異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1759【問答】

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「よさんかバリタン」

「しかしですな!」

「まあ、落ち着け」
 なだめるようにバリタン伯の肩にポンと手を当てれば、

「ぬぅぅ……」
 納得はいかないが王が言うならばと、硬鞭を帯へと差す。

「随分と逞しくなったようだな愚かなる王よ」

「お前は昔から痩せ細っているな」

「食事を取るよりも研究と実験に励んでいたいからな」

「そういう性格だったな」

「それもこれも全てはこの大陸、ひいては貴様のためだったのだ!」

「だがお前はあまりにも道を踏み外していた」

「はっ! どの口が言う!」
 バルバダイのこの発言に言葉を詰まらせてしまう王様。
 これを攻め時とばかりにバルバダイはまくし立てた。
 魔王軍へ挑み始めた時はまだよかった。
 だが息子を亡くしてからの貴様はあまりにも情けなかった。
 民を守ることを怠り、自分たちだけを守るように堅牢な鋼鉄の城門を急遽、城へと取り付けた。
 自分たちを咎人とした後の貴様等の行いは、王侯貴族の汚れた部分だけがよく出ていたよ! ――と、言い連ねる。
 
 これには先ほどまで顔全体を真っ赤にしていたバリタン伯も思うところがあったようだ。
 バリタン伯だけでなく、王様と常に行動していた他の面々もバルバダイを直視することが出来ないでいた。

「事実を言われれば口を真一文字とは傑作だな。結局、貴様等も自分の命が大事なのだ。結果、民草を盾としてこの城に籠もったのだからな! 私を信じ私の力をそのまま利用していれば、今とはまた違った結果になっていたかもしれんというのに」

「お前の発言は耳に痛烈に響くが、後半の方は受け入れがたいな」

「なんだ? 創り出された生物やアンデッド兵を拒むということか?」

「無理矢理に存在自体を変化させられる者達を戦力とするのはどうなのだ」

「良心が痛むとかほざくつもりじゃないよな! 言っただろう、民草を盾にしていたんだよお前等は! 盾として利用するのと、被検体にするのがどう違う?」

「命を利用しようとしている観点では、全くもって変わりないことですね」
 ここで先生が横から参加。
 先生の参加で王様達はますますばつが悪そうに表情を曇らせてしまう。

「分かっているようだなそこの優男は」

「どうも」
 自分を肯定する存在がこの場にいることが嬉しかったようで、バルバダイは顔を緩める。

「こんな連中と行動せず私と行動するべきだと思わないか?」

「いえ全くそうは思いません」
 柔和な笑みで即答にて拒絶。
 途端に表情が渋いものとなって先生を睨むも、どこ吹く風。

「そもそもの話、王が我が身を第一に考えるのは当然のことです。時には民草を盾にするという決断を下すこともあるというもの」

「はっ! 中々に邪悪な発言だな。受け入れられん」

「聞く者によってはそう聞こえて当然でしょうね。誰もが同じ考えを持つということはあり得ませんので。魔王のように力で無理やりに同調させるとなれば話は別ですが」

「なにが言いたいのだ貴様は!」

「非常時となれば民を切り捨てることも覚悟しなければならないということです」
 おう……先生……。

「そういった状況になっても王都や他の領地に残ろうとするのは、自分たちが生活を営むための地を自らが選択し、その地で失いたくないものがあったから。安寧と自由を欲するならば、それなりの責任と覚悟が必要となる。それを受け入れる覚悟がないなら流民にでもなればいい。だがそうしなかった。最終的な選択責任は自分で下す。それを怠れば最悪の結果となるでしょう」

「何という無責任な発言か! そもそも民草が自由に領地と領地を移動できると思うなよ! 労働力をおいそれと他に移動させるわけがないだろうが! 制限があるんだよ! まったくこれが勇者の言う天才という者か! ただの無知な外道ではないか!」

「外道の方に外道と言われれば、それは正道ということでしょうかね」

「言葉遊びで逃げようとするな優男! 民あっての国なのだよ!」

「その言は正しい」

「はぁ! なんだこいつは! 否定したり肯定したり!」

「言葉を交わしているのですからね。その中には肯定する内容もあってしかるべきでしょう。全てを否定、反対するとなればそれは何も考えていない愚者の行い」

「なんなのだ本当にこいつは……。こいつと喋っていると頭がおかしくなりそうだ……」

「民あっての国と言いましたがそれはその通り。しかし、その民がまず拠り所とするのは国ではなく統治者ですよ」

「はあ!?」
 ――統治者という自分たちを律する者がいれば人々はそれに頼りたくなる。
 難しいことを考えることを存外、人は嫌がるから。
 仕来り――法により一定の規則を設ければそれにより安全を確保できる地が出来る。そうなればその地へと人々は集まる。
 これにより国の基盤が出来る。
 律してくれる統治者がいれば民が集まり国となる。
 民あっての国ではあるが、まず統治者がいなければ人は集まらず国とはならない。
 だからこそ、律する立場である統治者は自分の命を第一に考えなければならない。

 ――森閑が訪れる。
 先生の発言は受け取る者によっては過激な発言。
 だからなのか、それを真正面から聞かされたバルバダイはあんぐりと口を開き、時折、魚のように口をパクパクとさせていた。
 
 ややあってはたとなったのか、

「おい! 本当にコイツは勇者の知者なのか!」
 俺に問うてくるので、

「そうだ、俺だけでなく様々な人々をその知恵で支えてくれている」

「コイツは魔王様の横に立つのが相応しいぞ!」

「魔王ですか。魔王の横には立ったことはないですし立つつもりもありませんが、乱世においては奸雄と称される御方のお側で力添えをしていたことはありますよ」

「奸雄だと?」

「ええ、先進的で知勇も破格な御方でした。対面すれば魔王ですら身構えてしまうでしょう」

「何を言っている……そんなヤツがいたなど聞いたこともない」

「真実ですよ」

「こいつはいかれているぞ勇者!」
 ここでも振ってくるけど、正直、振ってほしくないんだけど……。
 俺がどうこう出来るやり取りだと思わないでいただきたいね……。

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