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ウィザースプーン、ヴィン海域に行ったてよ
PHASE-58
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「ピート様は今ではヴィン海域の英傑。名声欲しさに挑戦してくる者達も現れるでしょう。世も物騒になりつつあるようですし――――」
ここより物騒な場所はないですけどね。
それよりも名声欲しさに挑戦って何だよ。僕は公務員だぞ。やらせで得た名声なんかで、襲われたらたまったものじゃないよ。
「――――ですので、私の配下からピート様の護衛を」
二の句を継いで何を言い出すかと思えば。護衛って……。
常日頃から半漁人さんに囲まれて、申し訳ないけどうんざりしてたんで、これ以上はいいです。
「シュパーブ」
だから、いいのに――――。
おや? なんだあの愛玩動物は?
猫サイズの二頭身が、忙しなく小さな翼をパタパタと動かして、水色の体毛に覆われていて、頭部には、先端が丸みをおびた角が四本はえてる。
ルビーのような輝きの、まるで磨ききった鏡のような大きな瞳の何とも可愛らしい幼龍。
「この子はシュパーブ。ドレッドノートの息子です」
「可愛いですね~」
「愛玩のような姿ですが、最古参位の実力を有しています」
「へ、へぇ……」
こんなちっこいのがバーン・ワイバーンさんなんかと同じ実力なのか。
まあ、ドレッドノートさんの息子さんなら頷けるけども。
この二ヶ月、冒険者の前に難敵として立ちふさがったドレッドノートさんの事を思い返すと総毛立つ。
集束された水が口から放たれて、小島が他愛なく破壊され、バロニアさんにザンデさんが、僕の前で凄惨な最後を遂げたな。
最後って表現は、ヴィン海域では語弊になるかもだけど。
破壊の化身といっても過言ではないくらいの他を圧倒する実力だった。
その息子さんが僕の護衛になるって――――、怖いよ。もし怒らせたらどうなるの? 僕、死ぬんじゃないの?
「シュパーブ。ご挨拶を」
シズクさんに従って、僕の前で停止状態になると、ぺこりと頭を下げて、
「ドレッドノート・ロード・ポーツマスが子。シュパーブ・テメレーア・ポーツマスといいます。よろしくお願いします」
――……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? なにその声! 全然可愛くないんですけど。【ぶらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!】って口にしそうな凄みのある渋くて格好いい低音ボイスなんですけど。最後の相手として登場する声なんですけど。
姿が台無しな声なんですけど……。
しかもドレッドノートさんてミドルネームあるんだ。シズクさんの幹部でも筆頭みたいだからな。位が高いのは当たり前なのか。
「以後、この子がピート様をお守りします」
「いえ、結構です」
「そう言うなボーイ。仲良くしようぜ」
なんだ、丁寧な挨拶をすませたとたんにフランクに語りかけて。ボーイとか! 生意気なチビめ!
「俺ちゃん、こんな形だが、今年、百六十四歳なんだぜ。見てくれで判断しちゃ駄目だぜ。ボーイ」
「あ、はい」
くそ、すげー目上じゃないか……。魔王軍だしな。人間の物差しで測っちゃ駄目だな。
手――――、前脚? を、出してきたので握手を交わす。
もふもふの、枕にでもしたら最高の感触の体毛だ。ドレッドノートさんのような鱗じゃなく、体毛だ。幼体の時は体毛なんだな。
「声変わりしたんですか?」
「これは元々よ~」
へ……。ナチュラルボーンなしぶ声なんだな。
こんなのと四六時中いるとか本当に嫌だよ。プライベートなくなるよ。
それに食費はどうするの? 八億を蹴った赤貧の僕には養えませんよ。
「この子の生活費はこちらから持たせますので、ピート様は金銭を気にせずともいいですよ」
それは助かる。ついてこないならもっと助かる。表情を読み取ってくれたんなら、護衛なんて必要ないと理解してくれると、さらに助かる。
「収賄になるような――――」
「護衛ですから!」
「でもですね――――」
「護衛ですから!!」
なんか、普段とは違うシズクさん。無駄に熱がこもっている。そこまでして僕の事を心配してくれているという事なのかな?
嬉しくはあるな。
「そういう事だボーイ。俺ちゃんが守ってやる」
断るのは不可避なようだ…………。
ここより物騒な場所はないですけどね。
それよりも名声欲しさに挑戦って何だよ。僕は公務員だぞ。やらせで得た名声なんかで、襲われたらたまったものじゃないよ。
「――――ですので、私の配下からピート様の護衛を」
二の句を継いで何を言い出すかと思えば。護衛って……。
常日頃から半漁人さんに囲まれて、申し訳ないけどうんざりしてたんで、これ以上はいいです。
「シュパーブ」
だから、いいのに――――。
おや? なんだあの愛玩動物は?
猫サイズの二頭身が、忙しなく小さな翼をパタパタと動かして、水色の体毛に覆われていて、頭部には、先端が丸みをおびた角が四本はえてる。
ルビーのような輝きの、まるで磨ききった鏡のような大きな瞳の何とも可愛らしい幼龍。
「この子はシュパーブ。ドレッドノートの息子です」
「可愛いですね~」
「愛玩のような姿ですが、最古参位の実力を有しています」
「へ、へぇ……」
こんなちっこいのがバーン・ワイバーンさんなんかと同じ実力なのか。
まあ、ドレッドノートさんの息子さんなら頷けるけども。
この二ヶ月、冒険者の前に難敵として立ちふさがったドレッドノートさんの事を思い返すと総毛立つ。
集束された水が口から放たれて、小島が他愛なく破壊され、バロニアさんにザンデさんが、僕の前で凄惨な最後を遂げたな。
最後って表現は、ヴィン海域では語弊になるかもだけど。
破壊の化身といっても過言ではないくらいの他を圧倒する実力だった。
その息子さんが僕の護衛になるって――――、怖いよ。もし怒らせたらどうなるの? 僕、死ぬんじゃないの?
「シュパーブ。ご挨拶を」
シズクさんに従って、僕の前で停止状態になると、ぺこりと頭を下げて、
「ドレッドノート・ロード・ポーツマスが子。シュパーブ・テメレーア・ポーツマスといいます。よろしくお願いします」
――……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? なにその声! 全然可愛くないんですけど。【ぶらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!】って口にしそうな凄みのある渋くて格好いい低音ボイスなんですけど。最後の相手として登場する声なんですけど。
姿が台無しな声なんですけど……。
しかもドレッドノートさんてミドルネームあるんだ。シズクさんの幹部でも筆頭みたいだからな。位が高いのは当たり前なのか。
「以後、この子がピート様をお守りします」
「いえ、結構です」
「そう言うなボーイ。仲良くしようぜ」
なんだ、丁寧な挨拶をすませたとたんにフランクに語りかけて。ボーイとか! 生意気なチビめ!
「俺ちゃん、こんな形だが、今年、百六十四歳なんだぜ。見てくれで判断しちゃ駄目だぜ。ボーイ」
「あ、はい」
くそ、すげー目上じゃないか……。魔王軍だしな。人間の物差しで測っちゃ駄目だな。
手――――、前脚? を、出してきたので握手を交わす。
もふもふの、枕にでもしたら最高の感触の体毛だ。ドレッドノートさんのような鱗じゃなく、体毛だ。幼体の時は体毛なんだな。
「声変わりしたんですか?」
「これは元々よ~」
へ……。ナチュラルボーンなしぶ声なんだな。
こんなのと四六時中いるとか本当に嫌だよ。プライベートなくなるよ。
それに食費はどうするの? 八億を蹴った赤貧の僕には養えませんよ。
「この子の生活費はこちらから持たせますので、ピート様は金銭を気にせずともいいですよ」
それは助かる。ついてこないならもっと助かる。表情を読み取ってくれたんなら、護衛なんて必要ないと理解してくれると、さらに助かる。
「収賄になるような――――」
「護衛ですから!」
「でもですね――――」
「護衛ですから!!」
なんか、普段とは違うシズクさん。無駄に熱がこもっている。そこまでして僕の事を心配してくれているという事なのかな?
嬉しくはあるな。
「そういう事だボーイ。俺ちゃんが守ってやる」
断るのは不可避なようだ…………。
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