう」

「有り難うございます」
 称賛すればタークさんは自分のように喜んでくれる。
 カツカツと足音が響く中、俺の後方では更に強い足音。

「コイツ等に逃げ果せようという考えはねえだろうよ。この先、自分たちの命運がどうなるのか――って不安と恐怖で頭がいっぱいみてえだからな。逃げる算段なんて立てる余裕はねえよ」

「然り。演技であるのならば大したもの。ですが――」

「なあ――」
 悪そうな声音になる後方の二人。
 次には、

「「「「ひぃぃぃぃぃぃぃ……」」」」
 牢獄内から声を揃えて悲鳴が上がる。
 試しにとばかりに強者二人が睨みを利かせれば、それだけで情けない声を上げるほどに連中のメンタルはボロボロ。

「ハハハハハッ! こんな連中が脱走を企てるなんて無理よ無理」

「然り、然り。脆弱な連中ですな」
 哄笑を上げるガリオンとグレートヘルムの奥から侮蔑の声を漏らすジージー。

「あんまり挑発するなよ。中には反骨心のあるのもいるかもしれないんだから」

「いるわけねえよ」

「だとしても、コイツ等にはマジックカーヴもあるんだからさ」
 バルバダイが使用したような魔法を使われても困るというもの。

「そこは問題ありません」
 と、タークさん。
 問題を起こした冒険者が頭を冷やすためにも使用される場所。
 なので魔法を発動してもそう簡単に壊れないような造り。
 もし牢から抜け出せても通路は一本道。直ぐに封鎖が可能だそうな。
 魔法対策として大魔法であるラプスが使用できればなんの問題もないが、そんな大魔法を使用できる存在は限られるし、それを常時発動可能なんて人材は更に限られる。

「そんな存在がいるなら、ラプスなんて発動しなくても実力だけで逃げようとするのを叩き伏せるだろうけどな」

「だな」
 ガリオンの言は正しい。
 言葉を交わしながら足を進めていけば、

「ここか」
 最奥へと到着。
 ここは五人一組の兵によって監視されており、今までの詰め込まれた牢獄とは違って、

「お一人様専用のスイートルームで良かったな。バルバダイ」

「黙れ!」

「おう、流石は天才様。他の連中と違って反骨心が残ってる」
 監視の数が多いのも分かるというものだ。
 五人編制の内、二人はローブ姿。
 如何に堅牢な牢獄の造りであっても、コイツだけは特別ってところ。
 魔法対策は魔法が使用できる者達で対処するってところだな。

「ギラギラだな」
 このままでは終わらないとばかりに、強い目力でこちらを睨んでくる。
 他の連中と違って気骨があるのは大したもんだ。
 絶対的な自信があるからこそ、自分が間違っていないという思いの表れ。
 だからこそ、このような場所に自分がぶち込まれていることに納得がいっていないようだ。

「救いようがねえな」

「救いよう――だと? ふざけた事を口から出す小僧だ」

「事実だろう。お前は自分がどういったことをしでかして此処へとぶち込まれているのかが分かっていないんだからさ」

「分かるはずがない! 私の行いを否定するということは、私の大望を理解できない頭しか持っていない証拠。そんな者達と、崇高な大義の下で活動する私が分かりあえるはずがない!」
 饒舌なことで。

「分からなくていいよ。分からない事が正常だということだからな」

「は! 異常の間違いだな!」

「お前のコレまでのやりようが正常なら、この世界はとっくに終わってるさ」

「終わらせたいんだよ。私を受け入れられない世界などな!」
 ――……ぶれねえな。
 ある意味すげえよ。
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