異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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PHASE-1779【すぐ出しゃばる……】

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「さあ、こちらが挑むための理由は述べた。そちらの返答や如何に!」

「受けるものかよ!」
 ロンゲルさんが即拒否。
 これに皆さんも拒否の唱和。

「トールはどうするんだ?」
 なんで俺に振るのベルさん。

「ちょっと待ってくれ。ここで受けるとなると俺が相手をする事になるじゃないか」

「そうなるだろう。勇者なのだから」
 いやいや……、

「ジージー。あいつはクロウス氏といい勝負するってことだったよね」

「ええ。間違いなく。自分では太刀打ちできません」
 うん……。クロウス氏と互角ってなれば、俺の勝率はゼロパーセントですよ。
 ゲッコーさんとユーリさんが一緒に戦ってくれたから奇跡的な一撃を打ち込むことができたけども、タイマンならまず触れることも出来ずに倒されていただろう。
 で、いま俺たちよりも高い位置で翼を羽ばたかせているのはクロウス氏と互角。
 間違いなく殺されるね……。
 クロウス氏なら手心を加えてくれるかもしれないけど、あいつは絶対に命を奪うまでやる……。

「どうするのだ勇者」

「高順氏」

「ここは受けなくてもいいだろうが、受けなかったとなれば恥にもなる。相手はそれを考えてもいるのだろうから中々に賢しい知恵も回るようだ。こちらの知者のようにな」
 先生のことを曹操の知者から、こちらの知者へと呼び方が変更。
 俺の知らないところで親密度は上がっているご様子。
 
 ――確かにここで相手の提案に応じなければ、たった一人を恐れた――なんて喧伝されるかもしれない。
 南伐の為に王都へと集まってきている兵達の士気低下にも繋がる可能性がある。
 受けようが拒否しようが、メッサーラからしたらどっちに転んでもいいわけだ。

「存外、小賢しいな」

「搦手も出来てこそだろう? 戦いというのは」
 腕組みして見下ろしやがって。
 なんだその丸太みたいな腕は……。そんなぶっとい腕が金属よりも頑丈そうな白銀の鱗に覆われているとかチートじゃねえか!
 種族が違うとはいえ、生まれながらにして圧倒的な差がありすぎるだろう……人間とドラゴニュートって。
 
 本当に俺が戦うのか? 口から出そうになってしまうのをぐっと飲み込む。
 メッサーラが言葉を飲み込んだ時もこんな感じだったんだろうな。

「さあ、そちらの代表者は!」

「勝手に話を進めるな!」
 ロンゲルさんが受けないと言ってくれるのが俺にとって救いだな。
 このままお流れってのが有り難いが、それだとこっちがたった一人に言い様にされたと喧伝される。
 ああもう! たった一人に場を奪われているよ!

「さあ誰に談じ込めばいいのか!」
 強気な態度が更に強気になってきたな。
 ロンゲルさんと皆の罵声なんて耳に入れていないといったところ。
 だからこそ、

「おのれ! 如何に圧倒的な強さを誇る竜人とはいえ!」
 負けているのに一騎討ちや、こちらに対してすげない態度。
 ロンゲルさんはそれが我慢ならなかったのか、右手を勢いよく高らかに上げる。
 これに合わせて我慢の限界とばかりに、一緒に怒りを口から放っていた面々が一斉に鏃をメッサーラへと向ける。

「まあ――」
 怒髪天な方々を止めようとする高順氏の声を遮るように、

「いいでしょう。談じ込むという強気の姿勢を崩さないことを評価してやりましょう!」

「「え?」」
 発言を遮られた高順氏と俺がシンクロ。
 こういった状況で高ぶるのは一人しかいないよね……。

姑娘クーニャン?」「コクリコ?」――ここは揃わなかったが、考える事は一緒。
 ワンドをメッサーラへと向けるお馬鹿さんを制止しようとするも、それよりも早く二人が会話を始めてしまう。

「ほう、娘殿がここの代表かな?」

「そう考えてもらってもいいですよ」
 なんでそんな嘘を平然と言えるんだよ……。

「これはこれは大した女傑」

「語調からして、本心から言ってくれているようですね」

「この様な最前線の壁上に堂々と立っている時点で、ただの娘殿ではないだろうからな」

「分かっているじゃないですか!」
 何を勝手に二人で盛り上がってんのかね……。

「そもそも娘殿が纏っている羽衣は、ベスティリス様の物と同じ。となれば――」

「無論、私は強者です!」

「ならばこのメッサーラ・ハーの無礼な申し出を受け入れてほしいものだな」

「無礼であろうとも私の寛大なる心は――いつでも受け入れるというものです」

「大いに感謝する」

「いつ何時、誰の挑戦でも受けてあげましょう」
 燃える闘魂みたいなことを言いやがって!

「勝手に決めるんじゃない!」

「いつまでも相手に好き放題言わせておけば、それこそこちらの士気低下に繋がりますからね」
 そうなんだけども、

「あのような無礼者は我らが一斉に射かけて叩き落としてやりましたのに」

「なに言ってんですかロンゲル。無理に決まっているでしょう。ゲッコーとその仲間達ならいざ知らず、そんな矢をいくら浴びせたところであの鱗の下にある筋肉には届きませんよ。エルフの技量か強弓の使い手でないかぎりね」

「ううむぅぅ……」
 なんかコクリコが思慮深くなっている。
 戦いに関しては頭が回るほうだったけども、更に出来るようになっている――気がする。
 勝手に話を進めようとしているところは相変わらずなお馬鹿ではあるが。

「では娘殿が戦ってくれるのかな?」

「いいですとも!」

「ちょっと待てぇ!」

「なんですトール」

「流石にお前を戦わせる訳にはいかないっての!」
 いくら成長しているとはいえ、あいつと一対一は流石に無理がある。
 ベルやゲッコーさん達なら心配はないが、俺たちレベルでは明らかに無理がある相手だからな。
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