異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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PHASE-1777【まずは対話から】

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「猛者……か……」

「ええ。蹂躙王ベヘモトの近衛であるデイライトに所属し、蹂躙王ベヘモトの子らの目付役でもあります。近衛の中でも四天王と呼ばれる者です」
 四天王――ね。
 クロウス氏と互角であってもおかしくない肩書きだな。

「名を知りたいけど、それは相手の口から聞かせてもらおうかな。先触れのために来たのか、単独で攻めてきたのかは分からないけど、挨拶してから此処へと来た訳を聞くのがいいだろうね。名前共々」

「それが宜しいかと」
 ジージーと言葉を交わす中で、

「来るよ!」

「おう、シャルナ」

「あ、トールじゃない! 戻ってるなら連絡してよ!」
 なんで怒ってんだよ?

「いるなら挨拶してるっての。どこに行ってたんだよ?」
 問えば、ハイエルフのシャルナだからこその目の良さと、レビテーションが使用できる貴重な存在であるから要塞周辺の監視を任されているという。
 南側から反応があったから此処へとすっ飛んで来てくれたわけだ。

「よっし! まずはコクリコに続こうか」
 先に塔に設けられた監視場所へと向かったコクリコの後に続けば、

「流石は優秀な方々」
 俺たちが立つ監視塔としても利用される軍議室のある塔と各塔を繋ぐ壁上には、S級さん達が武装して待機。
 報告はすでに伝達されているようで、各々が手にするのは地対空ミサイルのFIM-92スティンガー。
 相手に攻撃意思があると判断したと当時に即座に毒針発射といった流れ。

「まずは一人でこの難攻不落の地へと来てくださる武人に敬意を」
 高順氏の声に合わせて、S級さん達だけでなく要塞に集まっている兵と冒険者たちも手にする弓や弩。スタッフやワンドを空から地面へと向ける。
 攻撃担当とは違って、守備を担当する面子は障壁魔法を即時展開できるように臨戦態勢は崩さない。

「さあ、来るよ!」
 シャルナの警告。
 ビジョンを使用しなくてもよく見える。
 蒼穹の下を白銀の翼を豪快に、そして悠々と羽ばたかせながらこちらへと接近してくる存在。
 翼のゆったりとした羽ばたきとは裏腹に、移動速度は超高速。
 相手側の陣営に潜入しているコールサイン・ハリエットから報告が入って直ぐに肉眼で確認できることから、相手の移動速度の凄さが分かるというもの。

「さて」
 横に立つコクリコに負けないように肩幅分だけ足を広げて腕組みで待機。
 いつでも来いと空へと視線を向ける中で、

「減速してきたな」
 速度を落とすということは、速度を活かしてこちらへと突っ込んでくるという無謀な行為はしないでくれるようだ。

「止まった」
 要塞の手前で停止すればこちらを見下ろしてくる。
 単身で来るだけの胆力と自信。強者の風格ってのが伝わってくる。
 威風堂々という言葉がよく似合う存在だ。
 対して見上げる俺の鼓動は緊張から早くなる。
 
「キラッキラしてんな」
 輝く白銀の鱗は日の光が反射すれば宝石のようでもある。
 それを守るブレストプレートは反対色の黒色。
 光沢のある黒色のソレは白銀の鱗と一緒になって輝く。
 頭部を守るような兜はしておらず、後頭部の方へと伸びた赤い一本の角が目立つ。
 空中で制止しつつ見回してくるスカイブルーの瞳の中にある縦長の黒目。

「あんなのがいたんだな」
 見ただけで分かる強者としての佇まい。
 よくもあんなのを含めた十万と渡り合えたもんだ。

「どう戦ったんだよ?」
 横にいる無双の働きをしたとされるコクリコに問えば、

「あんなのはいなかったですよ」

「いなかったな」
 と、ゲッコーさんも確認していないとのこと。
 ハリエットと連絡を取る中で、ジージーに質問をしていたから知らないのは理解してたけど。
 
 とりあえずは――、高順氏を見れば俺に目配せ。
 
 なので、

「どなたですか? そして何用でここへと来たのでしょうか?」
 要塞指揮官ではなく俺が誰何。

「有無も言わずの迎撃がないこと感謝する」

「ほ~」
 感心してしまう。
 俺が想像していた、そしてこれまで見てきた蹂躙王ベヘモト軍とは毛色が違う。
 武人然としている。

「我が名はメッサーラ・ハー」

「木星の大重力に対応できそうな名前だな。と、こっちだけの話なので続けてどうぞ」

「先の戦い見事であった」
 ちょっとムッとしてしまう。

「俺はその時、この場にはいなかったからよく分かってはいないけど、こちらはそちらを退けている。だというのになんとも上からな言い様だな。俺たちよりも高い位置にいるからって言動まで上からになることはないと思うよ」
 撃退され逃散させられた側が勘違いも甚だしい。
 
 そう思っているからこそだろう。公爵様の言うとおり! と、地頭のロンゲルさんが俺に続けば、要塞全体に波及。
 勝者を気取るな! という言葉がメッサーラへとぶつけられる。

「確かに負けている。今回のような大規模なものだけでなく、これまでの侵攻も悉く撃退されている」
 認めるんだね。
 以前までは蹂躙王ベヘモトの性格上、無駄な消耗をしたくないということから、魔王に対しての体裁でチマチマと攻めて来ていたが、今回は体裁ではなく本格的だった。
 だからこそ、負けた衝撃は大きいはずなんだよな。

「なぜここにきて本腰を入れてきたのか?」

「無論そちらが浄化を進めたことで、我々ものっぴきならない状況になったから。と、言っておこう」
 のっぴきならない割りには声は冷静そのもの。
 この背後には十万どころか三百万もいるんだから戦力自体、余裕はあるんだろうけどさ。
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