拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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トレジャーハントに挑む、三人の公務員

PHASE-21

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「いよいよ、目的地までわずかですね」
 本当に……、難癖に近い内容で、ここまで来ちゃってさ、危機に遭いながらもあと少しか。

「避難誘導って難しいですね」
 今更、反省だよ。きちんと出来ていれば難癖としての理由にならなかっただろうに。
 それだと、男爵様との事をやり玉に挙げるんだろうけども。

「怠慢だよ」

「申し訳ないです……」
 ゲイアードさんに怒られた。

「違うよ。皆の心にこびりついた考え方がさ」
 昔は、魔王軍は恐怖の象徴だった。
 人々はその姿を見ただけで、畏怖し我先に逃げ出し、常に油断、怠りなく行動に移してきた。
 でも、勇者を中心にした冒険者と、魔王軍の現在の戦闘は、無関係な人間は巻き込まない。侵攻も行わない。過剰な破壊は避けるという考え方に縛られている。
 だから、人々の中から危機管理が削がれて、戦闘を一種のイベント扱いで、危機ではなく、嬉々として見入ってしまうのだとゲイアードさんは語る。
 確かにそうだ。普段から危機感を持って行動してれば、避難は簡単だった。
 
 大公様に至っては、解説のような立ち位置だったし。皆、知らないうちに危機感が削がれてしまったんだろうな……。
 平和と考えればいい事だけども、有事のさいにはその削がれた危機感が原因で、取り返しのつかない状況になるかもな~。
 平和を享受する事と、平和に甘えるのは別物と心に刻まないとね。

「今回の事を経験として今後に活かしていこう」

「はい」
 歴史からでなく、経験から学ぶのは愚者のする事とも思ってたりもしたけど、僕は賢者ではなく凡人なので、歴史からも経験からも学んでいこう。
 百聞は一見にしかず。百見は一考にしかず。百考は一行にしかずだ。
 
 ――――。

「あと少しですね」
 進んでいくにつれて、森の木々から、土色と緑に加えて、灰色の岩からなる山肌も、眼界に入り込んでくる。

「山肌から化石は現れたそうですね」

「地滑りで現れたようだ。落石の可能性もあるから気をつけよう」

「了解です」
 ここからは山肌に沿って真っ直ぐで迷う事もない。
 落下物の可能性もあるので、上に気を配りながら歩く。
 高い木々を通り抜けて照らしてくれる、木漏れ日の明かりがありがたい。
 手つかずの緑の濃い匂い。呼吸するだけで、肺の中から洗浄される気分だ。
 整備長はここで暮らすべきだね。葉煙草を吸ってなくても煙草臭い時があるからね。肺が汚れてるんですよ! 肺が! 浄化しなさい。ここで!
 
 ――――。
 
「この辺りですね」

「よう……やくか……」

「チョコエネルギーが尽きたようで」
 チョコを口にしてからの間はそこそこ喋ってたけど、それからは息切れだけだったからね。やっと口を開いてくれたゴートさん。

「トレジャーハンターとの立ち回りは格好良かったのに」

「あれが自分のピークだよ」
 ゴシゴシとタオルで汗を拭きながら、木に体を預けつつ、ゆっくりとした歩み。
 しかたがないので、大きな体を後ろから補助してあげる。

 そして――――、僕たちの先を行くゲイアードさんの足が止まる。
 呆然と立ち尽くしているようだ。
 なんだろうか? と、ゴートさんの背中を押しつつ近づくと、
「これは――――欲しがるはずだ」
 生唾飲んでるよ、ゲイアードさん。
 大木が邪魔をして僕たちの位置からは上手い具合に見えない。

「行きましょう」

「自分は後でいいから……」

「ここまで来たら一緒に見ましょうよ」
 その言葉に鼓舞されたようで、足の回転にがんばりを見せてくれる。
 二人してゲイアードさんの背後に回って、視線を同じ角度に合わせる。

「さあ! ごたい――――め………………ん」

「お、おお……」
 二人してぽっかりと口を開けて見上げてしまう。

 ――……。

「なんじゃこりゃ!?」

「自分たちは化石の確保と聞いていたよね?」

「はい……。でも、これは化石…………ですか? 違いますよね?」
 ――――それはそれはとても巨大で、キラキラと虹のような遊色効果で輝く――――、宝石だった。
 不思議な事にドラゴンの骨の形をしている。

「もう一度、これ化石じゃないですよね?」
 反応がなかったから、聞き直す。

「違うんじゃないかな……」
 と、自信なくも、返してくれるゴートさん。

「いや――――これは化石だよ。厳密に言うと化石だった物だ」
 薄手の白い手袋を装着しつつ、ゲイアードさんが意味深な発言。
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