1,758 / 1,861
驕った創造主
PHASE-1758【御前で硬鞭】
しおりを挟む
――外周の木壁を通過したところで徐々に減速していくツッカーヴァッテ。
目の前から接近してくるのは――、
「お帰りなさいませ主」
「ただいま戻りました」
先生がヒッポグリフに騎獣しての出迎え。
ツッカーヴァッテの横に並べば、
「おや? ガリオン殿の代わりに見ない人物が乗っておりますね」
「なんだ貴様は!」
「初対面で威圧とは、どうやらまともな人物ではないようですね」
「ああんっ!」
恫喝したところで迫力無し。
よしんば迫力が有ったとしても、先生の肝を冷やす事なんて出来ないだろうけど。
「自称天才。真の天才ってのは先生のような人を言うんだぞ」
「いやいや、私などまだまだ発展途上です」
イケメンによる爽やかスマイル。でも不思議と、まったくもって嫌みったらしくないんだからね。羨ましいです。
「気にいらんヤツだ」
と、バルバダイ。
初対面は最悪の印象といったところか。
「主、降り立つのはどちらに?」
「王城の広場にでも」
「王城ですか。ふむふむ――なるほど」
バルバダイに目を向けながら背に乗る面子を眺める。
「おお! ゴロ太殿もご無事そうで何より。本当に良かった」
「ただいま♪」
「お帰りなさい」
優しく返しつつ次に目を移すのは、ワックさんに抱えられた頭部だけの白い体毛の熊――シュネー。
「拘束されている人物はカイメラの主要人物と見てよいでしょうか?」
「流石です」
ゴロ太が王都より出て、帰ってきた時には同じ毛並みの頭部だけの熊。
今回の連れ去り事件がカイメラのものであり、関係者と思われる人物を連行しているところから即座に理解してくれるので無駄に説明をしなくていい。
「ギルドの修練場ではなく王城に着地したい事に得心がいきました」
丁度、王都の防御壁を越えたところでそう言えば、
「先触れを担当しましょう」
と、継いでくれる。
「お願いします」
先生が先行し、直ぐさま兵が一斉に集まってくる。
「どうよ。お前が愚かと言っていた王を守る兵達の動きは? 迅速だろう」
ドヤ顔で問うてみれば、おもしろくなさそうな表情になるだけでなにも返す事はない。
――着地。
と、同時に、
「おお! 帰ってきたかトールよ!」
相も変わらず覇気に漲る声である。俺の内臓までビンビンに届いたよ。
でもって、華麗に回避。
筋骨隆々になってからというもの、無駄にハグしたがるのはなんとかしてほしい。
今回は上半身が裸じゃなかったから良かったけども。
「おお! 美姫が抱くのはゴロ太ではないか! 無事で何よりだ!」
「ただいま王様」
「うむっ!」
ニッコリ笑顔のゴロ太に対し、負けじと破顔で返す王様。
「おお! おおっ!! 公爵様! 感謝いたします!」
「あ、ハダン――伯? なんか窶れましたね……」
自分の失態でベルの大切な存在であるゴロ太がどうなったのかが心配だったようで、心労が原因なのかかなり窶れていた。
ヘアスタイルも乱れてはいるけど、普段からウェービーなこともあって、そこまで目立ってはいないから気品さは維持されている模様。
「心配せずともよいと言ったのだがな。普段はクセのある自信家だが、心配事が起これば小心になるのがハダンの欠点よ」
「なら、普段通りの自信家に戻ってくれて構いませんよ」
「とのことだぞハダンよ。トールの言うように自信を漲らせてみよ」
「いえ、少しは弁えるという事を今回の事で学ばせていただきました」
「だそうだぞ。トール」
「人間、いくつになっても学ぶことは大事ですよね」
何よりロイル領を目にしてきてハダン伯が如何に優秀な領主かというのも分かったので、足を運んで良かったとフォローを入れつつ、
「タークさんより言づてもあります。虎の子の騎鳥隊と精鋭の派兵も整い次第、実行するそうです」
「そうですか! 公爵様も我らが騎鳥隊を目にしてくれたようですね」
「ええ、空を制する百四騎は大いに頼りになってくれるでしょう」
「そうでしょうとも! そうでしょうとも!」
褒められれば自分の事のように喜ぶのはタークさんと似ている。
「これはエンドリューも負けておられんな」
「我が竜騎兵も今以上に励まなければなりませんな」
お偉方が揃い踏みだな。
そんな中で、ギラギラの視線をツッカーヴァッテの方へと向けるのは――狂乱の双鉄鞭の異名を持つ武闘派のバリタン伯。
ぎらついた目に負けないくらいに禿頭をピカリと輝かせ、王様の御前であるにもかかわらず、腰に差していた一メートルほどの長さからなる真鍮色が特徴的なオリハルコン製の硬鞭を諸手に握れば、
「公爵様には感謝することばかりですな!」
そう言いながらズカズカと強い足音を立ててツッカーヴァッテへと近づく。
歩みに合わせるようにジージーが拘束した人物を跪かせる。
「ようやく姿を見せたかバルバダイ!」
「なんだ随分と頭が寂しくなったようだな? いや、以前から寂しかったかな」
「戯れ言を吐けるくらいの余裕はあるようだな! 貴様が行ってきた悪道をここで言い連ねてくれようか!」
「黙れ禿頭伯爵! 私の行いは全て正道である!」
「おう! よう吠えよったな! その頭をかち割ってくれようか!」
「この脳漿には貴様では補うことの出来ない叡智が詰まっているんだよ!」
顔というか頭全体を真っ赤にしてお怒りのバリタン伯に対して物怖じしてないってのは大したもんだ。
ガリオンやジージーにはビビってたのにな。
屈強な体からなる王侯貴族の面々を前にしても怯まないのは、恐怖以上に不快感が勝っているからなんだろう。
目の前から接近してくるのは――、
「お帰りなさいませ主」
「ただいま戻りました」
先生がヒッポグリフに騎獣しての出迎え。
ツッカーヴァッテの横に並べば、
「おや? ガリオン殿の代わりに見ない人物が乗っておりますね」
「なんだ貴様は!」
「初対面で威圧とは、どうやらまともな人物ではないようですね」
「ああんっ!」
恫喝したところで迫力無し。
よしんば迫力が有ったとしても、先生の肝を冷やす事なんて出来ないだろうけど。
「自称天才。真の天才ってのは先生のような人を言うんだぞ」
「いやいや、私などまだまだ発展途上です」
イケメンによる爽やかスマイル。でも不思議と、まったくもって嫌みったらしくないんだからね。羨ましいです。
「気にいらんヤツだ」
と、バルバダイ。
初対面は最悪の印象といったところか。
「主、降り立つのはどちらに?」
「王城の広場にでも」
「王城ですか。ふむふむ――なるほど」
バルバダイに目を向けながら背に乗る面子を眺める。
「おお! ゴロ太殿もご無事そうで何より。本当に良かった」
「ただいま♪」
「お帰りなさい」
優しく返しつつ次に目を移すのは、ワックさんに抱えられた頭部だけの白い体毛の熊――シュネー。
「拘束されている人物はカイメラの主要人物と見てよいでしょうか?」
「流石です」
ゴロ太が王都より出て、帰ってきた時には同じ毛並みの頭部だけの熊。
今回の連れ去り事件がカイメラのものであり、関係者と思われる人物を連行しているところから即座に理解してくれるので無駄に説明をしなくていい。
「ギルドの修練場ではなく王城に着地したい事に得心がいきました」
丁度、王都の防御壁を越えたところでそう言えば、
「先触れを担当しましょう」
と、継いでくれる。
「お願いします」
先生が先行し、直ぐさま兵が一斉に集まってくる。
「どうよ。お前が愚かと言っていた王を守る兵達の動きは? 迅速だろう」
ドヤ顔で問うてみれば、おもしろくなさそうな表情になるだけでなにも返す事はない。
――着地。
と、同時に、
「おお! 帰ってきたかトールよ!」
相も変わらず覇気に漲る声である。俺の内臓までビンビンに届いたよ。
でもって、華麗に回避。
筋骨隆々になってからというもの、無駄にハグしたがるのはなんとかしてほしい。
今回は上半身が裸じゃなかったから良かったけども。
「おお! 美姫が抱くのはゴロ太ではないか! 無事で何よりだ!」
「ただいま王様」
「うむっ!」
ニッコリ笑顔のゴロ太に対し、負けじと破顔で返す王様。
「おお! おおっ!! 公爵様! 感謝いたします!」
「あ、ハダン――伯? なんか窶れましたね……」
自分の失態でベルの大切な存在であるゴロ太がどうなったのかが心配だったようで、心労が原因なのかかなり窶れていた。
ヘアスタイルも乱れてはいるけど、普段からウェービーなこともあって、そこまで目立ってはいないから気品さは維持されている模様。
「心配せずともよいと言ったのだがな。普段はクセのある自信家だが、心配事が起これば小心になるのがハダンの欠点よ」
「なら、普段通りの自信家に戻ってくれて構いませんよ」
「とのことだぞハダンよ。トールの言うように自信を漲らせてみよ」
「いえ、少しは弁えるという事を今回の事で学ばせていただきました」
「だそうだぞ。トール」
「人間、いくつになっても学ぶことは大事ですよね」
何よりロイル領を目にしてきてハダン伯が如何に優秀な領主かというのも分かったので、足を運んで良かったとフォローを入れつつ、
「タークさんより言づてもあります。虎の子の騎鳥隊と精鋭の派兵も整い次第、実行するそうです」
「そうですか! 公爵様も我らが騎鳥隊を目にしてくれたようですね」
「ええ、空を制する百四騎は大いに頼りになってくれるでしょう」
「そうでしょうとも! そうでしょうとも!」
褒められれば自分の事のように喜ぶのはタークさんと似ている。
「これはエンドリューも負けておられんな」
「我が竜騎兵も今以上に励まなければなりませんな」
お偉方が揃い踏みだな。
そんな中で、ギラギラの視線をツッカーヴァッテの方へと向けるのは――狂乱の双鉄鞭の異名を持つ武闘派のバリタン伯。
ぎらついた目に負けないくらいに禿頭をピカリと輝かせ、王様の御前であるにもかかわらず、腰に差していた一メートルほどの長さからなる真鍮色が特徴的なオリハルコン製の硬鞭を諸手に握れば、
「公爵様には感謝することばかりですな!」
そう言いながらズカズカと強い足音を立ててツッカーヴァッテへと近づく。
歩みに合わせるようにジージーが拘束した人物を跪かせる。
「ようやく姿を見せたかバルバダイ!」
「なんだ随分と頭が寂しくなったようだな? いや、以前から寂しかったかな」
「戯れ言を吐けるくらいの余裕はあるようだな! 貴様が行ってきた悪道をここで言い連ねてくれようか!」
「黙れ禿頭伯爵! 私の行いは全て正道である!」
「おう! よう吠えよったな! その頭をかち割ってくれようか!」
「この脳漿には貴様では補うことの出来ない叡智が詰まっているんだよ!」
顔というか頭全体を真っ赤にしてお怒りのバリタン伯に対して物怖じしてないってのは大したもんだ。
ガリオンやジージーにはビビってたのにな。
屈強な体からなる王侯貴族の面々を前にしても怯まないのは、恐怖以上に不快感が勝っているからなんだろう。
2
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる