とある、勇者の苦悩と哀惜

たまのゆ

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どうしてこうなるんだろう

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「ド」がつくほどの、長閑な田舎へ引っ越しして、王家とは縁を切ったはずなんだ。

なのに、どうしてこの小さな屋敷の玄関先に、後輩騎士がいるんだろうか。

ゴリゴリマッチョな風貌の身体に似合わないことこの上ない、キラキラと仔犬みたいな眼で、ドアを開けた俺を見つめること数時間。

奴は大きく息を吸い込み、

「貴方様こそが、
あの恐ろしいニートキモオタークなる魔人を倒した勇者様だと、
先輩方にお聞きしました。」

大声で言い放った。

「いや、アレは倒したとかではなくだね~……………」

あー、うん。
確かに、倒したっていうことなのかも?ではあるが…………。

「君が思ってるのとはだいぶん違うと思うよー。」

「是非とも、私を弟子にして下さいませ!!!
雑務でもなんでもいたします。
丈夫なことと体力には自信があります。
どんな厳しい試練でも耐えてみせましょう!」

聞く耳なしなのだね~。
もう、ほんっとにキラッキラッした眼で見ないで欲しい。


断りきれない悪い癖が疼き始める。
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