異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1756【チコ達は筋肉に任せよう】

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「良いって言ってくれたよ」

「有り難うゴロ太」
 ベルに抱っこされたゴロ太がお友達になってと言えば、それだけで万事解決とばかりに丸くなって休んでいた三頭のバジリスク・イミテイトは立ち上がる。
 その光景を見れば、やはりゴロ太の力は凄いし――脅威でもある。
 絶大な力も使い方次第。
 扱う者が律することを心がけないとならない。
 その点ではベルが目を光らせているから大丈夫ではあると思う。
 シュネーと一緒に過ごせるようになれば、ゴロ太が王都から勝手に出るというのも今後はないし、二度と同じ失態はしないと、護衛のスケルトンルインの面々も気合いを入れるだろうからな。
 
 ――後はチコ達の帰還方法だけども、
 
「チコ達は迷わずに王都まで来る事が出来るか?」

「ニ゛ャ!」
 力強い返事。
 こっちの言葉は理解してくれているだろうけども、念のためにゴロ太に通訳してもらう。
 俺たちはツッカーヴァッテでの移動になるからな。
 陸と空ではどうしても移動に差が生じてしまう。
 馬での移動だと王都とロイル領は八日はかかる。
 そう考えると、ここまでゴロ太についてきたマンティコア達は馬以上の持久力をもっているよな。
 頑張れば五、六日くらいで戻ってこれるかもね。
 今回は新たに仲間になってくれたバジリスク・イミテイトもいるから、足並み揃えての移動と考えれば十日前後はかかるとみておいたほうがいいな。
 
 ――うむ。

「ちょっと心配だな」
 チコ達はこの地まで移動する事は出来ているけども、やはり心配にもなる。
 何が心配って、街道を利用する人々だ。
 コイツ等だけでの移動となると、街道なんかで旅商人なんかが驚くかもしれない。
 見たこともない大型の生物となれば入らぬ誤解を招くことにもなりそうだな。

 腕組みして考える中、

「そんなに難しく考えなくてもいいだろう」

「ガリオン」

「俺のそもそもの目的は、各領地のお偉方に内の主の名を覚えてもらう為の外交活動なんだよ」

「そうだったな。お前ってそんな顔して外交官だったな」

「ぶっ飛ばすぞ」

「そんな態度で外交が出来るのかよ。気に入らなかったら常にぶっ飛ばすとか言ってると、主様の名を汚すことになるぞ」

「う、ぬぅ……」

「しかもぶっ飛ばすとか言ってる相手は公爵なんですわ。めっちゃ偉いんですわ。公爵である俺に対してその不遜。俺の器がゴンドワナ大陸並の広さだから許しているけども、俺以外にそんな態度を取ったら駄目だぞ」

「お前以外にはちゃんと対応していると以前も言ったはずだぞ。
後なんだそのゴンなんちゃら大陸ってのは? 聞いたことねえよ」
 ――……。

「なんだその半眼は?」

「今回、一緒に行動していたけど、お前――誰彼構わず高圧的だったぞ」

「してねえよ! 悪党以外にはちゃんとしてただろうが!」

「そうだっけ?」

「そうだよ!」

「で、何の話をしてたんだったかな?」

「お前が馬鹿にしてこなけりゃ円滑に進んでたんだがな! 俺は各地に挨拶に回ってんだよ。極東の地の統治者であるエンドリュー候は王都にいたから挨拶ができた。お陰でわざわざカンクトス山脈はコンフォルターブル山を踏破せずにすんだってもんだ」

「だったらロイル領から西に進んで挨拶回りをすればいいってことか」

「そういうことだ。だが足がねえ」
 なるほど。

「七頭の大型生物の面倒を見てくれるかわりに、足としてチコ達に協力してほしいわけだな」

「おうよ」
 じゃあ、ガリオンはここでパーティーから離れることになるか。
 チコ達の面倒か――。
 確かに腕っ節もあるからな。なにかあっても対処可能な人材なのは間違いない。

「じゃあ、任せようかな」

「任されてやる」
 偉そうに言ってくるもんだよ。

「でもやっぱり、お前の厳つさは移動時に各地の兵士に余計な警戒を与えるかもね」
 強面の筋肉モリモリマッチョマンがデカい生物の背に乗っての世紀末的な移動となれば誰もがちびってしまう。
 それに付き従うのが全て大型生物ってなれば厳戒態勢になるのは想像に難くない。
 
 ――おっ! そうだ。

「これを貸してやろう」
 羽織っている物を外して手渡す。

「おいそれと貸して良い物じゃねえだろうに」

「ちゃんと返してもらえるなら問題ないだろ」
 巌のようなごつい手に渡すのは――六花のマント。
 王様から賜った勇者の証明となる外套。
 本来なら他者に貸していい代物じゃないけども、チコ達を安全に王都まで運ぶとなれば少しは効果を発揮してくれるかもしれない。

「通行手形みたいなもんだな」

「頼れるのかね~」

「どうだろうな。俺がそれを羽織ってても大抵が勇者って信じてくれなかったからな」

「俺の方が似合いそうだしな」

「やかましわ! 野盗の頭目目隠れフェイス! さっさと受け取れ!」

「借りといてやるよ。王都に戻ったら返してやる」

「その頃、俺たちは南側に移動しているかもな」

「なら、そこでも俺の力を見せつけてやるさ」
 そいつは頼りにしたいところだな。

「俺は先にお暇するぜ」

「お待ちを」
 案内役の兵士がガリオンを止める。
 アサードアズへと立ち寄ってもらいたいと言ってくる。
 製造所内にあったバジリスク・イミテイト用の幌馬車が頭数分あるとのこと。
 持て余すのもなんだから、そこで取り付けてほしいそうだ。
 幌馬車にはガリオンの分だけでなく、チコ達の食糧と水も準備してくれるという。
 寝床にもなるし、移動には必須だな。

「有り難く貰っとくぜ」
 兵士にそう言えば跳躍。チコの頭の上で胡座をかけば、

「よし、森を抜けたらアサードアズに立ち寄るぞ。それが済んだら西の街道に向かってくれ」

「ニ゛ャ」
 ガリオンに短い返事をすれば、チコが俺に頭をこすりつけて挨拶――颯爽と走り出す。
 これにタカシ、キム、キョエ。そして三頭のバジリスク・イミテイトが続く。

「壮観だな」

「確かにな」
 俺と一緒にガリオンの背中を見送るベルも同意見。
 象サイズの生物七頭がドドドドドドッ――と地面を揺らし、濛々と土煙を立てながら俺たちから離れていく。
 森の木々と土煙も相まって、あっという間に姿が見えなくなる。
 
 胡座を組んだ騎獣姿。一切、体がぶれることがなかった。
 ああいった乗り方はコクリコが好きそうだ。
 やっぱりコクリコとガリオンって似てるところがあるな。
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