拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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働く方々

PHASE-04

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「それと、もう構造は理解出来たから、銃は返却するよ」

「え~」

「え~って……君のための物でしょ」

「僕には不要ですからね」

「作り手の事を考えたら、無下にしてはいけないよ。あのエングレーブの気合いの入れ方は相当だよ」
 預かっててほしいけど、しかたない。部屋のタンスにでも入れておくか…………。なんかそれも悪い気がするから、部屋に飾ってあげよう。
 百人長が彫っている姿が脳裏に浮かんだからね。

「それとさ、あの外骨格もいい感じに出来上がったってさ」

「それは凄い。頼んで直ぐに作ってもらえるなんて」

「暇をもてあましたら、俺よりものめり込む人だから。寄っていきなよ」
 売れば凄い金額になりそうだ。
 ついつい、口角が上がってしまう。
 頑張って、ゲロを落とした甲斐があったってもんだ。 

「あ、バレンタインさん。報酬は受取書を見せれば、受付でもらえるので」

「ありがとうございます」
 快活のよい返事の十代半ばの女の子の深い一礼。 
 やはりというべきか、手作り感丸出しの鎧姿に、半眼ながら、同情の目を向けているブンゴさん。
 その報酬で、装備を揃えてね。そう思わせるように、同情の目から、優しい笑みに変わった。

 ――――。

 ブンゴさんと別れて、受付へと行くと、髪の毛を綺麗に分けて、紺色のスーツを着た美人の受付嬢さんから、サージャスさんが報酬を受け取る。
 
 ずっしりとした革袋を手にして、僕のような嫌らしい口角の上げ方ではない、純粋な喜びからくる笑顔を見せてくれる。
 薄汚れた考えを持っている僕は、その笑みに当てられて、浄化され、灰になってしまう気分に陥ってしまった……。

「どうしました?」

「いえ、別に……。心清らかじゃないといけないなと、教えられたんです」
 僕の返しが理解出来ていなかったようで、疑問符を浮かべている。
 
 純粋だ。だからこそ、悪い奴らに付け込まれたのかもしれない。
 
 後は、サージャスさんと別れて、第二研究所にでも――と、思っていたけど、サージャスさんの目が落ち着かない。
 建物内を見渡している事から、
「見学してみます?」
 と、質問。

「いいんですか!」

「勇者なんで、信頼は出来ますから、全然問題ないですよ。そうですよね?」

「どうぞ」
 受付の美人さんが笑顔で返し、ここより先に進んでもかまわないですよと、手を先に続く通路に向けてくれる。
 魔法に精通しているからこそ、こういう場に興味を持つんだろうね。

「凄いですよね。この開発局って」
 まあ、確かに凄いけど、まだ、何も見てないでしょ。

「王都の上空にある魔法陣って、ここから展開されてますよね」
 そうだよ。と、首肯で返す。
 すると、目を輝かせて、凄いの連呼だ。
 正直、何が凄いのか? あれ、簡単に壊れるんだよ。
 パリーンて感じで壊れるから。有って無いようなもんですよ。
 
 カグラさんとか、邪神が簡単に壊して入ってくるんだから。
 この二名が凄いってのもあるけども、僕の中ではあの結界を頼っていいのかと、懐疑的なんだけどね。
 僕が、その事を説明すると、

「そうなんですか? あれほどの結界、ボク見た事ないですから。クリネアでもあれだけの物は無いですよ」
 え~! クリネアでも無いほどの強度なのあれ? 
 僕が過小評価しすぎてるのかな?
 いや、だってパリーンだよ。擬音でパリーン。
 
 ――まあ、サージャスさんくらいの勇者が太鼓判押すんだから、信頼してもいいのかな~。
 でもな~。

「見てくださいよ。ゴーレムですよ」
 最早、次の話題に心動いていた……。
 通路から、ガラス張りの室内を目にする事が出来る。
 勤労君シリーズのゴーレム君たちの稼働実験が行われている。
 
 ――…………。
 
 まあ、勤労君の稼働実験は独特というか、局員の前で、ポージングをやってるってだけなんだけども……。

『ナイスカットー。切れてるよー』
 ガラス向こうから、そんな声が聞こえてくる。
 僕も、勤労君を使用する度にその言葉を発言するんだけども、局員の方々の表情は、うんざりとしている。
 これを、ほぼ毎日やってるんだから、精神的に来るよね……。
 勤労君たちは局員の方々の台詞に喜びを覚えて、延々とポージングを続けていた。

「すごいな~」
 サージャスさん始めて見るのだろう、開く口は興奮が大いに混ざっている。
 でもね、これを毎回見せられたら、今、思っているものとは違う感情が湧きますからね。

「今度は僕の用でいいですか?」

「どうぞ、どうぞ」
 サージャスさんの許可をもらい。
 第二研究所と書かれている通路を歩き――――、足を止めて、目の前の扉を開く。
 
 新しい勤労君のデザインなのかな? 石粉せきふん粘土を使用した精巧な人間サイズの像がある。
 やはり、ここでもポージングは欠かさない……。

「こんにちは」

「おう! タンパク質、摂取してる?」
 白衣の腕をまくって、自慢の上腕二頭筋を見せつける、色黒で、坊主頭のおじさん。
 この方が、現在の勤労君の生みの親である、第二研究所主任、タモン・カラキリさん。ブンゴさんとは正反対の、血色のよい、筋肉がすごい、五十代だ。

「ブンゴさんから聞いたんですけど、出来たんですか」

「おうよ! この俺が作ったんだ、一流職人にも負けないぞ」
 石粉粘土を見ても分かるけど、ぶっとい筋肉の体からは創造も出来ないくらいの、手先の器用さを持つ人物だ。
 繊細な作りなら、魔道開発局で第一位だろう。

「こっち来いよ。暇な時に仕立ててやったぞ」
 堆く積まれた書類や本なんかが置かれた、大きな机の一角に置かれた漆黒の鎧が、眼界に入り込んでくる。

「す――」
「すごい! これ、タイラントデスストーカーの外骨格ですよね!!」
 僕が言おうとしたのに……、流石は勇者様なのか、いい鎧を目にした途端に、飛び跳ねるように机に接近。

「よく分かったな、お嬢ちゃん。いい目をしている」

「勇者をやってらっしゃる、サージャス・バレンタインさんです」

「こりゃ失敬」
 僕が代わって自己紹介をすると、タモンさん、坊主頭を掻きつつ、サージャスさんに会釈を行う。
 素人の手作り感が丸出しになっている青銅プレートを貼り付けた革の鎧を纏っているのが、よもや勇者とは、想像出来なかったようだ。
 制作力が一流の人物がそれを目にすれば、訝しい表情になっても仕方が無いか。
 
 当の本人は、もうそんな目線には慣れているのか、全く気にもとめずに、漆黒の鎧を見つめている。
 まるで、おもちゃ屋の前にいる子供のようだ。

「綺麗な作りですね。胸部分と、腹部のつなぎ目が無いから、一枚作りかと思ったけど、よく見ると、別々のパーツを結合してるんですね」

「いい目をしてますね。流石は勇者殿」
 勇者と分かって、敬語に修正して、先ほどと同様の内容を返している。
 
 胸部分と腹部は、サージャスさんが目にした通り、二つの鎧を結合させて作っていて、胸部はゆとりのあるような、丸みのある作りだ。
 これなら、男女でも共有出来る。胸部分を女性的にすると、男性は装備しにくいからね。
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