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勇者御一行対炎竜王麾下戦闘後
PHASE-02
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資料を収めたファイルで肩を叩きながら足を進める整備長の威圧する姿に、正座スタイルの方々は戦々恐々だ。
方々の前で足を止めると、目線を同じ高さに合わせる為に蹲踞すると、一人一人に視線を向けていく。その様は完全に借金回収のため闇金から来たチンピラである。
――勇者御一行は綺麗な正座。そこは人で構成されてるからね。
対して、魔王軍の方々。
褐色で朱色のセミロング。前髪で三つ編みをつくって左から後頭部に流しており、髪で遊んでいる感を出しているのが、この現場での代表。炎竜王さんの右腕で、美人で定評のある、火蛇のンダガランさん。
その横では黒炎を背から尻尾に纏った、漆黒の毛並みのヘルハウンドさんが伏せの状態。
まあ、後はいいや……。正座にもなってないし。
「ひ・ど・い! もんですな! どうも、整備局より来ました。整備長のニーズィー・ブートガイです。こっちは――」
「整備員のピートマック・ウィザースプーンです」
口を開くと同時に首を左右に連動させ、再度威圧をかけている整備長。紹介を終えると、申し訳なく伏せている方々の顔を覗き込む始末。まったくもって嫌な性格をしているチンピラだ。勇猛果敢な戦い手たちが震えてらっしゃる。
「で、この抉れた大地、どっちがやらかしたんですか? 嘘つかないでくださいね。魔力粒子の痕跡調べれば、聖、魔、どちらが使用したかなんて一発なんですから」
大地が裂けて、隆起し、特に大きなダメージがある箇所を指さす整備長に、額に尋常じゃないくらいの冷や汗をかき、それを腕で拭うと、そのまま拭った腕で手を挙げ、
「俺です」
弱々しい声。
「えっと、勇者さん。お名前は?」
整備長の強権を抑止するために、挙手した勇者さんには僕が助け船で優しく接すると、僕を救世主を見るかのように、群青の瞳を輝かせている。
いや……、貴男がこの世界の救世主になるかもしれない方なんだけども……。
――――勇者さんの名前はエルン・フェクシス。僕たちが住まうガラン大陸の南西に位置する端っこにあるスミー村の出自。
「お上りさんか~王都近くまで来ちゃって意気込みすぎたかな~」
うるさいチンピラだよ。
威圧することをやめず、右頬にある傷を指でなぞりながらエルンさんに見下した視線。田舎出身なのが申し訳なさそうなエルンさん。かしこまらなくていいですよ。
この方が入ってくると話が進まなくてイライラする。長嘆息を一つ行って癒やしの青空を眺める僕。
「お上りさんでもルールはわかってるでしょ~」
整備長……。お願いだから追い詰めないでください。勇者御一行の目が尋常じゃないくらい落ち着きがないですから。
それに、呼応するかのように魔王軍の方々も、いつ自分たちに矛先が向けられるのかと身構えており、ヘルハウンドさんなんて仰向けになって、屈服の証である、お腹を見せようとしていたので、とっさに僕は制止した。
いや、ねえ。本当に……。ぶっちゃけ怒って力任せに来られたら、僕らなんてコロイチなんだよね。【条約】に守られてるから整備長は調子こいてるけど、本来なら瞬殺ですよ。我々なんて。
「皆さん、とりあえず立ってください」
整備長と違って常に優しい語調だから、御一行に魔王軍の方々。僕を頼ろうとすがるように一斉に視線を向けてくる。
手をすっと前に出して、現場検証の為に各所を見回ることを告げると、途端に僕の後ろに並び始めた。
いやいや、やめてよ。なんなの、この引き連れてる感。僕、勇者じゃないんで……。
「いい天気だな~心地よい風。それを台無しにする燻った臭い」
僕の横で悪態ばかりつく整備長。
方々、正座時同様、前を向くことなく視線下方45度凝視のスタイルを徹底的に貫いている。
――――広範囲でやってるな~。なんと言うか、やる気が満ちていたという痕跡は窺える。
「先ほど、ニーズィーさんが言われたように、王都までわずかだったもので、力がはいっちゃって……」
勇者とは思えないか細い声。整備長それ聞いて、やっぱりねとばかりに口角を上げて小馬鹿にした笑み。この人は本当に! 一回ぐらい、ここにいる方々にボコボコにされるべきだと思うよ!
「我々も、激闘で高揚してしまい、過激になっていったのも悪かったと…………」
魔王軍サイドからの助け船。ンダガランさんが僕たちに頭を下げてくる。そんなンダガランさんに勇者御一行がご助力感謝とばかりに頭を下げている。変な光景である。
街道、平原に森。大きな爆発あとや、地表への損傷。数は五つ。五つか~。
「戦術クラスの大魔法を五つ確認」
口頭と指さし確認で損傷箇所をチェック。方々にチェックが間違いないか顔を向けると、間違いないと、頷いてくれる。
「勇魔戦条約違反ですな」
整備長の口にする勇魔戦条約違反。正式には勇者魔王間戦闘規定条約。
――大陸のいたる各所にて起こる戦闘。
常人では想像のつかない破壊力によって、大地が疲弊していくのを憂いた一般の方々。まあ、この中には僕たちも入るんだけど。
このまま戦いを続けることで、どちらが勝利したとしても、残った大地にはなんの魅力もないと提案を出したのが先代の王様になる。
両陣営も戦後の事を考慮し、話を聞き入れて出来たのがこの条約。
そして、僕たちみたいな常人が間に入り、環境保全や修復に励み。違反を行った者を取り締まる。
腕力ではまったくもって刃が立たない僕たちは、条約に守られながら仕事をこなし、両陣営のトップがこれを強く遵守することで、圧倒的な力を有した方々は、強い態度に出ることが出来ない。
基本、皆さんルールを守るので、相当に出来た方々なのは間違いない。それをいいことに調子こいてるのがいまここに一名いるけども。こんな調子こいてる方が、条約の均衡を崩すんじゃないかとヒヤヒヤする。
王都より二里の位置は、多方面より王都に続く道が重なり合う交通の要衝。
また、破壊力なども考慮して、王都から五里の位置までは、攻城戦に使用される、戦術クラス以上の大魔法の使用は回数が制限される。
戦略クラスの大魔法となると、絶対禁止で、もしも使用しようものなら両陣営のトップから粛正される。
この二里の位置ならば、使用可能な大魔法は両陣営、二度ずつと定められており、計四回。五度の使用は完全なる条約違反となる。
方々の前で足を止めると、目線を同じ高さに合わせる為に蹲踞すると、一人一人に視線を向けていく。その様は完全に借金回収のため闇金から来たチンピラである。
――勇者御一行は綺麗な正座。そこは人で構成されてるからね。
対して、魔王軍の方々。
褐色で朱色のセミロング。前髪で三つ編みをつくって左から後頭部に流しており、髪で遊んでいる感を出しているのが、この現場での代表。炎竜王さんの右腕で、美人で定評のある、火蛇のンダガランさん。
その横では黒炎を背から尻尾に纏った、漆黒の毛並みのヘルハウンドさんが伏せの状態。
まあ、後はいいや……。正座にもなってないし。
「ひ・ど・い! もんですな! どうも、整備局より来ました。整備長のニーズィー・ブートガイです。こっちは――」
「整備員のピートマック・ウィザースプーンです」
口を開くと同時に首を左右に連動させ、再度威圧をかけている整備長。紹介を終えると、申し訳なく伏せている方々の顔を覗き込む始末。まったくもって嫌な性格をしているチンピラだ。勇猛果敢な戦い手たちが震えてらっしゃる。
「で、この抉れた大地、どっちがやらかしたんですか? 嘘つかないでくださいね。魔力粒子の痕跡調べれば、聖、魔、どちらが使用したかなんて一発なんですから」
大地が裂けて、隆起し、特に大きなダメージがある箇所を指さす整備長に、額に尋常じゃないくらいの冷や汗をかき、それを腕で拭うと、そのまま拭った腕で手を挙げ、
「俺です」
弱々しい声。
「えっと、勇者さん。お名前は?」
整備長の強権を抑止するために、挙手した勇者さんには僕が助け船で優しく接すると、僕を救世主を見るかのように、群青の瞳を輝かせている。
いや……、貴男がこの世界の救世主になるかもしれない方なんだけども……。
――――勇者さんの名前はエルン・フェクシス。僕たちが住まうガラン大陸の南西に位置する端っこにあるスミー村の出自。
「お上りさんか~王都近くまで来ちゃって意気込みすぎたかな~」
うるさいチンピラだよ。
威圧することをやめず、右頬にある傷を指でなぞりながらエルンさんに見下した視線。田舎出身なのが申し訳なさそうなエルンさん。かしこまらなくていいですよ。
この方が入ってくると話が進まなくてイライラする。長嘆息を一つ行って癒やしの青空を眺める僕。
「お上りさんでもルールはわかってるでしょ~」
整備長……。お願いだから追い詰めないでください。勇者御一行の目が尋常じゃないくらい落ち着きがないですから。
それに、呼応するかのように魔王軍の方々も、いつ自分たちに矛先が向けられるのかと身構えており、ヘルハウンドさんなんて仰向けになって、屈服の証である、お腹を見せようとしていたので、とっさに僕は制止した。
いや、ねえ。本当に……。ぶっちゃけ怒って力任せに来られたら、僕らなんてコロイチなんだよね。【条約】に守られてるから整備長は調子こいてるけど、本来なら瞬殺ですよ。我々なんて。
「皆さん、とりあえず立ってください」
整備長と違って常に優しい語調だから、御一行に魔王軍の方々。僕を頼ろうとすがるように一斉に視線を向けてくる。
手をすっと前に出して、現場検証の為に各所を見回ることを告げると、途端に僕の後ろに並び始めた。
いやいや、やめてよ。なんなの、この引き連れてる感。僕、勇者じゃないんで……。
「いい天気だな~心地よい風。それを台無しにする燻った臭い」
僕の横で悪態ばかりつく整備長。
方々、正座時同様、前を向くことなく視線下方45度凝視のスタイルを徹底的に貫いている。
――――広範囲でやってるな~。なんと言うか、やる気が満ちていたという痕跡は窺える。
「先ほど、ニーズィーさんが言われたように、王都までわずかだったもので、力がはいっちゃって……」
勇者とは思えないか細い声。整備長それ聞いて、やっぱりねとばかりに口角を上げて小馬鹿にした笑み。この人は本当に! 一回ぐらい、ここにいる方々にボコボコにされるべきだと思うよ!
「我々も、激闘で高揚してしまい、過激になっていったのも悪かったと…………」
魔王軍サイドからの助け船。ンダガランさんが僕たちに頭を下げてくる。そんなンダガランさんに勇者御一行がご助力感謝とばかりに頭を下げている。変な光景である。
街道、平原に森。大きな爆発あとや、地表への損傷。数は五つ。五つか~。
「戦術クラスの大魔法を五つ確認」
口頭と指さし確認で損傷箇所をチェック。方々にチェックが間違いないか顔を向けると、間違いないと、頷いてくれる。
「勇魔戦条約違反ですな」
整備長の口にする勇魔戦条約違反。正式には勇者魔王間戦闘規定条約。
――大陸のいたる各所にて起こる戦闘。
常人では想像のつかない破壊力によって、大地が疲弊していくのを憂いた一般の方々。まあ、この中には僕たちも入るんだけど。
このまま戦いを続けることで、どちらが勝利したとしても、残った大地にはなんの魅力もないと提案を出したのが先代の王様になる。
両陣営も戦後の事を考慮し、話を聞き入れて出来たのがこの条約。
そして、僕たちみたいな常人が間に入り、環境保全や修復に励み。違反を行った者を取り締まる。
腕力ではまったくもって刃が立たない僕たちは、条約に守られながら仕事をこなし、両陣営のトップがこれを強く遵守することで、圧倒的な力を有した方々は、強い態度に出ることが出来ない。
基本、皆さんルールを守るので、相当に出来た方々なのは間違いない。それをいいことに調子こいてるのがいまここに一名いるけども。こんな調子こいてる方が、条約の均衡を崩すんじゃないかとヒヤヒヤする。
王都より二里の位置は、多方面より王都に続く道が重なり合う交通の要衝。
また、破壊力なども考慮して、王都から五里の位置までは、攻城戦に使用される、戦術クラス以上の大魔法の使用は回数が制限される。
戦略クラスの大魔法となると、絶対禁止で、もしも使用しようものなら両陣営のトップから粛正される。
この二里の位置ならば、使用可能な大魔法は両陣営、二度ずつと定められており、計四回。五度の使用は完全なる条約違反となる。
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