異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1757【即日到着】

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 ――よし。

「そんじゃあ帰ろう!」
 言ったところで、

「公爵様、しばしお待ちを!」

「なんでしょう?」
 ガリオンだけでなく俺も案内役の兵士に止められる。

「洋館内で発見したアイテムもお使いください。内相からも許可は貰っております」

「おお! 有り難うございます」
 二度頭を下げる。一回目は兵士に。二回目はアサードアズにいるタークさんの方向に。
 
 ――運んで来てもらったのは、一メートル四方の木箱一つ。
 開けば――、

「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 喜びからの興奮の声を空へと向けて放つ。
 箱の中身は紐で巻かれた羊皮紙だった。
 つまりは――スクロール。
 それも箱に沢山。
 スクロールの底には小瓶。問えばポーションとのこと。
 中にはリジェネポーションも入っているという。

「箱には五十の無地からなるスクロールと、百のポーション類が入っております」

「最高です!」
 調査途中とのことなので、洋館にはまだまだ同様の代物があると考えられるそうだ。
 捕らえたカイメラのメンバーから聞き取りを行い、それらも回収するという。
 大いに期待しよう。
 そんでもって無地のスクロールって事は、この中に強力な魔法を封じれるってことだろうから、王都に戻ったらリンとシャルナにお願いしよう。
 
 ――頂いた木箱とともに、俺たちもツッカーヴァッテの背中へと乗る。

「公爵様、この地を守ってくださり有り難うございました」

「ルーフェンスさんもしばしのお別れということで」

「整い次第、我らの力を存分に発揮させていただきます」
 頼らせていだたくよ。
 あ、そうだ。

「俺たちが出立する時は老公も見送りに来ると言っていましたけど、そうはならなかったので代わりに言っておいてください。今後ともよしなに――と」

「かしこまりました」

「あと、ソドンバアム達がもし共に戦いたいと言うなら誘ってやってくださいね」

「……そのお言葉、我が心に留めておきます」
 あ、これは絶対に一緒に戦いたくないという返しだな。
 気位が高い性格と、自由奔放な性格の両極端だからな。
 ま、いいや。あいつは間違いなく自分の正義のために立ち上がるってタイプだろうからな。俺の所で励んでもらいたいと熱望している。
 頼れる逸材を持て余すほどこの大陸には余裕がないからね。

「では」
 もう一度、別れの挨拶を行えば、深々と頭を下げるルーフェンスさんと洋館捜索の兵士たち。
 彼らに見送られながら大空に身を置く。

「そんじゃツッカーヴァッテ。王都まで宜しく」

「キュゥゥゥゥゥン」
 快活に返事してくれれば勢いよく翅を羽ばたかせる。

「お、おう……」

「そんなに驚かなくても振り落とされないっての。コイツの背に乗っていれば風圧なんて殆ど感じることはないからな。最高の存在だろ?」

「ぅぅう、うるさい!」
 拘束されたバルバダイがなんとも悔しそうに声をひり出す。
 頭はいいからな。ツッカーヴァッテがどれほど凄い生物なのかというのは嫌が応にも理解してしまうよね。
 
 モーモーチャーチャーと名付けられた巨大クラゲを最高傑作と自負していた自分が恥ずかしかったりするのかな? と、思ったけども、そんな殊勝な性格じゃないよな。
 そんなんだったらここまで落ちるようなことはないだろうからな。

「色々とあったね」

「ですね」

「こんなにも激しい戦闘に身を置いたのは初めてだったよ」

「その割りには落ち着いていろんな事に対応してくれましたよね」

「ゴロ太の為ならどんな事があっても体を張るよ」

「格好いいですね」

「ゴロ太は英雄に憧れるからね」

「俺もゴロ太が憧れてくれるような勇者となるために、これからも励みますよ」

「いやいや、十分に英雄だよ」
 大陸随一の製作者であるワックさんにそう言ってもらえるのは嬉しい限りだ。

「愚かな者達が互いに称賛とはな」
 ここで嫌みったらしく言うのは当然ながらバルバダイ。

「羨ましいだろう。お前にとって最も欲する他者からの称賛だぞ。お前には言ってあげないけどね」

「貴様等から褒められても耳が腐るだけだ」

「なら有らん限り褒めてやろうか。本当に耳が腐るか見てみたいからな」

「ふざけた小僧め! 私で実験など生意気な。その権限は私と魔王様だけのもの! それ以外は被検体なんだよ!」
 ――全くもって救いようのないヤツだ。
 コイツの言い様は悪態などという可愛げのあるものじゃない。
 本心から言っているからな。
 どうやってもコイツとは分かり合えないってのだけは分かったし、分かり合いたくもない。

「きっちりと罰は受けてもらう。当然ながら酷刑は免れないだろう」

「そんな発言で私が恐れると思っているのか!」

「王都についても同じことが言えるといいな。ちなみにもうロイル領は出ているからな」

「なんだと!?」
 ツッカーヴァッテの背中にうつ伏せで寝かされているバルバダイの声音が、悪態から驚きへと変わる。
 何を馬鹿げたことを! と、次には否定。
 いくら何でもこのわずかな飛行でロイル領内から出られるわけがないと完全否定してくる。

「愚か者め。自身の目で確かめるがいい」

「はぁ!? ひぃやぁぁぁぁぁぁあ!?」
 むんずとジージーが首根っこを掴んで持ち上げれば即、悲鳴。
 よくもまあ【そんな発言で私が恐れると思っているのか!】って言えたもんだよ。
 一分前くらいのお前に今のお前を見せてやりたいよ。
 恐怖からジタバタと暴れれば、

「そんなに暴れられると手が滑ってしまいそうだ」
 このジージーの発言を耳にした途端に大人しくなった。

「はっ! あれはもしや――マール街!?」

「そうだな」
 ロイル領を抜けてマール街が見えている。

「信じられん……」
 首根っこを掴まれて足をブラブラとさせながら眼下に広がる風景を目にすれば、驚きを隠せないバルバダイ。

「てことだから、直ぐに王都に到着する。沙汰は下るが、慈悲があるとは思わないことだな」

「ふんっ言ってろ! 私は正しいと思っていることをやっただけだ。そうだろうジュニア」

「え……」
 急に話を振られて困惑するゴロ太。
 悪そうな笑みは自分のモノにならなかった腹いせからか。
 愚かな行為だけどな。

「貴様如きが気安く話しかけるな」

「ぎゃん!?」
 直ぐさまベルの蹴りが炸裂。
 ジージーに掴まれた状態で蹴られる様はさながら人間サンドバッグですわ。
 ツッカーヴァッテの背中へと放り投げられれば、もんどり打って倒れ込み、うめき声を上げる。
 
 ――強めに蹴られたようで、移動中はずっと苦痛の声を上げていた。

「うめき声を上げ続けているとこ悪いけど、到着するぞ」
 街道の真上を飛行し、強化された王都外周の木壁を通過。

 ツッカーヴァッテでの移動なら、馬で八日くらいかかる距離であっても即日に到着可能。
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