異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1754【天才、現実を知る】

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「まさかこの私と無能な王を会わせるつもりか?」

「当然、謁見させるよ。それに加えてお前からは色々と聞かないといけないからな。魔王軍の内情なんかを知っているなら吐いてもらうし、なによりリジェネポーションの存在は魅力的だからね。知識の横展開よろしく」

「ごめんだね」

「拒否権はないから。王都となれば、偉大なる魔王様も助けるのが難しくなるだろうな。そもそも来るつもりもないだろうけどさ」

「私がどこにいようが来てくださるに決まっている!」

「なら何処に移動しても問題ないな。じゃあ行こうか。二度目だけど拒否権はないから」

「傲慢だな。それでも勇者か」

「お前は拒み続けてきた人間や生物をアンデッドや合成獣に変えたんだろ。そんなヤツが自分だけ拒否権を行使できると思うなよ」
 本気でイラッとしたので声を凄ませれば黙ってくれる。

「よし、静かになったな。ではお願いします」

「はっ!」
 監視役の兵士に頼む。
 ガチャリと金属音。見ただけで伝わってくる頑丈な手枷が取り付けられる。
 中世を舞台にした映画やアニメで見る木製の手枷ではなく、金属のみで作られた手枷は、鈍い黒色の光沢を帯びた長方形の鉄塊だった。
 細身の体であるバルバダイが手枷をつけられれば、それだけで力なく両腕がぶら下がる。

「さあ、歩け!」
 と、石突きで背中を突かれれば、重々しい手枷に表情を引きつらせながら牢屋から通路へ。

「おのれ! 覚えたからな一般兵が。魔王様が救ってくだされば必ず貴様を殺してくれる。死体は無駄にせん! 忠実なアンデッドとして使役してやるからな!」

「下らんことを言ってないでさっさと歩け!」

「だぁい!?」
 思いっきり尻を蹴られて派手に転倒。
 手枷で自由がきかないから石床に体を強く打ち付けていた。
 脅迫に恐れることなく蹴りを見舞う気骨ある兵士だ。

「しゅ、囚人に対しての暴力とは……」

「この人のは暴力じゃねえよ。正義の一蹴りだ。さっさと立て」
 冷たく言うも悶えるバルバダイは中々に立とうとしない。

 そんな姿を目にすれば、俺よりも短気な存在である――、

「立てコラッ!」
 筋肉モリモリマッチョマンが首をむんずと掴んで無理矢理に立たせ、

「次この俺に無駄な体力を使わせたら――首をへし折るからな」
 ガリオンがドスを利かせれば、ヘビメタバンド顔負けのヘドバンで首を縦に振ってくれる。
 こういう時はやはりアウトローな人間に凄ませるのが最適解だな。
 
 ――さて、

「まずはチコ達を俺たちの方に誘導させないとな」
 その為にはまず洋館へと行かないと。
 
 でもって、

「お前にも現実を見せてやらないとな」

「現実?」

「そう現実。お前が最高傑作とのたまっていた事がどれほど下らないものかってのを教えてやるよ」

「なんだと! 私のシュネーとジュニア。モーモーチャーチャーを侮辱するか!」

「前者の親子は侮辱してねえよ」

「貴様っ! ジュニア! 私に力を!」

「ごめんなさい。ボクは悪い人には協力しないんだ」

「ジュニア……」
 重い手枷の中で懸命に手を伸ばそうとするけども、

「ゴロ太に触れる事は許さない」
 冷たい声のベル。
 ゴロ太を守るように抱っこし、バルバダイの手が届かないように距離を取りながらの声音は冷たさはあったが、殺意や怒気はなかった。
 抱っこしているゴロ太を怖がらせるのは避けたいからだろう。
 ベルの声よりもゴロ太に拒絶された事の方が、バルバダイにはダメージがデカかったようだけども。
 ならば、もっとダメージを与えてやろう。
 
 ――アサードアズの外へと移動したところで、

「来い! ツッカーヴァッテ!」
 森の方を向いて大声で名を発せば、

「キュュュュュュン」
 元気な返事。

「なんだ!?」

「お前が度肝を抜く存在だよ」
 森の方からバサバサと多くの鳥が飛び立つ。
 次には森から空高く舞い上がる大きな影。
 雲一つ無い蒼天、蒼穹の中に白い翅が広がる。

「な、なんなんだ!?」

「同じようなリアクションだな。もう一回言わせてもらおう。お前の度肝を抜く存在だよ!」
 声高に言えば、ゆったりとした羽ばたきから着地。
 周囲に突風を巻き起こすこともなく、俺たちの前へと静かに着地というのは単純に凄い技量。
 デカい羽ばたきなのに不思議なことだよ。
 これも生み出した者達が優秀だったということ。

「な、なんだ……」
 三度、同じような声を漏らす。

「どうよ自称天才様。これが最高の存在ってヤツだよ。お前の最高傑作とは違いすぎるだろう?」
 巨大クラゲってのも大したもんではあったけども、ツッカーヴァッテと比べてしまえば見劣りするのは事実。
 それはその事実を見せつけられている自称天才様が一番理解していることだろう。

「これはなんだ!?」

「俺たちの大切な仲間だよ」

「こんな巨大な生物を……」

「お前のは毒水を撒き散らすけど、ツッカーヴァッテは超強力な電撃が出せる。で、完全なる電撃耐性の持ち主でもある。お前のクラゲと戦っていたら、ちょちょいのちょいで仕留めていただろうな。まあ、もういないから試すことは出来ないけど、間違いなく簡単に倒してるよ。幼虫時に対峙した俺が保証する。幼虫の時でもクラゲを余裕で倒せる強さだったからな」
 ツッカーヴァッテの姿に言葉を失ってへたり込むバルバダイを見てしまい、ついつい得意げになって饒舌となってしまう俺氏。
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