異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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視線は南へ

PHASE-1785【怒鳴る】

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 しかし――、

「唐突もいいところ。問いたいね――勝者の権限としてお宅の敗北理由を」

「理由はこれよ」
 縦長の黒目が見るのは現在も動かしている自らの翼。

「翼がどうかしたのか?」

「こちらは敗走からの再戦を願い出た。しかも生意気にも一騎討ちという条件を」

「そうだね」

「談じ込んだ結果そちらは受け入れてくれた。一対二ではあったが受け入れてくれたことに感謝した」

「クソ真面目なことで」

「だからこそ、こちらは条件を自らに課したのだ」
 ――ああ。なるほどね。
 だから自分の翼を見たわけだ。

「つまりはこちらに合わせて飛行せず、同じ目線の高さで戦ったと。こっちが頼みもしていないのに勝手にルールを作ってやっていたわけだな」

「そうなる。無理強いな戦いを願い出たあげく、自分だけが有利な空間を利用しての戦いとなれば戦士の恥」
 そりゃそうだけども、

「クソ真面目なことで」
 二度目のは若干、呆れ口調になってしまった。
 縮地使いで飛行も出来る。
 これに加えて強靱な肉体と障壁魔法も有している。
 そんなのが空からカロリックレイという名のゲロビ魔法をジャンジャカぶっ放していたら、一方的な展開となって勝負にならなかっただろう。
 結局のところメッサーラは全力で挑んできていない。

「禁じ手などせずに挑めばいいものを! これでは我々が道化のようではないですか!」

「娘殿の強さは本物。飛行を選択しても油断から手痛いことになっていただろう」
 後衛かと思っていた存在が前衛として良い動きをしてきたことに驚き、尚且つその動きに合わせての羽衣の存在は脅威であったと吐露。

「何より」
 ここで俺を見てくる。

「発展途上ではあるが、いやはやこの様な深手を負わされることになろうとは……」
 自慢の体を切り裂かれる。
 懐から小瓶を取り出して右前腕の傷口にかけているところからしてポーションの類い。
 
 しかし、

「回復阻害か……。この状態で戦闘継続となれば、次は首を斬り落とされるかもしれないな。敗北宣言という選択は正しかった」

「急に弱気な声になって。単身で挑んで来ておきながら、やられそうになればそのような言い様。なんとも身勝手。ここに十万で挑んでは情けなく壊走した者のお目付役というのが分かりますね」

「耳が痛いな」

「ならば挑み続けるべきかと」

「胆力のある娘殿である。だが時間切れだ。単独でここまで来てしまった。軍律に違反した行為でもある」

「ならば軍律違反を払拭するためにも勇者の首一つを持って帰るくらいはしないと示しがつかないでしょう」

「……おい……」

「ものの例えというものです」
 例えで俺を首チョンパにするな……。

「とんでもない娘殿だな」

「まったくだ」

「敵と同調しない」
 お前がそうさせたんだろうが。

「ここは引かせていただく。勝手に挑んでおいてのこの体たらくを大いに笑ってくれて結構だ。先の戦いで壊走した者達の背中へと放った嘲弄哄笑、以上にな」

「言う割には清々しいように見えるけどな」

「この勝負は勇者と娘殿の勝ちである」
 言えば反転。
 なんとも身勝手なことで。
 だからだろう、要塞方向からはあまりの身勝手な行動に対してメッサーラへと罵詈雑言。
 反転しつつ動きを見せないのは、当人が言ったようにその言葉を背中で受け止めるってことなのかな。

 ――うん……。
 ――……それにしても……。

「五月蠅い!」
 思っていたことがついつい口から出てしまう。
 背後の要塞へと向かってそこそこ怒りの籠もった声を上げてしまった。
 自分で発しておいてなんだが驚いてもいる。

「単身で来た相手をこき下ろすんじゃないよ。敵対しているとはいえこっちの対応は品格がなさ過ぎるんじゃないか!」
 えらいもんで言ってみれば静かになってくれる。

「戦いとは無慈悲なもの。だが、無教養な言動による振る舞いは己を愚鈍と紹介しているようなものだ」
 聞こえてくるのはベルの声。
 援護射撃とばかりに俺に続けば、ここからでも見えるのは真っ直ぐと背筋を伸ばす兵やギルドメンバー達の姿。

「すまないな。身勝手に挑んだあげくに、負ければ直ぐに逃げ果せようとする自分を擁護してくれて」

「別に擁護じゃないさ。次の戦いでも手心を加えてもらえればいいな。という俺の邪な投資だよ」

「おもしろいことを言う。これでまだ成長途中なのだからな。若い者は失態をしても挽回できる機会が多い。そこで成功すればいい。それこそ若者の特権だ」
 ――?

「なんのことだ?」

「こちらの話だ。次の戦いでは大いにやり合おう」

「いやいや、手心って言ってるよね」

「ハハハッ。おもしろいな勇者は。では――次に」
 言えば翼を大きく一度、羽ばたかせる。
 その動作だけで、

「あっという間だな」

「そうですね」
 縮地を使用しなくても、一度の羽ばたきで米粒サイズになってしまうメッサーラ。
 あの移動速度だからこそ、忍び込んでいるS級さん達の報告後すぐにこちらへと飛来することが可能だったわけだ。

「あれが近衛デイライトの中でも四天王に数えられるヤツか……」

「メッサーラほどじゃないにしても、残りの四天王と近衛の連中もかなりの強者揃いと考えて良いでしょうね」

「全く……。これにオーガロード千人からなる巧鬼って親衛隊もいるからな……」

「加えて三百万の兵です」
 考えるだけで気分が重苦しくなるってもんだ……。
 隣に立つコクリコは全く物怖じしていないけども。
 毎度、思うことだが少しくらいその胆力を分けてほしいよ。
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