拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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王都潜入

PHASE-07

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「さんなんて付けない。グリー、貴男はどこに雲隠れを」

「人聞きが悪いな。なんで雲隠れなんだよ」
 違反金も払わないで、消息を絶ってる時点で雲隠れだろうが。こいつは馬鹿なのか?

「まあいい。俺はラゴットに雇われてたんだよ。といっても、平和すぎてただ飯ばっかりだったけどな」
 ロールさんと顔を見合わせる。
 グルガル交易都市のラゴットではやはり、こういう連中を集めてたんだな。
 今回の騒動を起こした一人に子爵がいた時点で、子爵領にあるラゴットは完全に黒と思っていたけど、こうやって来たるべき時のために力を集結させてたか。
 どうせ、この程度のごろつきばかりだろうけど。
 とはいえ、腐っても冒険者。魔法も使えるし、油断は出来ないよな。

「流石の俺でもただ飯ばかりで申し訳なかったし、こうやって働こうとしてたら、まさかサージャスと巡り会うなんてな。運命かね~」
 サージャスさんの頭から足までを舐めるように見ている。不快である。

「貴男にも良心の呵責なんてものがあるんだ」

「あるよ。お前にも悪いとは思ったけどな。でもよ~払えるわけねえだろ。二億なんて。それをちゃんと返してる、お前のバカ真面目には愚かさを通り越して、呆れたね」

「なるほど――――理解した。こいつはボコボコにしていいやつだ」
 剃り上がった頭に血管を蠢かせて、ドレークさんが両刃斧ラブリュスを腰から手に持つ。

「不快。実に不快な御仁である。小生、齢二十四で、ここまで怒りのままに鞘から白刃を抜くのは初めてである」
 ITADAKI-頂-にて、優勝して得た二振りの内の一振り、雪風か時雨のどちらか分からないけど、目にするだけで魅了してくる刀身。
 その切っ先をグリーに向けて、怒気を含んだ語気のムツ氏。

「こいつはあたいが、二度と悪さできないように痛めつけてやる!」
 ブンディー・ダガーを握り直して、炯眼でグリーを射るザイオン氏。

「おいおい、こんなのがいまのパーティーか? 俺たちに比べてずいぶんと質が落ちたな」

「何を言うかと思えば……」
 嘆息を漏らしたサージャスさんは、継いで、
「質が上がったの間違い。貴男なんてまったく相手にならない」
 これにはこの場にいる皆が納得の首肯である。

「言うようになったし、周囲の奴らもむかつくな」

「だったら挑んでみろ。違反金も払えないで逃げ出す腰抜けが」

「おい、リザードマン。聞いてた? 俺の話。払う奴が馬鹿なんだよ。腰抜けじゃなくて、賢いだけ」
 一言一言がこちらの神経を逆なでしてくる奴だよ。

 ――――だが、こんな腰抜けタイプのことは理解している。

「皆さん。周囲に気を配ってください」
 偉そうに素人の僕が伝える。

「こういう手合いは一人だと何も出来ない。ここまで強気なのは、側に仲間がいるから調子にのれてるんです」
 説得力のある発言だと思われたようで、周囲に目を向け始める皆さん。
 馬鹿にされたと認識したようで、僕を睨んでくる。
 素人に睨みを利かせるところが、図星なんだよな。
 お調子者が先行するだけの余裕。こちらに接近してくる二十一の兵じゃなく、やり手が側にいるって事だろう。

「お前、あんなん相手によく毒を吐けるな」
「確信があるんで」
「なんだよ。側にいる確信って?」
「僕もよく知ってるタイプなんで。強いのが側にいると、途端に調子に乗るの。そう――――いま僕に語りかけてくる貴男のような」
「なめんな! あんな自分が格好いいとか勘違いしているもやしっ子な魔法使いと、俺を一緒にするんじゃねえよ」
 整備長がなぜかお怒りだ。
 おかしい――――。真実を言っただけなのに。
 整備長以上に、素人二人におちょくられているグリーは、完全にお顔が真っ赤かだ。

「小者がさっきから!」
 怒りのままに手にしたワンドから魔法を僕たちに放つ。
 先ほどの脅し感覚の雷じゃなく、殺傷力のある雷矢ライトニングアロー
 初歩だけど、一般人は当たれば死に繋がる一撃だ。

「無駄」
 と、サージャスさんがまたも防いでくれる。

「背後!」
 野生の勘でもあるのか、二王さんの配下の方々よりも早く、サージャスさんの背後に伸びる影に、ブンディ・ダガーを突き刺すザイオン氏。
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