上 下
3 / 7

断れないって良くないな

しおりを挟む
とりあえず押しかけ弟子が出来た。

雑用全部押し付けたら、意外と使える素直な良いコだったよ。
ゴリゴリマッチョなアルファルファ君。

今回は断れないのが良い方に出たな~と思うよ。

「意外に料理も家事も上手いねー。」

褒められると嬉しそうに

「兄弟10人の世話が今までの私の役割でしたから。
このぐらいは簡単なものです。」

見えない尻尾がパタパタしそうな感じで応えてくれた。

「10人は多いね~。」

「孤児院ですから少ないほうですよ」

「あ~、ごめんな。」

「気にしないでください。良くある事ですしね。」

「ありがとう。
しっかし、今更だけど何で俺に弟子入りなんて考えたんだい?」

「私、今度の騎士検定試験に合格したら姫様の近衛になる予定なのです。」

姫様の近衛になる予定って!?
あの、世間知らずで、怖いもの知らずの甘やかされ過ぎて常識なんてどこ行ったと言う恐怖の暴君である姫様の近衛になるだとー!
こんなに純粋で良いこが堪えられるわけがない。
精神崩壊おこして廃人になるなんて許さない。

「アルファルファ君、悪い事は言わない。
今からでも遅くはない。君のためだ。
姫様の近衛になるのだけは辞めなさい。」

「私には分不相応な望みだとは分かっています。
でも、少しでも、あの麗しく、儚げな姫様のお役に立ちたいとの思いはつのるばかりで…。
上司に相談したら、試験にさえ受かればそのまま近衛に昇進させてやれるから頑張れと約束していただいたのです。」

うん、姫様は確かに見た目は麗しい清らかそうな、か弱い乙女デスヨ。
王族らしく、基本的にはあんまり表立って下級の騎士に会うようなことは無いと思うデスヨ。
だから…傍から見る分には護ってあげたいと誤解するのも仕方が無いかも知れない。

だからこそ、実態を知った時のギャップの大きさに精神崩壊を起こしかねないのだよ。

「先輩方も、勇者様のもとで修行すれば良いと励まして下さいましたし。」

純真な好青年の夢と希望を、淡い恋心を打ち壊すなんて面倒で哀しい役目なんて押し付けやがって!

やっぱり、弟子入りなんて断るべきだったよ…。






しおりを挟む

処理中です...