拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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王都潜入

PHASE-21

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「勝てん。強すぎる。報を優先する。金にはなる」
 合理主義ミッシェルは、これ以上は損しか無いと考えているようだ。
 敵の情報を上へと伝えるだけでも利益は発生するようで、それを優先するようだ。
 納得がいかないのは、歯を失ったグリー。
 でも、とっておきだったオーガが、そこそこ簡単に倒された事もあり、このまま戦い続けても勝てる見込みはない。
 悔しくて歯を軋らせている。
 歯が抜けているから、食いしばると目立って、見てるこっちは笑ってしまうけどね。
 それが更に怒りを与える事になったのか、
「せいぜいこの王都で活躍しな。まあどのみち、王城跡まで来たら、そこがお前等の終焉の地だけどな」
 と、完全に三下やられ役の内容を口にする。実際、三下だから仕方ないけど。
 グリーの三下発言に興醒めしてしまう。
 加えて、口の中を魔法で治したのか、聞き取りやすくなったのも、つまらなくなった原因。
 笑っていたこっちサイドは、冷ややかな視線を向ける事を、返答の行為とした。

「くそ! こんなしょぼいのでオーガが!」
 オーガが倒れ込んだところに突き刺さった、ドレークさんの得物に影を伸ばせば、
「あ! こら!!」
 ズブズブと影の中に両刃斧ラブリュスが沈んでいく。

「ハハハ――――これいらないけど貰っとくぜ。売っても安いだろうがな」
 なんという無様な嫌がらせだろう。
 グリーが現状出来る精一杯の嫌がらせがコレだよ……。
 
 ――――影の中に消えていくサージャスさんの元パーティー。
 確実に逃げられるように、亡者に分厚い陣形を作らせた後に逃げていった。
 こちらの攻撃で亡者は即霧散。
 戦闘が終わった場にて、嫌がらせのしょっぱさに呆れる僕たち。
 ただ一人、ドレークさんは別。
 褐色の肌を赤くして、エンレージマックスである。
 これまでの戦闘で、共に戦ってきた大切な相棒を奪われて大層ご立腹だ。
 だったら、投げなければよかったと思うの。
 
 ――――静かになったな~。
 先ほどまでの派手な戦闘は何だったのか? と、思わせるほどの森閑。
 こちらに迫っていた子爵の軍勢は途中で反転したそうだ。グリー達の撤退が伝えらたんだろう。
 勝てないと踏んでの後退だな。

「はあ……」
 でっかい体で、重い嘆息を僕の横でしないでいただきたい。
 だから、投げなきゃよかったと思うの。

「くそ~手が寂しいぜ……」
 落ち込まないで、周囲の手伝いをしなさいよ。
 皆で導線を引っ張ってるんだから。
 陽動の為の必要な作業ですよ。
 撤退したとはいえ、ここは敵のお膝元。
 直ぐにでも大軍が来る可能性が高いんですから。早いとこ作業を終わらせないといけないんですよ。
 
 オーガを倒した存在とは思えない落ち込みっぷりだな。
 周囲も気を遣ってるのか、手伝え的な発言はしない。
 大事なら投げなきゃいいんだよ。とは、思ってるはずだけども。

 ――。

「どうぞ」
 と、ロールさんが両手で持っている物をドレークさんに手渡そうとする。
 青みがかった、白銀の長い棒。

「これは――――! 何とも美しい」
 刀剣に関しては人一倍興味を抱くのか、ムツ氏が興味津々に、ロールさんが手にする代物を凝視。

「これって、ミスリルカジキ? とか言われてた魚のふんですよね」

「そうだよ」
 利器の素材として、最高位に位置するミスリルと同等の硬度を誇る事から、カジキの頭に、ミスリルを冠するようになったらしい。
 船上で釣り上げて、吻の所有者になったロールさん。
 自宅が近くにあった事もあり、シナンさん達に護衛をしてもらいながら、吻を取りに帰ってたそうだ。

「私が持っていても仕方がない物です。今この時こそ、この吻も活躍できると思います」
 先端は槍のように鋭利で、且つミスリルと同等の硬度。
 そこいらの武器では太刀打ち出来ない代物だ。正直、ドレークさんの愛用する斧よりも遙か上位の代物。

「いいのかい?」

「どうぞ」
 女神のような優しき微笑みで、吻を手渡すと、雰囲気に呑まれたのか、ドレークさんは片膝をついて、恭しく諸手を伸ばして受け取った。
 不思議なもので、二人の空間だけが、神聖な場になったかのように、光芒がさしていた。
 
 ――――そこら辺に落ちていた布きれを集めて吻に巻き付け、先端部分だけをそのままにすれば、簡易な槍の出来上がりだ。
 つぎはぎのボロ布のせいで見た目は悪くなったけども、ミスリル級の硬度だからな。最高の槍の誕生だ。
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