拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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PHASE-12

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「いい匂いですね」
 気配には気付かない僕でも、両手に持った倹飩箱けんどんばこから漏れてくる、胃袋を刺激する香りは感知できる。
 これは、美味いやつだ。
 
 ふたをスライドさせてテーブルに並べるのはフレンチトーストに似た、チーズやハムが挟んで焼いてあるクロックムッシュだ。
 目玉焼きがのっかっているのはクロックマダムだな。さて、どちらをいただこうか。
 ローストビーフを食べていた面々も興味津々だ。
 
 ――――美味かった。ただただ美味かった。皆さんも満足したという表情。

「では、紅茶を」
 いつの間に準備したのか、ゲイアードさんが皆に紅茶を振る舞ってくれる。
 カップが全員の前に置かれたところで、話が始まった。
 
 ――――いまから十六年前。ゲイアードさんこと、ノイエ・イルマン・ユーティライネン氏が十五歳のころ。
 魔術の昇華に、新たなる術式の研究に没頭していた若きノイエ少年。
 
 十五歳という若さにして、歴代でも最高の死霊魔術師ネクロマンサーとして称され、将来を期待されていたそうだ。
 幼少の頃より死者の魂と語り、知恵を授かる。
 その頃から、従来の死霊魔術師ネクロマンサーが行う、魂の支配ではなく、信頼関係を強めるという、他とは違う切り口から新術開発に取りかかる。
 
 リューディアさんとは幼少からの付き合いで、将来を双方の親により決められていたそうだけども、本人達もそれに関しては否定的ではなかった。
 つまり、相思相愛だったわけだ。充実している……。
 
 ノイエ少年は魂を隷属する事を嫌い、使用する事を嫌った。
 苦しむ魂を傀儡とする死霊魔術師ネクロマンサーとしての、当たり前を当たり前ではないとして、幼少期からの考えを一貫し、両親も新しい事への転換を目指す息子に期待をし、新たなる道の開拓と開花を望んでいた。
 共に学んでいた方々も、ノイエ少年のひたむきさと誠実のもとに集まり協力。
 周囲には常に心を許せる方々がいた。
 現状に胡座をかく事をよしとせず、努力し前に歩む姿勢が、人々を魅了したようだ。
 常に新たな事に挑戦し、新術の開発の合間に、多彩な魔法を習得、各属性と大魔法の習得数は、一族の中でも抜きん出ていた。
 才能をあらん限り発揮出来る環境下で存在感を輝かせるノイエ少年。
 
 だが、輝きが強ければ、影はそれだけ濃くなるもの。その影となるのがヘイターこと、ルネア・ドルヴァル・ユーティライネン。
 
 ルネアの目指したものは、現状の魔法をさらに進歩させ、死者を無理矢理に効率よく使役するスタイルを通していった。
 弟は、新たに踏み出していった兄とは違い、現状からの導きから進歩させようと努力した。
 しかし、すでにあるものから生み出そうという考えには魅力を感じなかったのか、周囲はルネアに期待していなかった。

 両親は、兄と同様に愛情を注ぎ込んでいたそうだけども、どうしても新術を開発していた兄の死霊魔術ネクロマンシーへの期待が大きかったようだ。
 
 その頃からルネアの妬みは強いものになっていった。
 もともと、そういう性格だったそうだけど、それが顕著になったのがこの時からだそうだ。
 ルネアの恐ろしいところは、魔力量だけならノイエ少年を凌駕しているところ。
 更に恐ろしいのが、魔力量以上の妬み嫉み。
 
 誰もが自分を見る事なく、兄ばかりに期待をしていた事に対し、幼い考えの楽観的な思考で、ルネアは溢れた嫉妬心から暴挙に出た。
 数多くの魂を一気に使役し、力として行使した。
 それはノイエ少年が数日間、家を離れた時に実行された。
 ノイエ少年の周囲の人々を次々と殺害していき、その魂を我が物とした。
 
 そして――――、ルネア最大の暴挙――――。親殺しである。
 
 両親の魂を得ると、次ぎに襲ったのがリューディアさん。
 命を奪い、亡者として使役しようとしたところで、ノイエ少年が報を聞きつけ、残った仲間達共にルネアを倒し、奪われていた魂を可能な限り解放したそうだ。
 とどめとなった時、兄としての心が、弟の命を奪う事を躊躇った。
 霊体となったリューディアさんの制止もあり、ルネアにとどめを刺す事をせず、拘束しようとしたが、一瞬の隙を突かれてルネアを逃がしてしまう。
 
 月日が経つにつれ、ノイエ少年の中で負の感情が大きくなり支配していった。
 それに比例して、弟を殺めたいという気持ちも大きくなっていく。
 リューディアさんは、このままではノイエ少年が弟同様に、力を暴走させてしまうのでは? と、心配し、生前の魔力で未だ現世に留まる事が可能な自らの魂を使って、新術の開発を完成させようと提案した。
 
 失敗すれば、魂自体がどうなるか分からないと反論するも、このままだと闇に飲み込まれてしまうと考えたリューディアさんは、持ち前の強気でノイエ少年を説得。
 幼少からの経験をすべて出し切り、支配、使役でなく、対等な関係性を持ち、召喚するのでなく、常に現世へと留まる事が可能な降霊術をここで成功させた。
 これにより、ノイエ少年が怒りに支配されても、リューディアさんがそれを堰き止める立場となった。

 
 
 ――――王都で、ヘイターと出会い、怒りのままに動き、視界が狭くなったゲイアードさんを救ったのはリューディアさん。
 彼女の思いは死してもちゃんと貫徹されている。
 たまに見せるヤキモチで、ゲイアードさんからは想像が出来ない、情けない声を出させるのも得意だ。
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