異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1758【御前で硬鞭】

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 ――外周の木壁を通過したところで徐々に減速していくツッカーヴァッテ。
 目の前から接近してくるのは――、

「お帰りなさいませ主」

「ただいま戻りました」
 先生がヒッポグリフに騎獣しての出迎え。
 ツッカーヴァッテの横に並べば、

「おや? ガリオン殿の代わりに見ない人物が乗っておりますね」

「なんだ貴様は!」

「初対面で威圧とは、どうやらまともな人物ではないようですね」

「ああんっ!」
 恫喝したところで迫力無し。
 よしんば迫力が有ったとしても、先生の肝を冷やす事なんて出来ないだろうけど。

「自称天才。真の天才ってのは先生のような人を言うんだぞ」

「いやいや、私などまだまだ発展途上です」
 イケメンによる爽やかスマイル。でも不思議と、まったくもって嫌みったらしくないんだからね。羨ましいです。

「気にいらんヤツだ」
 と、バルバダイ。
 初対面は最悪の印象といったところか。

「主、降り立つのはどちらに?」

「王城の広場にでも」

「王城ですか。ふむふむ――なるほど」
 バルバダイに目を向けながら背に乗る面子を眺める。

「おお! ゴロ太殿もご無事そうで何より。本当に良かった」

「ただいま♪」

「お帰りなさい」
 優しく返しつつ次に目を移すのは、ワックさんに抱えられた頭部だけの白い体毛の熊――シュネー。

「拘束されている人物はカイメラの主要人物と見てよいでしょうか?」

「流石です」
 ゴロ太が王都より出て、帰ってきた時には同じ毛並みの頭部だけの熊。
 今回の連れ去り事件がカイメラのものであり、関係者と思われる人物を連行しているところから即座に理解してくれるので無駄に説明をしなくていい。

「ギルドの修練場ではなく王城に着地したい事に得心がいきました」
 丁度、王都の防御壁を越えたところでそう言えば、

「先触れを担当しましょう」
 と、継いでくれる。

「お願いします」
 先生が先行し、直ぐさま兵が一斉に集まってくる。

「どうよ。お前が愚かと言っていた王を守る兵達の動きは? 迅速だろう」
 ドヤ顔で問うてみれば、おもしろくなさそうな表情になるだけでなにも返す事はない。
 
 ――着地。
 と、同時に、

「おお! 帰ってきたかトールよ!」
 相も変わらず覇気に漲る声である。俺の内臓までビンビンに届いたよ。
 でもって、華麗に回避。
 筋骨隆々になってからというもの、無駄にハグしたがるのはなんとかしてほしい。
 今回は上半身が裸じゃなかったから良かったけども。

「おお! 美姫が抱くのはゴロ太ではないか! 無事で何よりだ!」

「ただいま王様」

「うむっ!」
 ニッコリ笑顔のゴロ太に対し、負けじと破顔で返す王様。

「おお! おおっ!! 公爵様! 感謝いたします!」

「あ、ハダン――伯? なんか窶れましたね……」
 自分の失態でベルの大切な存在であるゴロ太がどうなったのかが心配だったようで、心労が原因なのかかなり窶れていた。
 ヘアスタイルも乱れてはいるけど、普段からウェービーなこともあって、そこまで目立ってはいないから気品さは維持されている模様。

「心配せずともよいと言ったのだがな。普段はクセのある自信家だが、心配事が起これば小心になるのがハダンの欠点よ」

「なら、普段通りの自信家に戻ってくれて構いませんよ」

「とのことだぞハダンよ。トールの言うように自信を漲らせてみよ」

「いえ、少しは弁えるという事を今回の事で学ばせていただきました」

「だそうだぞ。トール」

「人間、いくつになっても学ぶことは大事ですよね」
 何よりロイル領を目にしてきてハダン伯が如何に優秀な領主かというのも分かったので、足を運んで良かったとフォローを入れつつ、

「タークさんより言づてもあります。虎の子の騎鳥隊と精鋭の派兵も整い次第、実行するそうです」

「そうですか! 公爵様も我らが騎鳥隊を目にしてくれたようですね」

「ええ、空を制する百四騎は大いに頼りになってくれるでしょう」

「そうでしょうとも! そうでしょうとも!」
 褒められれば自分の事のように喜ぶのはタークさんと似ている。

「これはエンドリューも負けておられんな」

「我が竜騎兵も今以上に励まなければなりませんな」
 お偉方が揃い踏みだな。
 そんな中で、ギラギラの視線をツッカーヴァッテの方へと向けるのは――狂乱の双鉄鞭の異名を持つ武闘派のバリタン伯。
 ぎらついた目に負けないくらいに禿頭をピカリと輝かせ、王様の御前であるにもかかわらず、腰に差していた一メートルほどの長さからなる真鍮色が特徴的なオリハルコン製の硬鞭を諸手に握れば、

「公爵様には感謝することばかりですな!」
 そう言いながらズカズカと強い足音を立ててツッカーヴァッテへと近づく。
 歩みに合わせるようにジージーが拘束した人物を跪かせる。

「ようやく姿を見せたかバルバダイ!」

「なんだ随分と頭が寂しくなったようだな? いや、以前から寂しかったかな」

「戯れ言を吐けるくらいの余裕はあるようだな! 貴様が行ってきた悪道をここで言い連ねてくれようか!」

「黙れ禿頭とくとう伯爵! 私の行いは全て正道である!」

「おう! よう吠えよったな! その頭をかち割ってくれようか!」

「この脳漿には貴様では補うことの出来ない叡智が詰まっているんだよ!」
 顔というか頭全体を真っ赤にしてお怒りのバリタン伯に対して物怖じしてないってのは大したもんだ。

 ガリオンやジージーにはビビってたのにな。
 
 屈強な体からなる王侯貴族の面々を前にしても怯まないのは、恐怖以上に不快感が勝っているからなんだろう。
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