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三話 逃れられぬ世界

覚悟を決めて

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 翌日も坪田の姿はなかった。

 柔道の練習のために部室へ顔を出したが、そこにも姿は見当たらず、行方を知る者はいなかった。

 どこか旅行にでも行っているんじゃないか。
 実家へ帰っているんじゃないか。
 二股がバレて逃げているんじゃないか。

 憶測ばかり聞こえてくるが、誰も確かな居場所は知らない。

 元々、坪田とは友人と呼べるほど親しい間柄ではなかった。
 坪田は満遍なく声をかけるタイプで、単に同じ部にいるから俺に声をかけていると思っていた。

 なぜ俺にあのゲームをやらせた?

 行方を探るほどに疑問が浮かび、どれほど練習に打ち込んでも心が晴れることはなかった。



 日が沈み、食堂で腹を満たしてすぐ部屋へ戻り、俺はVRのゴーグルを手にしてベッドへ座った。

 手元の黒いゴーグルをじっと睨む。

 まだ猶予はある。ギリギリまで坪田の行方を探したいところだ。
 だが事情を聞いたところで、すぐに問題が解決するとは思えない。

 坪田の行方が分からない今、取っ掛かりはこのゲームしかない。

 ようやく一勝することができた弱小の領主。
 勝ち続けるには華候焔の力は欠かせない――俺の体を褒美にしながら、戦い続けるしかないのか……。

 あんなに長々と貪られ、快楽を詰め込まれ、俺を壊していく行為を続けるなんて。

 俺の理性が、男に組み敷かれることを全力で嘆く。
 しかし体の奥がジン……と疼き、華候焔を恋しがる。

 たった一度の関係でこの調子だ。二回、三回と続けば、今より体が華候焔に囚われるのは目に見えている。

『待っているぞ、誠人……もうお前は、逃げられない……』

 こっちへ戻る前に聞いた華候焔の最後の言葉を思い出す。

 華候焔……分かっていてやったんだな。薬まで使って俺に過ぎた快楽を教え、ゲームから離れられないように仕込んだのか。

 現実まで華候焔の手の平で躍らされている。それが悔しくて俺は歯軋りしてしまう。

 この二日でよく分かった。
 俺はこのゲームからも、華候焔からも、逃げ出すことはできない。

 それなら挑み続けるしかない。
 こんな理不尽なゲームに負けぬ力を――華候焔に踊らされぬ力を手に入れてみせる。

 ゆっくりとゴーグルを装着し、側頭部のスイッチに手を伸ばす。

 電源を入れる瞬間、また華候焔に会えると思ってしまう。
 その途端、体の奥の熱がカッと上がり、小さな脈動を覚える。

 早く迎えたくてたまらない。
 そんな体の声に耳を塞ぎながら、俺はスイッチを入れた。

 ツゥン――。
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