拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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レコンキスタ

PHASE-39

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『愚かな』
 口角を上げた笑み。

「ぬぅ……」
 魔法陣が押されて、ピシリとヒビが入る。
 徐々にだけど、力負けしている邪神。

「流石は妾の兵仗。対アレ用なだけあって、押し込んでおるわ!」
 押し込んでおるわ! じゃねえよ! 押し込まれたら僕たちにまで被害が出ますよ!

「ロールさん!」
 僕が何を言わんとしているか分かってますよね?
 ここが攻撃を受けたら、衝撃で後陣の指揮所からなにから大痛打を受けます。
 王様を始め、国の中核をなす方々がおられるからか、背に腹はかえられないと、大きく頷いて返してくれる。

「頑張ってください! お兄様」
 と、頬を赤く染めながらも、間髪入れずに、大音声にて口を開いてくれた。

「まかせよ」
 ここで踏みとどまるところが、シスコンの凄いところ。

「え、なに? 人間の女にお兄様とか言わせてるの? 土塊とか言って見下してたのに。だっさ」
 シズクさん……。
 そこで邪神の心を抉るような事を口にしないでいただきたい!
 あいつ、女性にそんな事を言われると、駄目になっちゃうんです。
 メンタルが、ワギョウ名産の豆腐なんです。
 しかも、木綿じゃなく、絹ごしなんですから。
 
 ――……ああ、ほら……。一気に押され始めた。
 本当に……、テンションで力の加減が変わる奴だな。
 今一度、ロールさんにお願いする。
 シズクさんには余計なことは言わないようにと釘を刺した。
 横からのヤジが無くなったことで、再び耐えるけども、
『よく耐える。流石は邪神か』

「義妹の声が我に力を与えてくれる」

『滑稽な存在だ。一度は世界を得ようとして、人を蔑んでいたのが、人の声で戦意高揚とは。その身勝手さにどれだけの人々が苦しみ、命を落としたんだろうな!』
 ヘルムの語末での怒りに対しては、反論できない。
 実際、当時の人たちからしたら、邪神は厄災でしかなかっただろうから。
 
 怒りに合わせるように、捷利嚮導の乙女ブリュンヒルデが残ったもう一つの拳を地面に這わせながら突き上げる。
 アッパーだ。
 二連撃を防ぐことは出来ず、魔法陣が砕け、拳が邪神へと直撃。
 打ち上げられたところに、巨体とは思えない素早い蹴撃を見舞い、吹き飛んでいく邪神に対して、だめ押しとばかりに、
『塵芥となり、無となれ! 悪しき存在!』
 頭部が再び輝けば、吹き飛んでいく邪神を追うようにして、巨大な光の帯が放たれた……。

「直撃……」
 繰り出される攻撃により発生する衝撃波は、シズクさんが氷の壁を展開してくれて、後陣は難を逃れるけども、容易く邪神がやられるのを見れば、心が砕けそうになる。

『素晴らしいぞ! 邪神ですら容易いとは。これが人々の力で動く、正義の象徴。私の捷利嚮導の乙女ブリュンヒルデだ』
「妾のじゃ!」
『うるさい。お前たちのような、人ならざる者たちが存在することは、私の捷利嚮導の乙女ブリュンヒルデがいるかぎり許しはしない。ウィザースプーン君、最後のチャンスだ。私の下で働きなさい。私の世界の住人として、安寧を与えよう』
「はっ」
 小馬鹿な笑いで返してやった。

『何が気に入らない。ジャイロスパイク君も共にでいいんだぞ?』

「ずっと気になってたんだけど。あんたの口から出る、私の世界って言葉、気持ち悪いんだよね。人々の力とか、集団の団結を謳ってるくせに、私の捷利嚮導の乙女ブリュンヒルデや、私の世界とか、結局は自分個人でしか物事を考えていない。口から出るのが、私たちの造る世界とかだったら、まだ説得力があったよ。申し訳ないけど、お馬鹿な独裁者の下には行く気はないね。我が儘なちびっ子魔王さんの方が、あんたといるより遙かに楽しい世界だよ」
 喋々と返してやれば、なんとも面白くないと、眉根を寄せている。

『はあ~』
 続いて嘆息だ。
 愚かな選択だというのを嘆息で表現しているようだ。構わないよ。お前なんかに愚かって思われるのは、むしろ誉れだから。
 
 正反対に、
「よう言うたぞピート! 惚れてしまいそうじゃ」
 七歳児の体で言われても、うれしくはないですよ。
 というか、ケーシーさんがいなくてよかったよ。僕が背後から刺されてしまいそうな気がする……。
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