拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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トレジャーハントに挑む、三人の公務員

PHASE-35

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「サージャスさんみたいには――なれないね」
 は? なんでここでサージャスさん?

「矢面に立てる存在に、なってみたいかな~って」
 ああ、そういう事か。
 何かあるにつれ、僕がロールさんを守ってたってのもあって、ロールさんも、僕の事を救いたい立場になりたかったみたいだ。
 
 僕がバラクーダの二人に威圧されてた時、サージャスさんが華麗に救ってくれたし、そういう話を聞いて、ロールさんの中にある、正義感と先輩としての立場に火が付いたのかな?

「サージャスさんは勇者。ロールさんは僕と同じ公務員ですからね。いいじゃないですか。職が違うんですから」

「うん……」
 あれ? なんか嫌だったのかな? どうしても僕を守りたいとか考えてるのかな? なんで? サージャスさんに対抗意識もってます?

「ここで話してたら遅刻しますから、歩きながらで」

「うん」
 これでいいんだ。仲直りして、一緒に仕事場に行く。
 周囲から見たら、恋人同士の仲直りに見えてたかな。
 羨ましいとばかりに視線をこちらに向けつつ、足早に僕たちの横を通り過ぎていく。
 男性の往来が通り過ぎる度に、チッ。チッ。チッって、舌打ちが僕の耳朶によく届いた朝の通勤だ――――。

「最悪、僕は免職でしょうね」

「そんな事にはならないよ。何も悪くないから。……大公様も証言してくれるよ。暴行と脅迫を受けたんだから」
 暴力はよくないけど。の部分は、凄く弱々しい語り方だった。また、僕が怒るかもと思ったんだろうな。
 怒りませんよ。実際、暴力は駄目でしたから。
 怒りに我を忘れて、ノムロのおっさんと同じ土俵に立った時点で、負けなんだよな……。もっと、精神を磨き上げていかないと――――、って、反省を挟んでしまう。
 
 証言があったとしても、貴族の力ってのは、真実を曲げる事が可能な世界だからね。大公様の威光があっても、目に届かない影の部分で、チクチクと嫌がらせをしてくるもんだ。
 そのチクチクが、庶民にとっては大ダメージ。簡単に潰される。

「もし、こんな事なんかでピート君が免職されるなら――――私も辞める」

「え!?」

「だって、そんな間違った事がまかり通るような所なら、こっちから願い下げだよ」
 いやいや、優秀な方が辞めたら駄目でしょ。
 正直、整備局の大半の仕事をこなしてると思ってるんですけど。そんなロールさんが辞めたら、局内は阿鼻叫喚だよ。

「辞めてどうするんですか? 無職ですよ。当てもないのに、そういった発言はしない方が――」

「知り合いのつてもいいだろうけど、蓄えもちょっとはあるし、どうせなら自営をやってみるのもいいかな。街商を始めてみるとか。ワギョウのおでんが美味しかったから、屋台を出してみたいな」
 なんて場当たり的な……。
 確かにロールさんの料理は美味しい。それこそ、そこいらの店なんて太刀打ち出来ないレベルだ。もちろん、ケーシーさんやバッカスは除くよ。
 加えて作り手が傾城クラスの美人様とくれば、一人やもめが足繁く通って、お金を落としてくれるのは間違いないだろう。
 でも、商売ってそう簡単なものじゃ――――、
「もし、ピート君に予定がないなら、お店の手伝いをしてほしいな。少なくて申し訳ないけど、ちゃんとお給金は出すから」

「ボ、ボク。ヨテイナイカラ、ダイジョウブデスヨ」

「なんで片言……」
 あれ、最高じゃない? 今の職場みたいに安定してるわけじゃないけど、幸せな職場環境だよね。
 人生最大の幸福が舞い降りるんじゃないの?
 むしろ、今の仕事を即、辞めたくなったんだけど。
 ロールさんと二人きりとか―――――。
 二人で協力し合ってさ、屋台から始めて、成功を収めていきつつ、ちゃんとした店を構えてね~。
 贅沢は言わない。場末じゃなければいい。庶民街の一角にひっそりとでもいいんだ。ケーシーさんのお店みたいにさ。常連さんや、たまたま立ち寄ったお客が笑顔になって帰っていくみたいなね。
 いずれはさ、ピート君から、【あなた】とか、【旦那様】とかにね、一人称が変わるっていうね――――。
 なにこれ、最高じゃないですか。
 最高じゃないですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!! 
 こういう分岐ルートが出来ると前もって分かっていたなら、自室を出る前にでも、辞表を書いて持参したのに――――。

「トリップしてるの?」

「トリップしてました!」
 呼び戻されたけど、これは現実にしたいな。
 さっきまで重たかった足だったけども、俊足の神が宿ったかのようだ。とても軽い!
 局までスキップで行ってもいいよ。周囲の視線なんて気にしないでスキップやれますよ――――。
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