異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1761【要塞組やはり強し】

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「彼の者の処遇は追々として、改めまして――お帰りなさいませ。主に皆様」

「王都は異状なく?」

蹂躙王ベヘモトの軍勢がこりもせずに要塞トールハンマーを攻撃してきました」

「……随分と軽く言いますね。軽くあしらったと見ていいでしょうか?」

「はい。十万にもなる軍勢ということから、今までとは違った本格的な攻撃でしたよ」

「十万!? 俺たちがロイル領に行ってから数日の出来事で十万の軍勢!?」

「今回の総指揮を務めた者は果断に富む者でした」
 三百万からなる軍勢を有する蹂躙王ベヘモト
 兵を多く動かすにはそれなりの準備も必要だし、行軍速度も全体の足並みが揃わないと隊列の乱れから動きは遅くなるが、十万を素早く動員しての行軍は見事と先生が褒める。
 そこまでのことが起こっていたなんてね……。
 軽くあしらえるような数ではないと思うんですけどね……。

「荀彧殿と王が王都に留まっている以上、問題はなかったようですね」

「無論です。ベル殿がおられなくてもこちらには優秀な者達が多くいるというのは、近くで行動を共にするベル殿ならご理解も早いかと」

「その通りですね」
 となれば、

「ゲッコーさん達が大活躍してくれたようですね」

「ゲッコー殿だけでなく、コクリコ殿やシャルナ殿、リン殿が八面六臂のご活躍だったそうです」

「流石は俺のパーティーメンバー。これに加えて高順氏が指揮する要塞兵も強強つよつよですからね」

「強いのは要塞兵だけではありませんよ」
 こちらは南伐に備えて丁度、兵を整えている最中だった。
 最前線を守る要塞兵は今後の事を考えて休暇を与え、後方に下がらせていた。
 相手方はそこを狙ってきたそうな。
 十万の大軍勢を迎え撃つのは、王都から入れ替わりでやってきた兵達だった。
 トールハンマーの地形に不慣れではあったが、それでも高順氏の指揮下で大いに防いでくれたという。
 
 高順氏と一緒に行動するロンゲルさんと、統一性のない方言を話す部下達が古参として要塞新参兵の指導を担当し、防衛行動の円滑化に一役買ってくれたそうだ。
 
 そして、王都から素早く要塞まで到着可能な移動手段を有しているゲッコーさんとS級さん達が要塞へと到着したことで戦況は一変。
 相手からすれば経験のない武器と兵器による攻撃によって前衛が悉く崩壊。
 長距離攻撃も可能だから後衛の被害も甚大だったそうな。
 
 経験のない兵器による攻撃で混乱した十万の蹂躙王ベヘモト軍。
 収拾しようとするも、そこはゲッコーさんとS級さん達。
 一切の容赦はなかったようで、収拾に動き出している存在を瞬時に見抜き、指揮権を有した者達を狙撃、狙撃、狙撃――。
 次々と主要な者達の命をヘッドショットで仕留めたという。
 狙撃時には確実に命を刈り取ってやろうと、アンチマテリアルライフル・バレットM82を全員が使用。
 
 収拾するために動く存在が目の前で急に頭部を失うという光景。
 強弓や弩でも難しい芸当――ジージーみたいなのは除く――。
 不可思議な攻撃により指揮する者達が倒れていく。
 頭部が撃ち抜かれても矢が突き刺さるとかではなく消失。
 となれば魔法なのかと相手は思う。
 魔法の類いでピンポイントにて指揮官の頭部を奪うという恐怖は、次は自分にそれが向けられるという恐怖へと変わる。
 
 収拾する存在がいなくなれば、混乱は収まることはなく拍車がかかるだけ。
 大軍勢が混乱してしまえば、密集隊形ゆえに動きが鈍くなる。
 前衛が後退しようとしても、その後方で陣取っている者達は前衛の後退の動きに反応が遅れてしまいぶつかり合う。
 
 ――こういった所を見逃さないのが陥陣営と恐れられる高順氏。
 高順氏と指揮下の騎馬隊が要塞から打って出れば、乱れに乱れた軍勢が刈り取られていくという流れ。
 打って出てくる存在が、寡兵によってこれまでの侵攻を悉く防いできた猛将と知れ渡れば相手方は更に混乱。
 同士討ちまで始まる始末だったそうな。
 指揮する者達はゲッコーさんとS級さんによって命を奪われていき、野戦では高順氏が指揮する騎馬軍団が猛威を振るう。
 ここにシャルナとリンが空から大火力の魔法。
 爆撃を思わせる火力を見舞う中で、負けじと高順氏と一緒に最前線を駆けていたのが……コクリコだそうな。

 以前もそうだったな……。

 装身具やサーバントストーンであるアドンとサムソン。
 翼幻王ジズベスティリスから賜ったマジックリングに翼幻王ジズと同じ羽衣も使用しての大立ち回り。
 低位魔法であるファイヤーボールであっても上位魔法クラスの破壊力を繰り出し、更には翼幻王ジズと同じ羽衣をしていることから、天空要塞の者達が敗北したという物的証拠を突きつけられてしまい、蹂躙王ベヘモトの軍勢は戦いを維持する士気が完全に砕けたという。
 
 先生からの報告では、それを間近で目にしたコクリコは大満足となり、調子に乗って大暴れだったそうだけど、引き際も肝心と高順氏に強制的に後退させられたそうな……。
 コクリコらしいと言えば、コクリコらしい……。
 俺たちがいなくてもブレない振る舞いに感心するよ……。

「それでその後は」

「いつもの如く不体裁な敗走だったそうです。今回は十万という数でしたから今までとは比べものにならないほどの見苦しさだったとか。逃げる背中に向けて挑発するように陥陣営殿と麾下の騎馬兵が侮辱の哄笑を叩き付けたそうです。寡黙な陥陣営殿の哄笑を直に聴けなかったのは残念の極み」
 だそうな。

「しかし弱い弱い。こちらがいくら強すぎるといっても、今回の総指揮だったラダイゴロスはなんとも脆弱な者です」

「ラダイゴロス?」
 聞かない名だな。
 十万を指揮するくらいだからかなりの存在なんだろうけど。

「意気揚々と来たのはいいものの、戦い方を知らない無能でした」
 ん? こちらの動きを見極めての行動は迅速だったと褒めていたと思えば、無能という言葉が出て来るなんてね。

「無能も無能な総領息子のラダイゴロスはランドグリット自慢の息子達の中でも底辺も底辺ですよ。あれが嫡男となれば次の代で蹂躙王ベヘモトは終焉を迎えるでしょうね」
 と、先生が声高に相手を馬鹿にする。
 しかもこういった状況が訪れた時には、高順氏にも高笑いと共にこういった発言をするよう事前に指示をしていたという。
 麾下の騎馬兵たちにも同様の事を言わせ、侮辱の輪唱を逃げる背中に放ったということだった。

「となれば――今回、攻めてきた総領息子は大恥を掻かされたってことでしょうから、次も躍起になって攻めて来ると思うんですが」

「幾度となく攻めてこようとも結果は一緒ですよ。次回からは主達も参加する事になるので必勝は揺るぎません」

「あ、はい……」
 ちょっと休みたいとも思ったけど、それは最前線で戦っている面々に対して失礼になるから言わないでおく。

「少ないですが二、三日はお休みください」
 そのお言葉がすごく有り難いです。
 先生も言ってくれたことだし、ここはしっかりと休ませてもらいたい。

「その間に主にはお願いしたい事もありますので」

「あ、はい……」
 別段、ゆっくりと出来るわけではないんだな。
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