1,777 / 1,861
視線は南へ
PHASE-1777【まずは対話から】
しおりを挟む
「猛者……か……」
「ええ。蹂躙王の近衛であるデイライトに所属し、蹂躙王の子らの目付役でもあります。近衛の中でも四天王と呼ばれる者です」
四天王――ね。
クロウス氏と互角であってもおかしくない肩書きだな。
「名を知りたいけど、それは相手の口から聞かせてもらおうかな。先触れのために来たのか、単独で攻めてきたのかは分からないけど、挨拶してから此処へと来た訳を聞くのがいいだろうね。名前共々」
「それが宜しいかと」
ジージーと言葉を交わす中で、
「来るよ!」
「おう、シャルナ」
「あ、トールじゃない! 戻ってるなら連絡してよ!」
なんで怒ってんだよ?
「いるなら挨拶してるっての。どこに行ってたんだよ?」
問えば、ハイエルフのシャルナだからこその目の良さと、レビテーションが使用できる貴重な存在であるから要塞周辺の監視を任されているという。
南側から反応があったから此処へとすっ飛んで来てくれたわけだ。
「よっし! まずはコクリコに続こうか」
先に塔に設けられた監視場所へと向かったコクリコの後に続けば、
「流石は優秀な方々」
俺たちが立つ監視塔としても利用される軍議室のある塔と各塔を繋ぐ壁上には、S級さん達が武装して待機。
報告はすでに伝達されているようで、各々が手にするのは地対空ミサイルのFIM-92スティンガー。
相手に攻撃意思があると判断したと当時に即座に毒針発射といった流れ。
「まずは一人でこの難攻不落の地へと来てくださる武人に敬意を」
高順氏の声に合わせて、S級さん達だけでなく要塞に集まっている兵と冒険者たちも手にする弓や弩。スタッフやワンドを空から地面へと向ける。
攻撃担当とは違って、守備を担当する面子は障壁魔法を即時展開できるように臨戦態勢は崩さない。
「さあ、来るよ!」
シャルナの警告。
ビジョンを使用しなくてもよく見える。
蒼穹の下を白銀の翼を豪快に、そして悠々と羽ばたかせながらこちらへと接近してくる存在。
翼のゆったりとした羽ばたきとは裏腹に、移動速度は超高速。
相手側の陣営に潜入しているコールサイン・ハリエットから報告が入って直ぐに肉眼で確認できることから、相手の移動速度の凄さが分かるというもの。
「さて」
横に立つコクリコに負けないように肩幅分だけ足を広げて腕組みで待機。
いつでも来いと空へと視線を向ける中で、
「減速してきたな」
速度を落とすということは、速度を活かしてこちらへと突っ込んでくるという無謀な行為はしないでくれるようだ。
「止まった」
要塞の手前で停止すればこちらを見下ろしてくる。
単身で来るだけの胆力と自信。強者の風格ってのが伝わってくる。
威風堂々という言葉がよく似合う存在だ。
対して見上げる俺の鼓動は緊張から早くなる。
「キラッキラしてんな」
輝く白銀の鱗は日の光が反射すれば宝石のようでもある。
それを守るブレストプレートは反対色の黒色。
光沢のある黒色のソレは白銀の鱗と一緒になって輝く。
頭部を守るような兜はしておらず、後頭部の方へと伸びた赤い一本の角が目立つ。
空中で制止しつつ見回してくるスカイブルーの瞳の中にある縦長の黒目。
「あんなのがいたんだな」
見ただけで分かる強者としての佇まい。
よくもあんなのを含めた十万と渡り合えたもんだ。
「どう戦ったんだよ?」
横にいる無双の働きをしたとされるコクリコに問えば、
「あんなのはいなかったですよ」
「いなかったな」
と、ゲッコーさんも確認していないとのこと。
ハリエットと連絡を取る中で、ジージーに質問をしていたから知らないのは理解してたけど。
とりあえずは――、高順氏を見れば俺に目配せ。
なので、
「どなたですか? そして何用でここへと来たのでしょうか?」
要塞指揮官ではなく俺が誰何。
「有無も言わずの迎撃がないこと感謝する」
「ほ~」
感心してしまう。
俺が想像していた、そしてこれまで見てきた蹂躙王軍とは毛色が違う。
武人然としている。
「我が名はメッサーラ・ハー」
「木星の大重力に対応できそうな名前だな。と、こっちだけの話なので続けてどうぞ」
「先の戦い見事であった」
ちょっとムッとしてしまう。
「俺はその時、この場にはいなかったからよく分かってはいないけど、こちらはそちらを退けている。だというのになんとも上からな言い様だな。俺たちよりも高い位置にいるからって言動まで上からになることはないと思うよ」
撃退され逃散させられた側が勘違いも甚だしい。
そう思っているからこそだろう。公爵様の言うとおり! と、地頭のロンゲルさんが俺に続けば、要塞全体に波及。
勝者を気取るな! という言葉がメッサーラへとぶつけられる。
「確かに負けている。今回のような大規模なものだけでなく、これまでの侵攻も悉く撃退されている」
認めるんだね。
以前までは蹂躙王の性格上、無駄な消耗をしたくないということから、魔王に対しての体裁でチマチマと攻めて来ていたが、今回は体裁ではなく本格的だった。
だからこそ、負けた衝撃は大きいはずなんだよな。
「なぜここにきて本腰を入れてきたのか?」
「無論そちらが浄化を進めたことで、我々ものっぴきならない状況になったから。と、言っておこう」
のっぴきならない割りには声は冷静そのもの。
この背後には十万どころか三百万もいるんだから戦力自体、余裕はあるんだろうけどさ。
「ええ。蹂躙王の近衛であるデイライトに所属し、蹂躙王の子らの目付役でもあります。近衛の中でも四天王と呼ばれる者です」
四天王――ね。
クロウス氏と互角であってもおかしくない肩書きだな。
「名を知りたいけど、それは相手の口から聞かせてもらおうかな。先触れのために来たのか、単独で攻めてきたのかは分からないけど、挨拶してから此処へと来た訳を聞くのがいいだろうね。名前共々」
「それが宜しいかと」
ジージーと言葉を交わす中で、
「来るよ!」
「おう、シャルナ」
「あ、トールじゃない! 戻ってるなら連絡してよ!」
なんで怒ってんだよ?
「いるなら挨拶してるっての。どこに行ってたんだよ?」
問えば、ハイエルフのシャルナだからこその目の良さと、レビテーションが使用できる貴重な存在であるから要塞周辺の監視を任されているという。
南側から反応があったから此処へとすっ飛んで来てくれたわけだ。
「よっし! まずはコクリコに続こうか」
先に塔に設けられた監視場所へと向かったコクリコの後に続けば、
「流石は優秀な方々」
俺たちが立つ監視塔としても利用される軍議室のある塔と各塔を繋ぐ壁上には、S級さん達が武装して待機。
報告はすでに伝達されているようで、各々が手にするのは地対空ミサイルのFIM-92スティンガー。
相手に攻撃意思があると判断したと当時に即座に毒針発射といった流れ。
「まずは一人でこの難攻不落の地へと来てくださる武人に敬意を」
高順氏の声に合わせて、S級さん達だけでなく要塞に集まっている兵と冒険者たちも手にする弓や弩。スタッフやワンドを空から地面へと向ける。
攻撃担当とは違って、守備を担当する面子は障壁魔法を即時展開できるように臨戦態勢は崩さない。
「さあ、来るよ!」
シャルナの警告。
ビジョンを使用しなくてもよく見える。
蒼穹の下を白銀の翼を豪快に、そして悠々と羽ばたかせながらこちらへと接近してくる存在。
翼のゆったりとした羽ばたきとは裏腹に、移動速度は超高速。
相手側の陣営に潜入しているコールサイン・ハリエットから報告が入って直ぐに肉眼で確認できることから、相手の移動速度の凄さが分かるというもの。
「さて」
横に立つコクリコに負けないように肩幅分だけ足を広げて腕組みで待機。
いつでも来いと空へと視線を向ける中で、
「減速してきたな」
速度を落とすということは、速度を活かしてこちらへと突っ込んでくるという無謀な行為はしないでくれるようだ。
「止まった」
要塞の手前で停止すればこちらを見下ろしてくる。
単身で来るだけの胆力と自信。強者の風格ってのが伝わってくる。
威風堂々という言葉がよく似合う存在だ。
対して見上げる俺の鼓動は緊張から早くなる。
「キラッキラしてんな」
輝く白銀の鱗は日の光が反射すれば宝石のようでもある。
それを守るブレストプレートは反対色の黒色。
光沢のある黒色のソレは白銀の鱗と一緒になって輝く。
頭部を守るような兜はしておらず、後頭部の方へと伸びた赤い一本の角が目立つ。
空中で制止しつつ見回してくるスカイブルーの瞳の中にある縦長の黒目。
「あんなのがいたんだな」
見ただけで分かる強者としての佇まい。
よくもあんなのを含めた十万と渡り合えたもんだ。
「どう戦ったんだよ?」
横にいる無双の働きをしたとされるコクリコに問えば、
「あんなのはいなかったですよ」
「いなかったな」
と、ゲッコーさんも確認していないとのこと。
ハリエットと連絡を取る中で、ジージーに質問をしていたから知らないのは理解してたけど。
とりあえずは――、高順氏を見れば俺に目配せ。
なので、
「どなたですか? そして何用でここへと来たのでしょうか?」
要塞指揮官ではなく俺が誰何。
「有無も言わずの迎撃がないこと感謝する」
「ほ~」
感心してしまう。
俺が想像していた、そしてこれまで見てきた蹂躙王軍とは毛色が違う。
武人然としている。
「我が名はメッサーラ・ハー」
「木星の大重力に対応できそうな名前だな。と、こっちだけの話なので続けてどうぞ」
「先の戦い見事であった」
ちょっとムッとしてしまう。
「俺はその時、この場にはいなかったからよく分かってはいないけど、こちらはそちらを退けている。だというのになんとも上からな言い様だな。俺たちよりも高い位置にいるからって言動まで上からになることはないと思うよ」
撃退され逃散させられた側が勘違いも甚だしい。
そう思っているからこそだろう。公爵様の言うとおり! と、地頭のロンゲルさんが俺に続けば、要塞全体に波及。
勝者を気取るな! という言葉がメッサーラへとぶつけられる。
「確かに負けている。今回のような大規模なものだけでなく、これまでの侵攻も悉く撃退されている」
認めるんだね。
以前までは蹂躙王の性格上、無駄な消耗をしたくないということから、魔王に対しての体裁でチマチマと攻めて来ていたが、今回は体裁ではなく本格的だった。
だからこそ、負けた衝撃は大きいはずなんだよな。
「なぜここにきて本腰を入れてきたのか?」
「無論そちらが浄化を進めたことで、我々ものっぴきならない状況になったから。と、言っておこう」
のっぴきならない割りには声は冷静そのもの。
この背後には十万どころか三百万もいるんだから戦力自体、余裕はあるんだろうけどさ。
1
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる